コロナ禍、日本社会の理不尽を問う(コロナ特措法違憲訴訟)【アーカイブ】 Question the Constitutionality of Covid-19 Business Hour Curbs in Tokyo
法的義務のない時短要請に適法に従わなかった原告。原告が提出した弁明書に対して十分な回答をすることなく、東京都は施設使用制限命令を発出しました。「訴額1円」の国家賠償請求で「コロナ特措法」及び本件命令の違憲性と民主主義国家のあり方を問います。 The plaintiffs lawfully failed to comply with a request for shorter hours, which they were not legally obligated to do. The Tokyo Metropolitan Government issued an order restricting the use of the facility without providing a sufficient response to the written explanation submitted by the plaintiffs. We will challenge the unconstitutionality of the ”Corona Special Measures Law” and the order, as well as the state of our democratic nation, with a ”one-yen” claim for state compensation.
▶︎『時短命令は違法』と断じた一審判決を確定させるため、2022年8月16日付けで控訴を取り下げる決定をし、一審判決が確定しました。
皆さまからいただきました寄付金の使途につきましては、本ページ下部に記載がございます。ご覧ください。
*2022年5月16日 東京地方裁判所・判決 [訴訟資料]ページに判決文を掲載いたしました。是非ご覧ください*
【訴訟内容と社会的意義】
2021年1月8日、緊急事態宣言が再発令され、東京都からの一律の時短要請が出されました。東京都は、2月26日以降、この要請に従わなかった2000超の施設のうち、113の施設に個別の時短要請を出しました。個別の時短要請に従わない場合には、東京都からの命令が発出され、命令に従わない場合には罰則も科されます。
個別の時短要請がかけられた原告は、都に対して、飲食業を狙い撃ちにした対策の問題点を弁明書にて指摘するも、都からは「正当な理由があるとは認められない」との一言しか返ってきませんでした。さらに、命令書の事前通知には、「緊急事態措置に応じない旨を強く発信するなど、他の飲食店の20時以降の営業継続を誘発する恐れがある」との記載がありました。
特定の事業者に対してのみ、法律の枠外である事項を考慮して命令を発することは、民主主義国家の姿としてあるべきものなのでしょうか。
この訴訟で原告が目指すのは、経済的利益の獲得ではありません。確たるエビデンスに基づかない東京都の対応について、司法の場できちんとした説明をしてもらうこと。そして、民主主義国家としてのあり方について、社会全体で考えるための一石を投じ、皆でより良い社会に向かう“きっかけ”とすること。この訴訟はこれらの公共的利益を目的としています。
「訴額1円」で国家賠償を求めるこの訴訟は、あいまいな「自粛」や「要請」に頼ってきた、日本の民主主義の将来を決めるものになるはずです。(1円×26店舗×4日間で104円)
【資金(寄付金)の使途】
○訴訟提起及び継続のための事務的費用(印紙代・郵券・印刷費などの実費):10万円程度を予定しております。
○証人などの交通費等の費用:訴訟は東京で行いますが、本訴訟は後記の専門家等全国の様々な方の協力が不可欠です。そのような専門家が証人や意見陳述のために全国から東京での裁判に出頭する際の交通費や、専門家の方などにお越しいただく際の交通費等の実費を寄付金から支出しようと考えております。
○研究者(憲法学、行政法学、経済学、感染症学及び医学等)に依頼する意見書等に関する費用:本訴訟は、憲法学、行政法学だけでなく、経済学、感染症学及び医学党の学術的知見からの補強・サポートが不可欠です。それぞれの研究者等によって金額の多寡はありますが、100万円程度を想定しております。
○コロナ禍検証プロジェクトの発足費用:コロナ禍における感染拡大及びまんえん防止のための政策は私たちの権利自由の制限を伴いました。政府や東京都の同政策が真に効果的であったのか、私たちの権利自由を制限してもなお得るものがあったと言えるのか、多角的にあらゆる専門家の知見を用いて検証します。そのような取材・調査人件費、情報発信(サイト等の運営)費用、シンポジウムなどイベント費用、協力者・提携先への謝礼を考えています。独立した民間組織団体がこのプロジェクトを運営していく予定です。
※本クラウドファンディングはあくまで訴訟遂行の実費を集めるものです。各種プロジェクトはいずれも訴訟において証拠として提出するために実施するものです。訴訟から完全に独立した活動をするものではありません。以上につき、明確にするべく念のために追記いたします。(4月3日 弁護団追記)
○弁護士費用:本訴訟については、極めてタイトなスケジュールでの訴訟提起であることや、横断的な専門的知見を要することからして、膨大な調査・証拠収集等を予定しており、憲法・行政法をはじめとした高度な専門性を有する弁護士に依頼をしております。本訴訟では、これらについての知見及び処理能力を有する3名の弁護士に依頼をいたしました。同3名の弁護士には、弁護士費用として各10万円をお支払する予定です。もちろん、寄付金額の規模や、今後の訴訟の長期化等々を考慮し、追加のお支払をすることはありますが、担当弁護士の意向もあり、上記金額でスタートさせていただきます。
○コロナ禍及び緊急事態宣言において日常が奪われた人々に還元します:本訴訟は、特定個人や法人の利益を一切求めるものではなく、コロナ禍と緊急事態において日常や生活、ひいては自身の仕事を制限・変化せざるをえなくなったすべての人を原告と見立てて訴訟提起しています。一斉休校された小中高校生、いまだキャンパスで学生生活を送れない大学生。時短要請によって職を追われた人々。施設利用を制限されたがゆえに表現の場を失った表現者たち。日々専門的な業務に従事しているワーカーの人々がコロナ対策に手足をとられその人々にしかできない仕事ができない状況…数え上げればきりがありませんが、このクラウドファンディングで集まった寄付で、上記の必要経費に充てたお金以外のすべてのお金は、コロナ禍や緊急事態宣言によって今までの生き方に変化を強いられているあらゆる人に還元するために利用したいと考えています。
※クラウドファンディング期間は2022年3月22日までを予定しています。
※支援する金額として設定された金額以上の寄付も承っております。その場合には、金額の編集ボタンからご変更ください。その他ご不明な点などございましたらCALL4の下記アドレスまでご連絡ください。
※ご利用可能なクレジットカードは、VISA/Masterカードです(JCB/ダイナース等はシステム非対応のためご利用いただけません。ご了承ください)
【寄付金の使途についてのご報告】
本訴訟一審・控訴審・その他・原告GD関連弁護士費用(着手金・報酬・その他諸経費)¥6,767,400
意見書関連(交通費・その他諸経費)¥3,597,450
その他事務局人件費等¥1,000,000
広告通信費(備品・配信補助費)¥796,522
外部有識者打合せ費(謝礼・交際費等)¥760,273
その他雑費(書籍代・消耗品・手数料等)¥108,499
計¥13,120,144(2022年12月28日時点の総額)
なお、寄付の残金については、コロナ政策についての啓蒙イベントや寄付者との交流イベントなど、今後の活用について検討中です。
追ってこちらにお知らせ致します。
ご支援ありがとうございました。
【原告の思い】
原告の長谷川耕造さんは、幼い頃から規則の押し付けや、世間からの同調圧力に違和感を抱いていました。横浜に生まれ、世界に対しての窓が開いていたこともあり、「様々な世界の人間がどのように考えているかを見たい、外から日本を理解したい」と海外を1年半ほど放浪。その中で長谷川さんは、「穏やかな空気で社会を動かしていくのでなく、白黒をつける国にならないと世界に通用しない」と、日本という国のあり方に危機感を抱くようになったと言います。
今回の時短要請、それに次ぐ命令に対して訴訟を提起することに決めた長谷川さん。
「(小池都知事の命令は)その本質に表現の自由が保障された民主主義国家として許されることなんですか」「納得いかないことに声をあげられる人が増えるほど国は進歩していくのではないか」、そう話す長谷川さんの声には、実体験に基づく熱量がありました。
【弁護団のメッセージ】
左から 倉持弁護士 金塚弁護士 水野弁護士
▸緊急事態宣言で私たちの社会は“変わった”のか
2020年、世界を襲った新型コロナウイルスによって、我々日本社会も例に漏れずにコロナとそのリスクへの対応を迫られました。
人々は接触を避け、学校は一斉休校となり、働く現場はリモートワークが定着。飲食店は時短要請を受け、様々なイベントは中止や観客の制限を強いられ、あたりまえだった「日常」は、一瞬にして過去のものとなりました。
しかし、果たして我々の社会の本質は何か変化したのでしょうか。むしろ、今まで日本社会が見て見ぬフリをしてきた問題が露になったのではないでしょうか。
為政者は法の根拠や権利制限の外延が不明確なまま「自粛」を「要請」することによって、責任を取ることなく“コスパよく”人々の行動変容を調達しました。国会も緊急事態宣言の根拠となる新型インフル特措法の中身の議論は放棄し、政党は一様に緊急事態宣言の発令を求めました。本来権力を監視・批判するはずのマスコミも、むしろ市民の「不安」の種火に油を注ぎ続けました。
これと連動して、市民社会も脆さを露呈します。「自粛警察」に代表される同調圧力と相互監視、“助け合い”ではなく“たたき合い”によって、市民社会は自分で萎縮しました。科学、法、ファクトよりも自分を安心させてくれる強い「リーダーシップ」と言う名の権力をかざす「人」の支配。人々の“なんとなく”の感情が生み出した漠然とした「空気」の支配。
これらを前に、適切なブレーキをかけるプレーヤーもシステムも存在しないことが明らかになったのがコロナと緊急事態を前にした日本社会の姿だったのではないでしょうか。
▸私たちの「自由」について~「営業の自由」を例に
人権や憲法上の自由などというと、どうしても自分の生活からは遠いものに思いがちです。特に、今回事業者の、とりわけ飲食店の営業の自由というと、まるで一部の人の特殊な自由と考えてしまうかもしれません。ただ、少し視点を変えてみると、営業の自由とは、実は人間の生活の“ハブ”になる自由です。
日本の会社は中小企業が99.7%を占めています。この99.7%がそれぞれ営業の自由を行使しながら、日々必死に生きるために会社を営んでいます。そして会社は、経営者だけで成り立っているわけではありません。
社会的存在としての「会社」「企業」「事業所」の営業の自由には、表裏一体としてそこに働いている人たちの自由、人生、そして命がパラレルに息吹いています。営業の自由が制限されれば、そこで働く人々の働く自由が制限されます。
今回、時短要請に従って店舗営業を制限した結果、アルバイトの雇用を維持できない、非正規社員の雇用を維持できないというケースが多発したことは、企業の自由が日常を生きる人々の生活を支えているインフラであることを明らかにしました。
さらにいえば、おいしい料理を大切な人と食べる、唯一リラックスできる映画館やコンサートでの時間を過ごす、すべて、誰かの「営業の自由」が保障されているからこそ、我々一人一人は日々のかけがえのない時間を送れているのです。
現代社会自体があらゆる人々の自由の行使を基礎として建築した建造物のようにして成り立っているため、一人一人の自由の在り方は、そのまま他者の自由の在り方に関わり、ひいては我々が生きる市民社会という「家」のデザインから強度までを規定するのです。
コロナ禍や緊急事態宣言を巡って、「命か経済か」という二項対立を迫るような言説が飛び交いました。しかし、これは我が日本社会の実態を無視し、人々に無用な分断を強いる二者択一です。コロナに自由を制限される人も、緊急事態宣言で自由を制限される人も、どちらの自由にも優劣はありません。
▸「自由」や「民主主義」はこの国には存在するのか、白黒つける
今回のコロナ禍やそれに伴う緊急事態宣言において、“なんとなく”周りの人の目や、普段どおり生活できないことへの息苦しさ、言われるがままの生活様式の変容、それによる生きていくことへの不安、しわ寄せが社会の弱い人々に転嫁されていること。これらに違和感を感じたことはないでしょうか。
あなたが感じた違和感こそ、あなたの中に息づいている「自由」の声です。
今回の訴訟は、特定個人や事業者の何らかの経済的利益や、個人的な不満を最大化するためのものではありません。「訴額1円」はそのメッセージです。
日本社会には「自由」、「公正」、「民主主義」、「法の支配」が本当に存在するのか、そして、我々は真にそれらを欲するのか。
「お上に任せておけばよい」といって思考停止してきた日本社会において、このコロナとそれに伴う緊急事態宣言が作り出した社会の空気に違和感を感じた=自由の呼び声を聴いたすべての人に、この訴訟の当事者となることを呼びかけます。
誰もが当事者になれるよう、オープンかつ透明性を大切に訴訟を進めることも一つの目標です。
この訴訟は一つの出口や解決策といった「正解」を導こうとするものではありません。むしろ、訴訟自体が日本社会への大きな「問いかけ」になっています。
また、この問いかけに何か一つの正解があるわけでもありません。
この問いかけに対する答えを探す「わたし」の輪を広げ、より多様でカラフルな「わたしたち」によるしなやかな社会の姿を探す。そんな訴訟に当事者として参加しませんか。
【弁護団メンバーの紹介】
○弁護士団長 倉持麟太郎(くらもちりんたろう)
弁護士(第二東京弁護士会)/弁護士法人Next代表
1983年渋谷生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、中央大学法科大学院修了。2012年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
日本弁護士連合会憲法問題対策本部幹事、弁護士法人Next代表弁護士。衆議院平和安全法制特別委員会公聴会で参考人として意見陳述、World Forum for Democracyにスピーカー参加、米国務省International Visitor Leadership Programに招聘、朝日新聞『論座』レギュラー執筆者、慶應義塾大学法科大学院非常勤講師(憲法,~2017)
○弁護士 金塚彩乃(かねづかあやの)
弁護士(第二東京弁護士会)/フランス共和国弁護士(パリ弁護士会)
金塚法律事務所外国法共同事業
1978年生まれ。中学・高校をフランス・パリの現地校で過ごし、東京大学法学部卒業後、弁護士登録。再度、渡仏し、パリ第2大学法学部でビジネスローを学び、パリ弁護士会登録。日仏の資格を持つ数少ない弁護士として、フランスにかかわる企業法務全般及び訴訟案件を手掛ける。2013年より慶應義塾大学法科大学院でフランス公法(憲法)を教える。2013年、フランス国家功労賞シュバリエを叙勲。
○弁護士 水野泰孝(みずのやすたか)
弁護士(東京弁護士会)/水野泰孝法律事務所
早稲田大学法務研究科准教授(任期付き)・日弁連行政問題対応センター事務局長
1980年生まれ。日々の業務の中心として行政事件を取り扱う。国民・住民側、事業者側、行政側といった立場を問わず、一つの業務領域として行政事件に取り組む。対行政が多いが、行政の代理人や顧問、各種委員も務める。
*We have uploaded judgment paper re judgement made by Tokyo District Court.
Restaurants are forced to close early without justified explanation from the government:
Global-Dining operates 2000 Izakaya-style restaurants in Tokyo. In January 2021, the Tokyo metropolitan government declared a state of emergency and ordered all restaurants to close before 8 p.m. during the covid pandemic. Restaurants that did not obey the order received individual order notice from the government, and were imposed a fine up to 300,000 yen if not complied.
Global-Dining filed a lawsuit against the Tokyo metropolitan government in 2021 for damages of 104 Japanese yen ($1 U.S. dollar) and argued that this business hour curb order violates rights protected by the Constitution of Japan and has no sound legal basis.
Why the Covid business order should be illegal or unconstitutional:
First, the hour curbs were issued as an executive order from the Tokyo metropolitan government rather than as a law, meaning that such measures did not undergo any legislative procedure requirements. In fact, it was not even an “order” but a request (要請 in Japanese) without the binding force as a law. Yet, this grants the Tokyo government power to enforce such harsh restrictions and impose fines.
Second, the policy imposes serious harm to the right to freedom of business protected under article 22(1) of the Constitution of Japan. The plaintiff argued that while depriving the freedom to do business uniformly to all restaurants and imposing fines to those who do not obey, the government did not provide sufficient explanations or any evidence for its decision. How fine punishment can be justified without a binding law or a democratic legislative process?
Another point worth mentioning is that from the very beginning of the pandemic, both the government and mass media have taken the restaurant industry as the main target and blame it for spreading the pandemic. Yet, why are only restaurants targeted? The government did not explain with adequate evidential support. This might violate the equality principle guaranteed under article 14 of the Constitution of Japan.
Why did Global Dining file this litigation?
Unsurprisingly, all the arguments were rejected by the Tokyo District Court in May 2022 and the plaintiff, president of Global Dining, is preparing his appeal.
For the president of Global Dining, his goal is not merely to win this case (much less for the 104 Japanese yen damages). He takes this lawsuit as a good opportunity to rethink the meaning and practice of democracy in Japan, the importance of constitutional rights in Japanese society, and the sovereignty of people as autonomous political actors with the power to impose checks over government actions.
How the funds have been used:
・Administrative costs for filing the lawsuit
・Transportation and other expenses for witness
・Cost for legal research
・Attorney fees
The extra funds are used to support those whose life is disrupted by the pandemic and the government order.
The crowdfunding period ended on March 22, 2022. Please feel free to send CALL4 your comments and questions in the language of your choice!
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2021. 3. 22
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