2021.3.2

同性婚訴訟をきっかけに考える、 “わたしたち”の結婚制度

CALL4 1周年イベントレポート Vol.3

こんにちは!CALL4の野原です。筆者はロースクール生で、CALL4にはインターンとして参加したことをきっかけに、活動に関わらせていただいています。
さて本記事では、「結婚の自由をすべての人に訴訟(同性婚訴訟)」のケースについてご紹介し、なぜ同性婚が必要なのかについて考えて行きます。

同性婚が認められている国・地域は、世界初のオランダを始め、世界で約30あります。
想像してみてください。あなたの友人や周囲の人は結婚が認められているのに、あなただけ大事なパートナーとの結婚は認められませんと言われたら、どう感じますか? あなただけ結婚という「選択肢」を選ぶことができないのです。

本記事が、「自分だったら」という観点から、同性婚訴訟について、そして日本社会における結婚という制度のあり方について知るきっかけとなれば幸いです。

(※本記事は、2020年9月13日に開催されたオンライントークイベント『同性パートナーと結婚をする自由』の内容を再編集したものです。)

Zoomでのトークイベント終了時の記念撮影
<イベント登壇者>
まさひろ、こうすけ(原告)
森 あい(弁護士)
かずえちゃん(YouTuber、ゲスト)
丸山 央里絵(CALL4、ファシリテーター)
※敬称略

1.そもそも結婚とは?

日本では、結婚をすることでさまざまな法的効果が認められています。例えば、法定相続人になる権利であったり、所得税の控除であったり、別れる(離婚)ときの法的ルールが適用されることなどです。
こうすけさんは、自身の父が亡くなって相続したことをきっかけに、訴訟の原告となることを決意したそうです。

こうすけ:ちょうど私の父が亡くなった時に、私が実際に相続を経験して2つ思ったことがあります。 ひとつは、本当に“相続”という場所で必要なことというのは、法律上の家族かどうかだったので、その時に私が死んだら自分のパートナーはどうなるんだろうかという不安がすごくありました。

もうひとつは、これが原告になるきっかけになったんですが、人間っていつどうなるか分からない。私がこのあともし、急に亡くなったり、急に事故に遭って自分が意思を表示できない時に、パートナーをどうにか助けてあげたい。私が死んだ後も何かこの人に遺してあげたいと思うんですが、それが今のところ難しい。
世間ではそういう人たちがお互いに“結婚”という選択をするんだと思うのですが、今の私たちにはその選択肢がないという状況です。

このように結婚によって得られる法律上の保護が受けられないことで、本当に困ったときに、同性カップルは法律に頼ることができないという問題があります。

2018年に、20年以上連れ添った同性パートナーが殺害されて、国に対して犯罪被害者遺族給付金を求める訴訟が提起されましたが、名古屋地裁はこの請求を認めませんでした。
犯罪被害者遺族給付金は、法律上の婚姻(婚姻届を出している場合)のほか、婚姻届を出していなくても、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」(いわゆる事実婚)にも、法律上明文で認められています(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条1項1号)。そのため本件で争点となったのは、同性の犯罪被害者と生活を共にしていた者が事実婚として保護されるかという点でした。
この点、地裁は、犯罪被害者遺族給付金の受給において、同性の場合は、そもそも事実婚として保護されることがないと判断しました。原告と殺されたパートナーの20年以上の生活について考慮をするまでもなく、同性ということで、一律に排除してしまったのです。
(※なお本件は2021年2月現在、控訴審を行なっており、CALL4でケース支援を取り扱っています)

もちろん法律上の不利益だけではなく、事実上の不利益もあります。例えば、病院で、パートナーの病状について説明を受けられなかったり、面会させてもらえなかったりすることがあります。他には、民間生命保険の保険金の受け取りはできるものもあるのですが、異性とは違って、手続きが煩雑であったりするようです。

さらに、弁護士の森さんは、結婚が認められるということについて、「周囲からの承認」という側面を有していると述べます。

:結婚の意味としてはやはり、結婚で周囲の理解や関係の承認をしてもらえるというのも大きいと思います。 同性というだけで結婚が法律上できないということは、何か劣った関係とか、認められていないもの、ということを思わせるところもあるんじゃないか、そういう烙印(スティグマ)を押すような効果も出てしまっているのではないかと思います。

2.パートナーシップ制度とは?

まさひろさんとこうすけさんは、2018年6月に福岡市のパートナーシップ宣誓をしている

日本では、同性カップルの結婚は認められていませんが、パートナーシップ制度を導入している自治体は76あり(2021年2月22日時点)、どんどんその数は増えています。人口カバー率も、3分1を超えました。
パートナーシップ制度は、パートナーであることが事実上証明されるもので、法律上の効果は何ら生じず、相続の問題などが解決するわけではありません。とはいえ、公営住宅の入居資格を得られたり、民間のサービスを受けられるようになったりという点でメリットがあります。

:パートナーシップ制度があるので結婚ができると思っている方もいらっしゃって、「渋谷では同性婚ができるんですよね」と言われたりします。そしてパートナーシップ制度って「制度」とついているので、すごいカチッとした効果があるのかなと思われたりするんですが、実際には「同性のカップルを公的に認める取組み」ぐらいの名称が本当はいいんじゃないかなというものではあります。

ただ正面からきちんと自治体が関係を認めるというのは、すごく意義は大きいので、そういった意味での効果はあります。ただそれで相続等の問題が解決するわけではないんです。

パートナーシップ制度は、法的な効果がない分、森さんがいうように「同性カップルを公的に認める取組み」であって、結婚とは異なるものです。
ただ、パートナーシップ制度によって得られるメリットはあり、何よりも同性同士の結婚も当たり前である社会を作る上では、自治体の公認ということは重要な意義を有しています。そうだとすれば、同性婚が認められるまでの間は、このパートナーシップ制度を広げていくことは重要となってきます。

3.なぜ裁判を行うのか?

「結婚の自由をすべての人に 九州訴訟」を提訴。福岡地方裁判所前で、まさひろさん、こうすけさん(一列目左右)。熊本在住の原告カップル(一列目中央)と弁護団(後列)

裁判になる理由は、国会に法律を作ってもらえないためです。国会が法律を作ることは多数決によって決まるために、少数の意見が反映されにくく、同性同士での結婚ができるような法律をすぐに国会が作ることは難しいところがあります。
一方で、婚姻の自由は憲法24条によって保障されています。また、同性カップルが結婚できないというのは、法の下の平等にも反します。同性婚を認めないのは憲法違反だと裁判によって認められれば、これに反する法律が認められなくなり、法改正への道が開かれます

:国会が法律を作らない背景には今の国会の議員さんの構成があると思っています。
年配の男性だったら皆寛容ではないとかでは全くないんですけれども、同性婚の賛否は年代によって非常に傾向があり、若ければ若いほど賛成が多く、年配であればあるほど反対が増えます。また、賛成する人は、男性より女性のほうが多いのです。国会は、年代は上のほうに偏っていますし、男性が圧倒的に多いですし、多様性がない国会になっているというところは最大のハードルだと思います。

それを解決するためには国会の多様性の確保をしていくというのもあると思いますけれども、今いる議員さんたちも知れば変わるということがあるんじゃないかなと思っています。ちゃんと有権者からも声を上げていって、あなたの有権者の中にも望んでいる人がいますよ、と伝えることができれば、議員さんも動いてくれるはずです。

地方裁判所から高等裁判所、最高裁判所までにいくには4、5年という長い年月を要するため、裁判と同時に議員さんに声を届け、働きかけることも重要となってきます。

4.私たちには何ができる?

日本でもLGBTQの理解が浸透してきていて、自分の身近にいることも今や当たり前となってきています。原告のまさひろさんは、裁判を提起したことに対して周囲に受け入れてくれる人が多く、温かさを感じたとお話ししていました。

まさひろ:私たちが提訴会見を行って、メディアにちょっと顔も出たので、色んな人から声がかかりました。「そうだったんだね」とか、職場からも「頑張って!」と言ってくれる方もいらっしゃいました。
近所に結構年配の方がいらっしゃるんですが、提訴する前からも「元気?今日どこに行くの?」とか挨拶はしていて、訴訟でテレビに出て、その数日後か1週間後かぐらいにまた声をかけられて、「なんて言われるのかな?」と思ったら、「まぁ、今の時代そういうのもあっていいんじゃない?」と言ってくださったこともありました。
2021年1月9日に結婚式を挙げた、まさひろさんとこうすけさん(写真/マスダヒロシ)

とはいえ、様々な年代の方が受け入れてくれていても、なかなか「自分ごと」として捉えてもらうことまでは難しいというのが、LGBTQの当事者としての実感のようです。

かずえちゃん:僕も、自分自身がカミングアウトした時に特に攻撃的なことを周りから言われなくて、皆さん「そうなんだ」という感じだったんですが、もう一歩そこから進むというのがすごく重要なのかなというのを日々感じています。
自分とは関係ないけれど、たぶんそれが身内だったら変わる、とかそこに線引きが結構あるのかなと思っていて。別にそこまで反対しないけれども、私のことじゃないし、っていう。
こうすけくんたちの近所の人とも、自分とは関係ないと止まるのではなくて、そこからちょっとでも行動するとか、日常的に話題にしていくようになれると、たぶんもっと変わっていくのかなと、日々感じることです。

私たち一人ひとりが「自分ごと」としていかに考えられるかというのが、同性婚訴訟を考える上で必要となってきます。そのためにまず私たちができることは、大きく3つあります

まずこの記事などで「知ったことを家族や友人に話すこと」です。日常の会話で話題にすることで、その輪が広がれば広がるほど、異性婚と同じように同性婚も当たり前の社会へと変えるための基盤が作られていくのです。

またもう一つは、前述したように「議員さんに声を届けること」です。パートナーシップ制度については、知事や市区町村の長次第で設けることができるので、議会への陳述などの他、その地域で認められているトップに声を届ける制度(「知事への手紙」など)を利用してみましょう。今すぐできる方法としては、手紙やSNSも有効です。

こうすけ:今後、私たちが訴訟を続けていくことで、実際にこうやって求めている有権者がいるんですよというアピールにもなると思うんです。
なのでこういった活動以外でも、実際に先ほど森弁護士のお話にあったように、一人ひとりが当事者でなくても、当事者のことを知っているからとか、応援しているから、「いいじゃないの別に。なんでダメなの?」というような声がどんどん高まってくれたらなと思っています。

さらにもう一つは、「傍聴に行くこと」です。裁判は誰でも見ることができます。傍聴に行くことで、自分も当事者であるという実感を得ることができます。そこで見聞きしたことを、話題にして広げることもできます。何より応援している人の可視化にもつながり、原告の力になることもできるのです。

かずえちゃん:僕も傍聴に行ったんですけど、やっぱり行くと全く違います。
僕は今パートナーがいないので、同性婚とか結婚というものがすぐ身近なものではないんですけれども、やっぱりそこに行って、そこのふたりの声を聞いたことで、自分もちょっとだけ当事者になれたというか。そこの空気感だったり、その時に感じたことというのはやっぱり言葉じゃない伝わり方というのがすごく僕はあったんですよね。
なので勇気は要ると思うんですけれど、行ってみる。行ってみて、そこで感じたことというのを次は話題にして広げていく。行きたいと思っている人はぜひ行ってください。すごくいい体験というか、経験になると思います。

5.最後に

今回のオンライントークイベントを通して、同性婚訴訟を解決する鍵は、「同性カップルの権利を実現するための訴訟」ではなく、「わたしたちの権利を実現するための訴訟」という認識を持つことにあるのだ、と学びました。
国は一貫して憲法は同性婚を「想定していない」と主張します。憲法24条1項の「両性」とは男女を指すもので、婚姻は子を産むための制度であることを理由としています。

イベントでの「私たちは実際に存在しているのに、なぜ存在しないものとして扱うのか」というこうすけさんの言葉がとても印象に残っています。
異性同士であっても子どもを産まないカップルもいます。婚姻は子を産むことだけに価値があるのではない、という認識は、多くの人々の間で共有されている価値観なのではないかと私は考えています。

2020年12月2日に開かれた東京地裁における同性婚訴訟では、婚姻とは「結婚には愛する人と人生の楽しみや喜び、悲しみを分かち合い、その人らしい幸せを感じて人生を楽しむためのもの」であり、そこに価値があることを主張しています。そう考えると、改めて婚姻って“わたしたち”の権利なんだ、と実感します。
同性婚訴訟とは、同性愛者の方だけが抱えている問題ではなく、同性愛者でない人を含む私たち全員の問題です。私たちを規律する制度は常に完全であるというわけではなく、どうしたら私たち全ての人に最適な制度となるのかという視点が重要です。

結婚制度は“わたし”の制度であるという視点から、“わたしたち”の権利として同性婚訴訟を考える必要があると考えています。

取材・⽂/野原万葉(CALL4)
編集/丸山央里絵(CALL4)