市民との約束を無視して進む「新焼却炉建設」を止める訴訟 Lawsuit to stop ``new incinerator construction'' that ignores promises with citizens
かつての沼津市長は、原告らが住む沼津市と駿東郡清水町外原区とが接する地域において、二度とごみ焼却場を作らないと約束し、住民との間で覚書を取り交わしました。しかし、現・市長はこの覚書を無視して、同じ地域に新しいごみ焼却場を作ろうとしています。このような行政の約束破りは、実は全国で相次いでいます。この訴訟は、行政に住民との約束を守らせるための訴訟です。 The residents of Sotohara-ku, Shimizu-cho and the mayor of Numazu once exchanged a memorandum of understanding not to build an incinerator on this site again. However, the current mayor of Numazu made a plan to build a new intermediate treatment facility (incinerator) at the place where the memorandum was exchanged, and proceeded with the procedure and budgeted. 60 or so Numazu citizens filed a lawsuit demanding an injunction to stop the expenditure of the budget, claiming that this was illegal and that it was illegal. is causing
【この訴訟を通して実現したいこと】
日本では1960年代から1970年代にかけて、自治体はごみ焼却場の建設を進め、時に建設予定地の地元住民から強い反対運動が起こりました。その結果、自治体と地元住民との間で、「自治体が今後この場所にはごみ焼却場を建設しない代わりに、住民は今回だけは建設を受忍する」といった内容の約束が交わされたことがありました。
ところが、近年、地元住民との約束を反故にして、ごみ焼却場の新設を進める自治体が相次いでいます。自治体が地元住民との約束を守らなくてよいはずがありません。今回の訴訟では、沼津市が住民との約束を反故にしてごみ焼却場の建設を進めることの違法性をはっきりさせ、自治体の手のひら返しは許されないとの意識を広げていきたいです。
【問題の所在】
1.昭和49年に締結された、沼津市長・外原区長・闘争委員会、三者間の覚書
駿東郡清水町外原区は、沼津市の東側に隣接する自治体です。沼津市にある香貫山(かぬきやま)の東側の麓に位置しています。
昭和33年(1958年)から沼津市は、沼津市上香貫にある「山ヶ下一の洞」と呼ばれる土地に、①し尿処理場を建設しました。その後し尿処理場は増設され、さらに昭和41年(1966年)には、すぐ隣にある「上香貫ニの洞」に②焼却処理場(前中間処理場)が建設されました。これらの施設では、沼津市と清水町のごみ焼却とし尿処理が始まりました。
「山ヶ下一の洞」「上香貫二の洞」の目の前には、清水町外原区が広がっています。し尿処理場と焼却処理場の稼働が始まると、外原区の住民は大気汚染と凄まじい悪臭に苦しまされました。その上、沼津市は、昭和48年(1973年)、③新しい焼却場(現中間処理場)を「上香貫三の洞」に建設すると公表しました。これを機に外原区住民により大きな反対運動が起こりました。自治会が反対するにとどまらず、反対組織を集めた闘争委員会も立ち上がりました。
こうした反対運動を経て、昭和49年(1974年)、沼津市長・外原区長・闘争委員会の3者間で覚書を締結しました。
▲締結された覚書の表紙
覚書に添付された話合い状況概略には、「将来、1ノ洞、2ノ洞、3ノ洞には一切増設、新設しない」「市、町、地元の確認事項は市長、町長等の変動があっても効力があると認める」などと記載されています。つまり、外原区の住民は、当時計画されていた新焼却炉の建設に反対しない代わりに、これ以上新焼却炉を建設しないことを沼津市に約束させたのです。そして重要なのは、この覚書は市長が替わっても有効であるという記載があることです。
2.覚書に反する新中間処理場の建設計画
しかしながら、沼津市は、平成23年(2011年)以降、この場所で④焼却炉新設(新中間処理場)の計画を推し進めています。覚書を交わした清水町外原区の住民は、焼却場のない環境で暮らせる日が来ることを信じていました。本計画は、こうした住民の信頼を裏切るものです。
昭和49年(1974年)の覚書は、清水町外原区の環境、何よりも住民の健康を守るために締結されました。しかし、沼津市長が今回この覚書を破って本新中間処理計画を進めることにより、清水町外原区住民は、これからも長期間、排煙にさらされ続けることになります。昭和41(1966)年にはじめて焼却炉施設が稼働してから数えて100年以上も、焼却炉の煙突の下での暮らしを押し付けられることになるのです。
▲80m の煙突
▲焼却炉の煙突のすぐ近くにある清水町立南中学校体育館
この訴訟では、自治体は住民との約束に拘束されることを明らかにしたいと考えています。そうすれば、自治体が住民との約束を簡単に反故にする事態はなくなるはずです。
【棄却された住民監査請求】
多くの沼津市民は当初、新中間処理計画には無関心でした。
しかし、清水町外原区の住民の方々から、新中間処理計画は覚書に反するという話をを聞いて以来、この状況は自分たちで変えていく必要があると感じました。なぜ沼津市は住民との約束をないがしろにするのか?強引なやり方で目的を達しようとする沼津市に、不信感が募るばかりでした。
自治体に住民との約束を守らせたいという共通の思いのもと、 171 名の沼津市民が集結しました。
新中間処理計画をめぐって沼津市と法的に争うためには、訴訟の当事者になれるかどうかの当事者適格の問題から、沼津市の住民でなければいけません。そこで、沼津市民171名が、沼津市に対して、住民監査請求を行いました。
ところが監査委員は、覚書には法的な拘束力はないなどという沼津市の言い分と全く同じ理由により、請求を棄却してしまいました。
【住民訴訟】
住民監査請求の結果は当然納得のいくものではありませんでした。沼津市の監査委員が公正な対応をしない以上、このままでは沼津市の計画を止められません。そこで、私たちは司法に訴えるしかないと思いました。訴訟を通して沼津市や清水町の行為を明らかにし、裁判所に認めてもらう以外に、沼津市に覚書を守らせる方法はありません。
こうして、監査請求を行った61名の住民が住民訴訟の原告となりました。
▲監査請求を経て原告になってくださる方との話し合いの様子
▲昭和 30 年代からの行政とのやりとりなど膨大な資料が全て保存してあります。
▲訴状提出時の様子
【資金の使途】
・弁護士費用
・弁護士、証人等の交通費
・訴訟提起のための必要経費(印紙・郵便切手等)
・情報開示費用
今回の訴訟では、長期にわたる膨大な資料を読み込む必要があり、大変時間がかかるため、私たちは東京の3 名の弁護士をお願いしています。東京から静岡県の裁判所に出張していただくのも費用がかかります。私たちと共に戦ってくださる先生方に交通費等の実費や報酬をお支払いしたいと思います。
もし余剰金があれば、これまで情報開示に要した多額の費用の補填、裁判の印紙や必要経費に充てたいです。全ての明細を公開し、すでに負担してくれた原告に支払いたいです。
【担当弁護士のメッセージ】
住民との約束を反故にする沼津市のやり方の不正義を訴える沼津市民や清水町民の熱心な運動に共鳴し、この問題に取り組もうと思いました。
これまで複数の行政の約束違反を見聞きしてきました。曰く、約束の対象が違う、約束の主体が違う、などなど、小手先の理由を付けてです。
今回は、そのような小手先の(形式的な)理由はなく、事業が変わった、時代が変わったなどと、市は強弁しています。これを許すと、市民は誰も地方行政の言うことを信用しなくなるでしょう。
裁判所の市に対する厳しい判断を引き出したいと思います。
【担当弁護士の紹介】
弁護士 佐竹俊之(東京弁護士会所属、西東京共同法律事務所)
弁護士になりたての頃から環境問題に関心があり、多数の環境・行政事件を経験してきました。この事件は住民訴訟ですが、不当不正な行政やそれに追随しがちな司法を変えさせるのは、裁判と運動の両方の力が必要です、と感じています。
弁護士 近藤麻衣(第二東京弁護士会所属、西東京共同法律事務所)
行政(国や自治体)相手の事件を経験する中で、本来行政が守るべき人権が軽視されている理不尽を感じることが多く、本件もまさにこのような事案だと思っています。特に本件は、市と住民が対等な立場で契約をしたにも関わらず、市が「仕方ない」を理由に一方的に約束を反故にしようとしています。市民や私企業同士で許されないことが行政なら許される、そんなはずはありません。例え被害を受ける住民が全体から見て少数だとしても「仕方ない」で済まされてはいけない、司法の場でそのことを市に問いただしていきたいです。
弁護士 石井光太(第二東京弁護士会所属、西東京共同法律事務所)
神奈川県綾瀬市大上の出身です。生まれ育った家は、厚木基地からのひどい騒音被害を受ける地域にありました。世界のどこかで有事があると一気に飛行回数が増加し、湾岸戦争のときは怖いと思ったのを今でも覚えています。不思議な縁があってか、弁護士になってからは横田基地の公害訴訟を担当しています。被害を受ける住民が施設の周囲の住民に限られる場合、民主政の過程(選挙を通した行政の意識決定)による問題の解決は難しく司法の判断が必要となってきます。当事者目線で頑張りますのでよろしくお願いします。
【ご寄付のお願い】
あなたの近くに焼却炉や汚水処理場が立つ可能性はゼロではありません。どうか自分事として本ケースにご注目いただき、ご支援をいただけますと幸いです。
昭和49年に近隣地区である清水町外原区住民と沼津市長との間で、現在ごみ処理場があるところと同じエリアには、ごみ処理場を作らないという覚書が正式に交わされたにも拘らず、沼津市長は現在同じエリアでごみ処理場新設の計画を進めています。
およそ50年耐えてきた地元住民の皆さんの安全と暮らす権利を求めて、反対運動ではなく未来に向けた解決策として
燃やさないごみ処理の実現を目指し活動しています。
HP https://moyasanai.hacca.jp/
ごみプランの会 代表 鈴木たかお 事務局 浅羽愛
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