神戸石炭訴訟|気候変動と大気汚染を防ぐため、石炭火力発電所新設は取り消しを!【アーカイブ】 Combating Climate Change and Air Pollution: Lawsuits Surrounding the Construction of Coal-fired Power Plants

#環境・災害 #Environment/Natural Disasters
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神戸市灘区の石炭火力発電所新設計画に対して、地域住民から反対の声があがっています。PM2.5をはじめとした大気汚染物質と、市全域の排出量に匹敵する量のCO2を排出する発電所。気候変動の影響が顕在化している中、被害を回避するための司法の役割を問います。

※この事件は、最高裁が原告らの上告を棄却し訴訟はすでに終結しています。みなさまの応援の声を募集しています。
There is opposition from local residents regarding the construction plan for a coal-fired power plant in Nada Ward, Kobe City. The power plant emits a significant amount of air pollutants, including PM2.5, as well as CO2 emissions equivalent to the entire city’s output. With the visible impacts of climate change, the role of the judiciary in preventing damages is being questioned. In March 2023, the Supreme Court dismissed the plaintiffs’ appeal and rejected their application for a review in the administrative lawsuit against the government.

【石炭火力発電所をめぐる問題】

気候変動が深刻化するなかで、その最大の原因のひとつが石炭火力発電所からの二酸化炭素(CO2)の排出であるとの国際的な認識が示されるに至っています。各国では、温室効果ガスの排出が多い石炭火力発電所の新設が規制されるようになっています。ところが日本では、現在でも石炭火力発電所の建設・稼働を制限する実効的な規制がないばかりか、新たな発電所が稼働を始める状況にあります。

なかでも、人口が密集する神戸市南部には、すでに2基の石炭火力発電所が運転しているところに、さらに2基、とても大きな石炭火力発電所の建設計画が持ち上がりました。

最後の4号機が2023年2月より稼働を開始しました。これらの発電所は、地球温暖化へのとりくみに逆行して、大量のCO2を排出してしまいます。また、有害な大気汚染物質を大量に排出し、地域住民の健康被害が発生するおそれもあります。


【訴訟に至った経緯】

長い間大気汚染に苦しめられている地域の住民は計画に反対してきました。

発電所は住宅地からわずか400mしか離れていません。

この地域はかつて公害被害のためにたくさんの人々が健康を脅かされ、環境を改善しようと努力を続けてきた場所です。

東日本大震災後、全国各地の原子力発電所が停止し、燃料費が安い石炭火力発電所の新増設が各地で計画されていた中で、神戸製鋼所は3・4号機の増設を発表。

2017年には、500人近くの住民らが、新設発電所の環境影響評価のやり直し、建設の取りやめなどを求めて、兵庫県公害審査会に公害調停の申請を行いました。

しかし調停手続中も、神戸製鋼は調停手続を無視する形で着工への手続を行いました。

そこで、神戸市に住む住民が中心となって、2つの裁判を始めました。一つは、事業者である神戸製鋼、その子会社のコベルコパワー神戸第二、関西電力に対して、発電所の建設と稼働の差し止めを求めるものです。もう一つは、国(政府)が、法律にもとづく手続きや基準を通じてこの計画をとめる規制をせず、環境への影響評価が不十分なまま計画を認めていることは、法律違反ではないかと問うものです。

神戸の住民が中心になって始まったこの運動は、大気汚染を防ぎ、気候変動を防ぎ、持続可能なエネルギーにシフトすることを通じて、子どもたちに未来をつなぎたいという強い思いによって続いています(民事訴訟は進行中)。


【訴訟の概要】

火力発電所など大規模な事業を行う場合、環境に与える影響を予測、評価し、適切な環境配慮が実施されるようにするための手続きとして「環境アセスメント」があります。

環境アセスメントは、住民や自治体などの意見を聴くとともに専門的立場から、その内容を審査することで、適正な環境配慮がなされるようにするための手続きです。

計画した事業者は、必要な手続き、定められた基準を満たしていることを示す「評価書」を、国(経済産業省)へ提出します。次に国は、評価書の内容を確認し、必要に応じて変更命令を、問題がなければ確定通知を出します。

今回の神戸製鋼所が新たに2つの石炭火力発電所を建設するために提出した評価書について、国は「事業計画を変更する必要性はない」とする通知を出しました。

近隣住民ら12名(提訴時)は、石炭火力発電所の建設・稼働に伴い大量に排出される温室効果ガスが気候変動を加速させ、原告らの生活を危険にさらし、人権侵害をもたらすおそれを十分に考慮していないことから、国が出した通知の取消しを求めて裁判を提起しました。


【訴訟の状況】

控訴審判決は、大気汚染に関しては原告適格を認めつつも、本案では原審の判断をそのまま追認。CO2の環境影響については、原告らの個別利益に関わるものではなく公益に関わるものだとしてそれを争う原告適格を認めませんでした。

また、PM2.5について本件アセスで評価していない点については、PM2.5 を考慮対象とする選択肢は十分あったとまでは認めつつ、経済産業大臣の専門的・技術的裁量を前提に、アセス対象項目としなかったことが違法だとまでは言えないと判断しました。

2023年3月9日、最高裁判所は、上告を棄却し、上告受理申立を却下する決定を下しました。この結果、日本においては、環境アセスメントにおいて事業者がCO2の大量排出による環境への影響を十分に配慮していなくても、当面、国民は誰ひとりとしてそれを行政訴訟で争うことができないことになりました。

このような不当な結論に私たちは断固として抗議します。

「当面」とあるのは、高等裁判所も「今後の内外の社会情勢の変化によってCO2排出にかかる被害を受けない利益の内実が定まってゆき、個人的利益として承認される可能性を否定するものではない」としているからです。個人的利益として承認されれば、行政訴訟で争う可能性があることを示唆しています。 


【各地でひろがる気候変動訴訟】

神戸石炭訴訟では、大きく分けて大気汚染と気候変動の2つの問題を争っています。

大気汚染については、過去に公害訴訟として類似の裁判例の蓄積がありますが、気候変動については、裁判例はほぼ皆無に近い状況です。

それがここ近年、神戸石炭訴訟を含め国内でも主に石炭火力発電所の建設をめぐって、気候変動対策の適切な実施を求める訴訟が提起されるようになったのです。

2022年8月現在、米国を中心に世界全体で約2100件の気候変動訴訟(Climate Case Litigation)が提起されています。

具体的なプロジェクトに対する国の許認可の適否を問う訴訟から、国の温室効果ガス削減目標が不十分であるとする訴訟まで様々ですが、気候変動による影響や被害を受けることは「人権侵害」であると訴え、適切な対策を国や企業に求めています。

▼世界の気候訴訟についてはこちらのサイトをチェック!
http://climatecasechart.com/


【声をあげる人々ー原告団からのメッセージ】

温暖化に伴う、猛暑、豪雨などにより甚大な被害が各地で発生し、大きな被害をもたらしています。毎年のように「特別警報」が発令され『これまでに経験したことのない』に日常的に接するようになってきています。途上国などでは国土の消失や干ばつによる食糧、水不足にあえいでいます。まさしく気候の危機はいのち危機です。

科学の結論は「人間の影響が気候システムを温暖化させてきことは疑う余地がない」と断定しました。人間が起こした事なので人間の責任で元に近い状態に戻さなくてはなりません。大量にCO2を排出し続けてきた日本など先進国の責任は重大です。

私達の裁判は、気候危機からの脱却を求めて石炭火力発電所の建設中止を求めています。ところが大阪高裁は石炭火力発電所から大量に排出されるCO2について、「原告らの個別利益に関わるものではなく公益に関わるもの」としてそれを争う原告適格を認めませんでした。これでは日本は、事業者がCO2の大量排出に十分な対策を行っていなくても、国民は誰ひとりとしてそれを司法の場で争うことができないとことになり、是正を求めて最高裁に上告しました。

世界では「大量のCO2排出は人権問題」と排出削減を求めた判決が出ています。人類や日本の将来のためにも「石炭火力の新設が許されない社会である」というメッセージを裁判所に求めます。

神戸石炭訴訟 原告代表幹事  廣岡 豊


【弁護団について】

神戸製鋼石炭火力行政訴訟弁護団
池田直樹  あすなろ法律事務所
浅岡美恵  浅岡法律事務所
和田重太  和田法律事務所
金﨑正行  法律事務所ロイヤーズ・ハイ
杉田峻介  あすなろ法律事務所
喜多啓公  喜多啓公法律事務所
與語信也  神戸花くま法律事務所
青木良和  かけはし法律事務所


【弁護団からのメッセージ】

神戸製鋼石炭火力行政訴訟 最高裁却下決定についての原告団・弁護団共同声明(2023/3/18)


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神戸石炭訴訟原告・弁護団

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神戸石炭訴訟原告・弁護団は、そのために立ち上がりました。
本訴訟に関するこれまでの動きや報道情報などサイトに掲載しています。
https://kobeclimatecase.jp/

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