2021.3.22

提訴会見レポート〜「コロナ禍、日本社会の理不尽を問う」訴訟〜

問題提起をして司法の場で審査解明する意義

2021年3月22日、「コロナ禍、日本社会の理不尽を問う」訴訟が東京地方裁判所に提訴されました。

同日12時30分から、原告及び弁護団による記者会見が行われました。会見の様子をまとめました。

1.事案とクラウドファンディングの説明

弁護団長の倉持弁護士より事案とクラウドファンディングの説明がありました。

「午前11時過ぎに、原告を株式会社グローバルダイニング、被告を東京都とする、原告に対する営業時間短縮命令に対する国家賠償請求訴訟を提起しました。
訴額は104円です。これに象徴されるように、今回の訴訟は何か特定の経済的利益のためというよりも、緊急事態宣言等が出た中で露呈された、日本の法の支配や民主主義の脆弱さを今一度問うことが目的です。」

・原告に対する狙い撃ち
「まず、ミクロの視点で、原告に対する営業時間短縮命令は、二つの意味で狙い撃ちです。一つは、要請に応じていない約2000店舗のうち、原告の26店舗を含む27施設だけ(当時)を対象に発出されたことです。二つ目は、原告が要請に従わないことをWeb上で発信していたことが命令の理由になっていることです。これは特に保護されるべき、権力に関する表現を理由にしたものといえます。これらの二重の点で狙い撃ちになっています。この点に関し、平等原則に反し、表現の自由及び営業の自由の侵害であると主張していくことになります。」

・声なき声を集約できるプラットフォーム
「先ほどミクロと申し上げましたが、原告に対する命令は、日本社会の、特に私は空気の支配といっていますが、その氷山の一角でたまたま生じたものにすぎないと考えています。今回、司法の場で命令を争うことを媒介に、空気や薄弱な法的根拠で決定がなされていくことへの違和感等を感じている人の声なき声を集約できるプラットフォームにしていきたいと思っています。

具体的な形として、すでにリリースはされていますが、CALL4を利用したクラウドファンディングで訴訟の費用を集めることを始めています。裁判の原告はお一人ですが、日本社会において閉塞感や自分の自由に対する違和感を感じている方々、全員が当事者・原告であるというような訴訟にしたいと考えております

2.原告よりコメント

原告である、株式会社グローバルダイニング代表取締役社長の長谷川耕造さんよりコメントがありました。

・訴訟に至る経緯
「営業を続けていたら書面での要請が来ました。私の信条は、徹底した情報公開というものですので、全部をFacebookで公開しました。提出した弁明書や、その後に来た命令の事前通知書も公開しました。命令の事前通知書を見て愕然としました。命令の理由として、表現の自由を行使して社会に情報を提供したということ、それによる影響が強く追随する人が増えるから命令を出したという趣旨でした。
その後、ニュースで見て、発令された事業所が27か所で、そのうち26か所がうちということで、これは憲法で保障されている表現の自由と法律の下での平等に違反しているんじゃないかと思いました。」

「民主主義社会であるべき日本でこれが行われたことを看過はできないなと思っていました。時を同じくして、倉持弁護士やCALL4の方たちと知り合うことができ、これならば訴訟をしていけるなと思いました。」

3.記者からの質問

Q: 特措法45条3項の「正当な理由」についてどのようなことを考えているか?

A: 水野弁護士「いろいろと考えていますが一番大きなものとしては、要請に従って店を閉めていれば、現実問題として、会社を維持することが難しくなる可能性があった。これは正当な理由に当たると考えています。」
倉持弁護士「憲法論としても、指摘しています。正当な理由ということで、時短要請を一律でする必要があるのか。そもそも適切な感染対策をしているところまで、罰則を付けてまで営業の自由を制約する必要があるのか。
限定的に読まなければ合憲にならないのではないかという点でも過剰規制ではないかという主張もしています。(十分な説明のない正当な理由について、)都が、司法の場でどういう説明を果たすのか明らかにすることも訴訟提起の一つの理由です。」

Q: 請求額が104円ということについて

A: 倉持弁護士「1店舗1円×26店舗×4日間=104円です。損賠賠償が主たる目的ではありません。」
金塚弁護士「勝つということになれば税金から出ることになります。都民の税金から賠償額を出させることが目的ではありません。目的は法の支配や民主主義に関する問題提起です。もちろん、1円が全ての損害ではなく、実態としてはもっと大きな損害があります。ただし、1円という象徴的な額で進めたいと思っています。」

Q: 特措法自体の違憲性も問うとのことだが、国を被告とすることは考えているのか?

A: 倉持弁護士「この訴訟の対象が、都知事によって発出された命令なので、都を被告としています。ただ、争うなかで、命令の根拠となっているのは特措法であるので、特措法が違憲であるということによって、本件命令も違憲・違法であるという主張になっています。」

4.提訴会見を終えて

今回の「コロナ禍、日本社会の理不尽を問う」訴訟は、国内初となる過料を課す「施設使用制限」命令に対する国家賠償請求訴訟です。
飲食店営業を一律制限することに関する法的根拠・科学的根拠の有無や、狙い撃ちといわれる恣意的な措置があったのか・許されるのか。賛否両論がある訴訟だと思います。
しかし、訴訟という手段で問題提起をし、司法というオープンな場で議論し明らかにされていくことには意義があると思います。

CALL4では、訴訟資料の公開やケース紹介・クラウドファンディングの実施をしております。原告・弁護団の主張に対し、被告である東京都がどのような応答・主張をし、裁判所がどのような判断をするのか。今後もCALL4にご注目ください。

※下記の関連ケースからご支援お待ちしております。また「訴訟資料」タブから訴状もご覧いただけます。
取材・⽂/林 俊毅(CALL4)
編集/丸山央里絵(CALL4)