「鳥は空に魚は水に人は社会に」訴訟 Psychiatric State Compensation Litigation
精神病院に閉じ込められたまま人生の大部分を過ごす人たちが多くいます。精神障害を持つ人も地域で暮らせるようにという世界の潮流に逆行した日本の精神医療は、国際的にも大きな批判を浴びています。この訴訟は、日本の悲惨な精神医療を長年にわたり放置してきた政府の不作為責任を問い、国家賠償請求を行うものです。私たちは、この訴訟を通じて、病院中心に偏った精神医療から地域精神医療への転換が行われることを目指します。 Many people spend most of their lives confined in psychiatric hospitals. Japan's mental health care has gone against the global trend of allowing people with mental disorders to live in the community, and has been criticized internationally. This lawsuit seeks to hold the government responsible for its inaction for years in neglecting the deplorable state of mental health care in Japan, and to seek compensation from the state. Through this lawsuit, we aim to see a shift from hospital-centered mental health care to community mental health care.
東京地方裁判所判決に対する声明
Statement regarding the Tokyo District Court ruling
2024/10/3 15:08
精神医療国家賠償請求訴訟(伊藤時男さん裁判)
東京地方裁判所判決に対する声明
2024年10月1日、東京地方裁判所において、伊藤時男さんを原告とする国家賠償請求訴訟(令和2年(ワ)第24587号)の判決が申し渡された。
判決は、原告の国家賠償請求を退けた。判決理由では、裁判の争点となっていた、この国の精神医療法制度に対する評価は一切記されなかった。そして、国の主導した隔離収容政策の歴史的経過に係る憲法判断を避け、踏み込んだ記述は皆無であった。
裁判所は、長期入院の原因を、時男さんの病状が芳しくない一時期のカルテ記載内容を根拠に「原告の病状」によるものとし、国の不作為責任を問うた原告の主張を一蹴した。
特に、判決理由においては「統合失調症などの精神疾患を有する患者については、判断能力自体に不調を来すことがあり、患者本人が適切な判断をすることができず、本人の同意がなくても入院が必要になることがあり得ることは公知の事実というべき事柄」であると断じている。これは、一時的な判断能力の不調を根拠に長期の社会的入院を当然とする、裁判所の精神障害者に対する差別的偏見を示したものといえる。
また、入院の長期化は「入院生活の方が楽だという気持ちになっていた」原告が「入院生活を継続することを自ら選択するに至ったもの」とする被告国側の主張を認め、施設症による自発的意思表明が難しい社会的入院状態にあったという原告の主張を退けた。
さらに、精神医療審査会や人身保護法による「救済の途は当然開かれている」にもかかわらず、原告は「退院等の請求をしたり、弁護士に救済を求めることはなかった」とし、長期入院は「同意入院や任意入院等といった制度の問題であるとも、精神医療政策の問題であるともいうことはできない」としている。この国における精神医療の現実と入院患者の置かれた状況を一顧だにせず、患者個人の自己責任に問題を還元している。
裁判所は「よって、その余の点を検討するまでもなく原告の請求は理由がない」と結論し、原告の請求を棄却した。
2020年9月30日の提訴以来、丸4年、計16回の口頭弁論を経てくだされた判決としては、あまりにも理不尽な中身のない判決と言わざるを得ない。精神科病院内の現実を知らない裁判所の不見識に、ただただ唖然とするしかない。40年にわたって社会的入院を強いられ、人生の大切な時間を失った、時男さんの悲しみと悔しさはいかばかりであろうか。
精神医療国家賠償請求訴訟研究会は、歴史的判決日に立ち会った多くの人々とともに、怒りと悲しみを持ってこの不当判決に強く抗議する。そして、原告の時男さんの意思に沿い、高等裁判所への控訴を今後行うことを表明する。
この国の精神医療を抜本的に変革し、精神疾患を有する方々が名実ともに社会的復権を果たし、「この国に生まれた不幸」が払拭されるその日まで、私たちは粘り強く戦い続けることをここに宣言する。
2024年10月2日
精神医療国家賠償請求訴訟研究会
Lawsuit for State Compensation for Mental Health Care (Tokio Ito Trial)
Statement regarding the Tokyo District Court ruling
On October 1, 2024 , the Tokyo District Court handed down a judgment in the lawsuit seeking state compensation (Reiwa 2 (Wa) No. 24587) filed by plaintiff Tokio Ito.
The ruling dismissed the plaintiffs' claim for state compensation. The reasons for the ruling did not include any evaluation of the country's mental health care legal system, which was the main point of contention in the trial. Furthermore, the ruling avoided a constitutional ruling on the historical course of the state-led segregation and confinement policy, and contained no in-depth description at all.
The court determined that the cause of Tokio's long hospitalization was due to "the plaintiff's medical condition" based on the contents of his medical records from a period when his condition was not good, and dismissed the plaintiff's argument that the government was responsible for its inaction.
In particular, the reasons for the judgment stated that "It is a well-known fact that patients with mental illnesses such as schizophrenia may experience impaired judgment, and may be unable to make appropriate decisions themselves, resulting in the need for hospitalization even without the patient's consent." This shows the court's discriminatory prejudice against mentally disabled people, who are expected to be hospitalized for long periods of time based on a temporary impairment of judgment.
The court also accepted the defendant's argument that the plaintiff's prolonged hospitalization was due to the fact that he "felt that hospitalization would be easier" and "came to the point where he chose to continue his hospitalization of his own accord," and rejected the plaintiff's argument that he was in a socially hospitalized state that made it difficult for him to express his will voluntarily due to institutionalization.
Furthermore, although "the path to relief is obviously open" through the Psychiatric Review Board and the Habeas Corpus Act, the plaintiff "never requested discharge or sought relief from a lawyer," and the long-term hospitalization "cannot be said to be a problem with the system, such as consensual hospitalization or voluntary hospitalization, nor a problem with psychiatric care policy." Without even considering the reality of psychiatric care in this country and the situation hospitalized patients find themselves in, the problem is reduced to the personal responsibility of the individual patient.
The court concluded, "Therefore, without even considering the further points, the plaintiff's claim is without merit," and dismissed the plaintiff's claim.
Considering that the ruling was handed down over four full years since the lawsuit was filed on September 30, 2020 , and that a total of 16 oral arguments had been held, this ruling can only be described as extremely unreasonable and empty of substance. One can only be stunned by the lack of insight of a court that does not know the reality inside a psychiatric hospital. How much sadness and regret must Tokio have felt, having been forced into social hospitalization for 40 years and losing precious time of his life?
The Research Group for Psychiatric State Compensation Lawsuits, together with the many people who were present on the historic day of the ruling, strongly protests this unjust ruling with anger and sadness. We also declare that, in accordance with the wishes of the plaintiff, Tokio, we will appeal to the High Court.
We hereby declare that we will continue to fight tenaciously until the day we achieve fundamental reform of mental health care in this country, until those with mental illnesses are truly and truly restored to society, and until the day when the "misfortune of being born in this country" is erased.
October 2 , 2024
Research Group on State Compensation Lawsuits for Mental Health Care
第15回口頭弁論(当事者尋問)
15th Oral Argument (Parties Examination)
2024/9/25 11:25
伊藤原告、当事者尋問に堂々と ドキュメント2.27
2024 年2月27日、第15回口頭弁論が行なわれました。今回は、それまでの開廷10 分前の入廷とは異なり、30 分前に103号法廷のドアが開きました。そしてすぐに傍聴席は満席になりました。満席後に到着され入廷できなかった方は、商工会館に移動 してもらい、ミニ交流会を行なっていました。
原告側弁護団は7名、被告国側代理人は4名が出席せきしました。15 時、定刻に開廷。さっそく伊藤時男さんに対する当事者尋問が行なわれました。 時男さんは長谷 川弁護団長との一問一答で、発病から入院に至る経過、福島への転院、精神科病院での入院生活を語りました。
約50分の主尋問の後、被告国側から15 分の反対尋問が行なわれ、その後さらに原告代理人弁護士が追加質問をしました。
次回の裁判期日を決め、16 時15 分には閉廷となりました。 次回口頭弁論は 6 月18日火曜日、15時103法廷と決まりました。また、追加する準備書面などがあれば、6月3日までに全て提出するように、という裁判長の指示がありました。原告・被告双方の主張を出揃わせ、次回口頭弁論で結審になるもよう。
その後、商工会館に移動し、報告会が行なわれました。報告会終了後はその同じ会場で、時男さんの『かごの鳥』出版記念&誕生会が開かれました。
当事者尋問について
原告側尋問
●入院することとなった経緯
●精神科病院における入院生活・入院治療の実態
●伊藤さん自身が入院形態についてどういう認識をもっていたのか
●退院の申し出でをどういうふうにしていたのか
●それに対して病院、ご家族との関係はどうだったのか
●法改正によっても状況は変わらなかったのか
●長期入院によって施設症になったこと
●退院の経緯
以上の内容に沿って尋問がなされました。
被告反対尋問
●入院中も自由に過ごしていたのではないか。自らの意思で入院し、その生活を謳歌していたのではないか。ということを聞き出そうとしていました。
争点1 事実認定について
証拠として提出された精神科病院のカルテには入院形態に関する記載がありません。 一般にカルテのトップに記載されている
〇〇年〇月〇日~●●年●月●日 医療保 護入院
▲▲年▲月▲日~★★年★月★日 入院形態変更・任意入院
保護者名 〇×△□ といった記載がないのです。
したがって、伊藤さんが強制的に入院させられていたのかどうかということが争点の一つにならざるを得ませんでした。
それで被告は
●伊藤さんは入院中もいろんなところに出かけていた。いろんなイベントもあった。 ある程度自由に過ごしていたのでは。
●伊藤さんは任意入院。
●仮に強制入院だったとしても、人権制約は少なかったのではないか。
ということを裁判官に印象づけようと意図したと思われます。
対して原告側は
●最初は、旧制度下の「同意入院」=医療保護入院からスタート。知らないうちに任意入院に替わったが、お父とうさんが亡くなるまではずっと強制入院のまま。伊藤さんの意思で入院しているのではないことを証言してもらいました。
●原告弁護団は、当時の精神衛生法上「同意入院」しかありえず、法改正後も「医療保護入院」であったことを主張しています。
●父親死去後に「任意入院」への切り替えが行なわれたのかもしれませんが、時男さんはそのような説明を受けたことはないと法廷で証言しました。
争点2 施設症について
●伊藤さんは退院を諦めた。
→原告側:長期入院の結果、それによってもたらされた意識。自発的なものではない。
→被告側:伊藤さんは自らの意思で入院しており、入院生活を楽しんでいた。入院を自分で望んでいたではないか。
尋問で明らかになったもの
●入院の経緯:東京の病院で入院
→最初の段階で強制入院だったことは明らか。
●福島に転院した後の病状 転院後も病状が良くなかった
→転院後も医療保護入院であった。
●「自由入院」という言葉を知っているか:知らない
●父親に言われて入院した
→保護者の同意に基づく入院であった。
●精神科病院での入院実態:長期間に渡って院内作業、院外作業をしていた
→入院の必要性がなかったことは明らか。
●退院の申し出をしたか:した
病院:家族がOKなら退院させる
家族:院長がOKなら退院させる
→板挟みになり、事実上退院できない状況が生まれ、退院の意欲が削がれていった。 病院と家族の板挟みの状況が施設症を生み出だしていくという構造を明らかにした
●状況を変えるためには外部からの働きかけが不可欠。外部からの働きかけはあったのか:ない
→医師、看護師、ケースワーカーなどはどんな働きかけをしてくれたのか。
●病院への外部監査はあったか:あったがベッド数を誤魔化すだけだった
●外出はどれ位くらいの頻度で行なったか:年に1、2回
●入院費は誰が払っていたのか:家族が負担
●入院形態の説明はあったか:ない
● 施設症にどうしてなったのか。諦めた理由は何か:(何をやっても変わらない状況に)絶望した
●退院請求制度を知っているか、使ったことはあるか:知らない。使ったことはない→原告:退院請求制度が機能していないことを裁判官に分かってもらうために質問。
→被告:退院請求制度を使ったことがない。使っていたら退院できたかもしれないことを示唆。
●退院の経緯:東日本大震災後に転院した病院で、医師からグループホームを勧められた
→施設症があろうとも、働きかけがあればすぐに退院している。
→国が監督していなかったのが問題。
こうして、「病状も安定しており、働けていたのに、40 年近く退院できなかった」現 実を証言しました。 なお、原告側が求めていた3名の証人尋問は、裁判長により却下されました。
出典元:新井満「伊藤原告、当事者尋問に堂々と ドキュメント2.27」『精神国賠通信』第32号1~3頁、2024年6月1日発行
※元原稿は全文ルビ入りでしたが、転載にあたり再構成し一部の文言を修正しています(古屋)
Plaintiff Ito confidently responds to party questioning Document 2.27
On February 27, 2024, the 15th oral argument took place. This time, unlike the usual 10 minutes before the start of the trial, the doors to Courtroom 103 opened 30 minutes before the trial began. The gallery was soon filled to capacity. Those who arrived after the courtroom was full and were unable to enter the courtroom were moved to the Chamber of Commerce and Industry building for a mini social gathering.
Seven lawyers for the plaintiffs and four lawyers for the defendants were in attendance. The court opened at 3 p.m. as scheduled. The questioning of Tokio Ito began immediately. In a question-and-answer session with the head of the legal team, Mr. Hasegawa, Mr. Ito spoke about the events that led from his onset of illness to his hospitalization, his transfer to Fukushima, and his life in the psychiatric hospital.
After approximately 50 minutes of main questioning, the defendant's side conducted 15 minutes of cross-examination, after which the plaintiff's attorney asked additional questions.
The next trial date was set, and the court adjourned at 4:15 p.m. The next oral argument was scheduled for Tuesday, June 18th, at 3:10 p.m. The presiding judge also instructed that any additional preparatory documents should be submitted by June 3rd. It appears that the next oral argument will conclude the case, with both the plaintiff and defendant presenting their arguments.
Afterwards, the group moved to the Chamber of Commerce and Industry building, where a presentation was held. After the presentation, a publication celebration and birthday party for Tokio-san's "Kago no Tori" was held in the same venue.
Regarding the examination of the parties
Plaintiff's Examination
The circumstances that led to hospitalization
The reality of hospital life and inpatient treatment in psychiatric hospitals
What was Mr. Ito's own understanding of the type of hospitalization he was in?
How did you respond to the request to leave the hospital?
How was your relationship with the hospital and your family?
Did the change in the law not change the situation?
- Becoming institutionalized due to long-term hospitalization
●Discharge history
Questions were asked along the lines of the above.
Cross-examination of the Defendant
●Is it possible that he was able to spend his time freely while he was hospitalized? Was it possible that he was hospitalized of his own volition and was enjoying his life to the fullest? I was trying to find out this.
Point of issue 1: Fact-finding
The psychiatric hospital chart submitted as evidence does not include information about the type of hospitalization.
Hospitalized under medical protection from __/__/__ to __/__/__
▲▲year▲month▲day to ★★year★month★day Change of hospitalization type/voluntary hospitalization
There is no information such as parent's name (〇×△□).
Therefore, one of the points of contention had to be whether or not Mr. Ito had been forcibly hospitalized.
So the defendant
●Even while you were hospitalized, Ito-san went out to many places. There were many events. I guess you had a certain amount of freedom.
●Mr. Ito was hospitalized voluntarily.
●Even if the hospitalization was compulsory, there were probably fewer restrictions on human rights.
It seems likely that they intended to impress upon the judge this fact.
On the other hand, the plaintiff
●At first, it started as "consented hospitalization" under the old system, which is medical protective hospitalization. Without my knowledge, it was changed to voluntary hospitalization, but it remained a compulsory hospitalization until my father passed away. Ito testified that he was not hospitalized of his own will.
●The plaintiff's legal team argues that under the Mental Health Act at the time, only "consensual hospitalization" was possible, and that even after the law was revised, the hospitalization was "medical protective hospitalization."
●It is possible that the hospitalization was switched to "voluntary hospitalization" after his father's death, but Tokio testified in court that he was never informed of this.
Point of issue 2: Institutionalization
●Mr. Ito gave up on being discharged from hospital.
→ Plaintiff: The consciousness was brought about as a result of long-term hospitalization. It was not voluntary.
→ Defendant: Mr. Ito was hospitalized of his own volition and enjoyed his hospital stay. He had wanted to be hospitalized himself.
What emerged from the interrogation
●Hospitalization history: Hospitalized at a hospital in Tokyo
→It was clear from the outset that he was forcibly hospitalized.
●Condition after transfer to Fukushima The patient's condition did not improve even after transfer
→Even after being transferred to another hospital, he remained hospitalized for medical protection.
●Do you know the term "voluntary hospitalization"?: No.
I was hospitalized because my father told me to.
→The patient was hospitalized with the consent of the guardian.
● The reality of hospitalization in a psychiatric hospital: Working inside and outside the hospital for a long period of time
Clearly there was no need for hospitalization.
Did you request to be discharged?: Yes
Hospital: If the family is OK with it, discharge the patient.
Family: If the director is OK with it, I'll discharge him.
→ Caught between a rock and a hard place, the situation created one where the patient could not be discharged, and their desire to leave the hospital was diminished. This clarified the structure in which the situation of being caught between the hospital and the family creates institutionalization.
●In order to change the situation, outside influence is essential. Was there any outside influence?: No
→What kind of efforts did doctors, nurses, case workers, etc. make?
- Were there any external audits of the hospital? Yes, but they only falsified the number of beds.
How often did you go out? Once or twice a year
Who paid the hospital bills? Family members paid for them.
Was there an explanation of the type of hospitalization?: No
- Why did you become institutionalized? Why did you give up? (No matter what you did, the situation would not change.) You felt hopeless.
●Do you know about the discharge request system and have you ever used it?: I don't know. I have never used it. → Plaintiff: This is a question to make the judge understand that the discharge request system is not functioning properly.
→ Defendant: He never used the discharge request system. He suggested that if he had used it, he might have been able to be discharged from hospital.
●Background to discharge from hospital: After the Great East Japan Earthquake, the doctor at the hospital where he was transferred recommended that he live in a group home.
→ Even if they have institutionalized conditions, they are discharged immediately if there is encouragement.
→The problem was that the government did not supervise it.
Thus, he testified about the reality that "although my condition had stabilized and I was able to work, I was unable to leave the hospital for nearly 40 years." The presiding judge rejected the plaintiff's request to call three witnesses.
Source: Mitsuru Arai, "Plaintiff Ito, confident in the party questioning, Document 2.27," "Spiritual Compensation Newsletter," No. 32, pp. 1-3, published June 1, 2024
*The original manuscript was fully written with ruby, but it has been reconstructed and some of the wording has been revised for reprinting (Furuya)
第16回口頭弁論(結審):2024年6月18日
16th Oral Argument (Conclusion): June 18, 2024
2024/9/24 19:35
第16回口頭弁論(結審)のご報告です。
東京は激しい雨でしたが、傍聴席には62名の方に参加いただきました。
裁判自体は、原告・被告双方が提出した最終書面の確認をしただけで結審となりました。
次回判決日が10月1日(火)14時~と告げられ、ほんの3分程で閉廷となりました。
雨の中を移動後の裁判報告会には受付記帳で67名の方に参加いただきました。
Zoomには24名の方に接続いただき、複数名で視聴いただいていた方もいたので、合計99名の方と考えています。
遠隔地からも多くの方々が、結審の成り行きを見守って下さっていて感謝いたします。
報告会は、長谷川弁護士が急用で出席できませんでしたが、まとめていただいた文書を古屋が読み上げる形で報告しました。
以下、その内容を「 」で要約して、古屋の感想も交えてお伝えします。
今回の裁判で提出された書面は、「原告準備書面8」と「被告準備書面(7)」でした。
前回の原告の当事者尋問を踏まえて、原告側は、これまでの主張の整理も行い書面化しました。
しかし、被告国側は、事実レベルの主張のみのとても短いものでした。
◆事実レベルの主張
カルテの記載内容が杜撰なため(あるいは改竄のため)「入院形態」が1つの争点になっています。
原告側は「精神衛生法時代の入院のため同意入院で」「カルテ内容や原告の認識からすれば2003年までは医療保護入院」であることは明らかとしました。
その上で「そもそも入院形態が明確でないことは、国の制度設計の不備に由来するもの」「強制入院の実態には変わりがなく、これによる不利益を原告に追わせるべきではない」としました。
一方で、被告側は「原告の入院形態は立証されていない」としています。
原告が退院できなかった理由が、前回の当事者尋問で繰り返し問われた内容でした。
原告側は、「長年にわたる入院治療は不要であった」と主張しました。
その理由として「自らの症状や状況を客観視できていた」「作業に問題なく従事できていた」「転院後にすぐに退院できた」「退院後問題なく生活している」等を挙げました。
さらに「原告の治療に携わった医師も、カルテ等を精査した精神科医も、長年の入院治療は不要であった」との証言をしていることを挙げました。
これに対して、被告側は、「退院できなかった原因は、国の不作為によるものではない」としています。
退院できなかったのは「原告の病状の可能性」と「家族が退院を認めていなかった」可能性を挙げて、「原告自身が入院しているほうが楽であると考えて、入院継続を選択していた」としました。
(この最後の理由については、時男さんも「ひでえこと言いやがる」と報告会で述べていました)
◆法律等の憲法違反に関して
原告側は、「同意入院、医療保護入院を定めた規定は違憲」「任意入院も真の任意性が担保されておらず違憲」「精神科特例も違憲」と主張しました。
被告側は、これについて今回の書面では一切触れていません。
◆国賠法上の「違法性」について
原告側は、「これまで立法不作為の違憲性は国賠法によって救済がなされてきており、本件でも国賠法上の救済を閉ざすべきではない」としました。
特に「人身の自由という根幹的な人権侵害であり、その権利侵害性は明白」「これを認識しながら、法律を改廃しなかったことは違法」としました。
そして、「人身の自由等の根幹的な人権侵害」は「その前提となる隔離収容政策は国の政策に起因すること」を述べました。
特に「医療保護入院は、多くの民間病院に強制入院の権限を与え」「低医療費・低人件費で病院経営をさせ」「隔離収容政策となることを国が是認していた」としました。
「国がどのような政策をとろうが条理上の責任を負わないとするのであれば、法律で私人に幸福追求権、人身の自由、移動の自由などを制限する権限を与えて国は一切責任を負わないこととなる」とその不当性を述べ、厚生(厚労)大臣は「条理上の作為義務を負う」としました。
その上で、人権侵害を認識しながら、地域医療への政策転換、精神病院に対する指導監督、長期入院を強いられている人に対する救済をしてこなかったことは違法であるとしました。
被告側は、これらの点について、今回の主張書面では一切触れていません。
これまで、立法不作為については、それが違法と評価されるためには、権利侵害が明白である場合など限定的な場面に限られるべきと主張しています。
また、厚生大臣の作為義務についても、条理上の作為義務はその義務や権限が一義的ではないとして、国賠法上の違法性が認めらないと主張しています。
◆参加者の意見
裁判報告会に参加した会場およびZoomの参加者からは、
「被告国側は、事実レベルの争点に集約して逃げている」
「被告国側は、現行法による医療保護入院は適法、合憲と考えているのか」
「これまでの審議会や検討会、国会で真摯に語られてきた反省と総括はどこに行ったのか」
「被告国側は、時男さんの意見陳述にこころ揺さぶられないのか」
等々の意見が述べられました。
◆まとめ
一審判決は、10月1日(火)14時~に出される予定です。
判決までの期間としては、妙に長いなという印象を持ちます。
それがどのような意味を持つのか、現時点ではわかりません。
裁判ですので、「勝訴」か「敗訴」かの二択になる訳ですが、両者の間には相当幅の広いグラデーションがあり得ます。
私たちは、原告の主張について国賠法上の違法性を認める「勝訴判決」を求めています。
しかし、国賠法上の違法性を認めない「敗訴判決」であっても、憲法上の違憲性は認められる場合もあり得ます。
また、憲法上の違憲性等を判断しなかったり、医療保護入院等は憲法上合憲であると判断することもあり得ます。
被告国側が目指しているのは、原告側に事実レベルの立証がないとして、論点に入らず原告の請求を棄却する判決でしょう。
判決に書かれる文言によって、今後の精神医療政策への影響の度合いが変わってきます。
10月1日の判決に向けて、精神国賠研としてこころして準備に取り組まねばと、意を新たにしたところです。
判決の日をどのように迎えるか、今後、運営委員会や月例会でも協議していければと思います。
歴史的判決の日を、時男さんとともに笑顔で迎えられるよう祈っています。
出典:古屋龍太「裁判結審のご報告」精神国賠研究会会員メーリングリスト2024年6月21日発信
※CALL4への裁判の経過報告掲載が滞り、申し訳ありません。抜けている裁判進捗報告は後日アップさせていただきます。
Report on the 16th oral argument (conclusion).
Despite heavy rain in Tokyo, 62 people attended in the gallery.
The trial itself concluded with the confirmation of the final documents submitted by both the plaintiff and defendant.
The next verdict was announced to be on Tuesday, October 1st at 2pm, and the court adjourned in just three minutes.
After moving through the rain, 67 people attended the trial report meeting by registering at the reception.
We had 24 people connect to Zoom, and some people watched with multiple others, so we believe the total number of people was 99.
We are grateful to the many people who are watching the progress of the trial from afar.
Attorney Hasegawa was unable to attend the report meeting due to urgent business, but Furuya gave the report by reading out the documents that had been compiled.
Below, I will summarize the contents in brackets and include Furuya's impressions.
The documents submitted in this trial were “Plaintiff’s Preparatory Brief 8” and “Defendant’s Preparatory Brief (7).”
Based on the plaintiff's previous cross-examination, the plaintiff's side has organized its arguments to date and put them in writing.
However, the defendant's arguments were very short and only contained factual contentions.
Fact-level assertions
One point of contention is the "type of hospitalization," due to sloppy (or falsified) information being recorded in the medical records.
The plaintiff's side made it clear that "the hospitalization was conducted under the Mental Health Act and was a voluntary hospitalization," and "based on the contents of the medical records and the plaintiff's understanding, he was hospitalized for medical protection until 2003."
The court then stated, "The fact that the form of hospitalization is not clear in the first place stems from flaws in the national system design," and "the reality of forced hospitalization remains unchanged, and the plaintiffs should not be made to suffer the disadvantages that result from this."
On the other hand, the defendant claims that "the plaintiff's form of hospitalization has not been proven."
The reason why the plaintiff was unable to be discharged from the hospital was a topic that was repeatedly raised during the previous cross-examination of the parties.
The plaintiffs argued that "years of inpatient treatment were unnecessary."
The reasons given for this included "I was able to objectively view my symptoms and situation," "I was able to work without any problems," "I was able to be discharged immediately after being transferred to another hospital," and "I am living without any problems since being discharged."
Furthermore, the court pointed out that "both the doctors who treated the plaintiff and the psychiatrist who examined his medical records testified that long-term inpatient treatment was unnecessary."
In response, the defendant argued that "the reason he was unable to be discharged from the hospital was not due to the government's inaction."
The court cited possible reasons for the plaintiff's inability to be discharged from hospital as "possibly due to the plaintiff's illness" and "his family not allowing him to be discharged," and stated that "the plaintiff chose to remain hospitalized, as he thought it would be easier for him to remain hospitalized."
(Regarding this last reason, Tokio also commented at the presentation, "That's a terrible thing to say.")
Regarding violations of the Constitution, such as laws
The plaintiffs argued that "the regulations governing consensual hospitalization and medical protective hospitalization are unconstitutional," "voluntary hospitalization is also unconstitutional because it does not guarantee true voluntariness," and "the psychiatric special provisions are also unconstitutional."
The defendants have not addressed this at all in their filings.
◆ Regarding "illegality" under the State Compensation Act
The plaintiffs argued that "until now, unconstitutionality of legislative inaction has been remedied under the State Compensation Act, and remedies under the State Compensation Act should not be closed in this case either."
In particular, the court stated that "this is a fundamental violation of human rights, namely personal freedom, and its infringement is clear," and that "the failure to amend or repeal the law despite recognition of this is illegal."
He also stated that "fundamental violations of human rights, such as personal freedom," "are the result of the isolation and detention policy that is the basis for this," and that this is a result of national policy.
In particular, the report stated that "medical protective hospitalization gave many private hospitals the authority to involuntarily admit patients," "allowed hospitals to operate with low medical and labor costs," and "the government approved of a policy of isolated confinement."
"If the state is not held responsible in principle no matter what policies it adopts, then it would be like giving private individuals the power by law to restrict the right to pursue happiness, personal liberty, freedom of movement, etc., and the state is not held responsible at all," he stated, stating the injustice of this, and that the Minister of Health, Labour and Welfare is "held a duty to act in principle."
The court then ruled that it was illegal for the government to have recognized the human rights violations and yet failed to shift policy toward community-based medical care, provide guidance and supervision to psychiatric hospitals, or provide relief to those forced into long-term hospitalization.
The defendants have not addressed these points at all in their written argument.
Until now, we have argued that for legislative inaction to be considered illegal, it should be limited to limited circumstances, such as when the infringement of rights is clear.
Regarding the Minister of Health, Labour and Welfare's duty to act, the court also argues that the duty and authority to act in principle are not unambiguous, and therefore does not recognize any illegality under the State Compensation Act.
◆Participants' opinions
Participants in the trial report session, both in person and via Zoom, responded:
"The defendant country is trying to avoid the issue by reducing it to factual issues."
"Does the defendant country consider that medical protective hospitalization under the current law is lawful and constitutional?"
"Where has the sincere reflection and review that has been given in advisory councils, review committees and the Diet gone?"
"Is the defendant's side not shaken by Tokio's statement?"
Various opinions were expressed.
Summary
The first instance ruling is scheduled to be handed down at 2 p.m. on Tuesday, October 1st.
I have the impression that the time it takes to reach a verdict is unusually long.
What that means is unclear at this point.
Since it is a trial, there are only two options: win or lose, but there can be a fairly wide range of outcomes between the two.
We are seeking a "victory judgment" that recognizes the illegality of the plaintiff's claims under the State Compensation Act.
However, even if a "loss judgment" does not acknowledge illegality under the State Compensation Act, unconstitutionality under the Constitution may still be acknowledged.
It is also possible that the court will not make a judgment on whether a crime is unconstitutional, or that it will decide that medical protective hospitalization is constitutional.
What the defendant country is aiming for is a judgment that dismisses the plaintiff's claim without going into the issue, on the grounds that the plaintiff has not presented any factual evidence.
The wording of the ruling will determine the extent to which it will affect future mental health care policies.
We at the National Institute for Mental Health Compensation have renewed our resolve to work hard and prepare for the verdict on October 1st.
We hope to continue to discuss how we will approach the day of the verdict at future management committee and monthly meetings.
I hope that on the day of this historic verdict, we will be able to greet each other with a smile, along with Tokio.
Source: Ryuta Furuya, "Report on the conclusion of the trial," sent to the Mental Compensation Research Association member mailing list on June 21, 2024
*We apologize for the delay in posting the trial progress report to CALL4. We will post the missing trial progress report at a later date.
第10回・11回・12回口頭弁論:2023年2月21日・5月15日・7月25日
10th, 11th, 12th oral argument: February 21, May 15, July 25, 2023
2024/2/8 16:53
◆第10回・第11回・第12回口頭弁論 2023年2月21日・5月15日・7月25日
第9回裁判期日(昨年11月29日)以降の報告が滞りましたが、2023年に入ってからの第10回~第12回の伊藤裁判の動向をまとめておきます。
第10回(2月21日)、第11回(5月15日)、第12回(7月25日)の裁判では、原告側から様々な証拠書類を提出しています。具体的には、会員各位から寄せられた130名分の証言を集約整理した報告書、専門家の意見書(精神科医6名、福祉関係者3名、憲法学者1名)、韓国の裁判例、国連拷問禁止委員会からの勧告、大阪精神保健福祉審議会(1999年)、精神神経学会等の意見書、原告伊藤さん本人の陳述書等です。
これらを要約する形で提出された原告準備書面6の内容から一部抽出して、原告側の主張を記します。
1 医療保護入院制度は隔離収容目的であり違憲であることについての意見等
・日本の精神障害者の入院は歴史的経緯から社会防衛の機能が重視されてきた
・入退院の医療提供は、病状とは無関係の事情により決定がなされている
・入院の長期化は施設症ないしは退院意欲を喪失させるため、避けなければならない
・精神科病院が適正な医療を提供する場となっていない
・家族を同意者(保護者)とする仕組みが隔離収容を増長させている
2 医療保護入院制度が人権制約の「手段」としても許容されるものではないことについての意見等
・より制約が少ない他の手段をとりえないこと等が規定されていない(韓国の憲法裁判所、日本精神神経学会、国連等でも指摘されている)
・支援を尽くしてもなお本人が入院の是非を判断できないことが規定されていない
・要件が曖昧である
・司法審査が欠如している(指定医の利益相反性など)
・2007年の国連拷問禁止委員会による審査では、「私立病院における民間の精神保健指定医が、精神障害者に対する拘束指示を出すに当たっての役割を担っていること」に懸念を表明しているが、この「拘束指示」の原文は「detention orders」であり、抑留等人身を制約する強制入院をさしている
・入院期間を制限すべき
・精神医療審査会による審査等は機能していない(中立性・独立性に疑義、書面審査は機能していない実態、そもそも退院請求等に至らない実態、審査が適正に行われていない)
・家族の同意は患者の人権擁護として不十分
3 精神科特例の違憲性についての意見等
・精神科においては一般医療以上に医療従事者が必要である
・精神科特例が患者の治療に悪影響を及ぼしている
4 地域医療中心の政策への転換義務違反についての意見等
・クラーク勧告やルコントレポートで「社会復帰施設整備義務」があることが明記されるなど、国には社会復帰施設整備をしなければならないことは明らかであったにもかかわらず、国は、財源の分配、住居、作業所や生活支援の整備などを怠った
・入院医療を民間病院に委ねてきたという先行行為がある以上、民間病院に地域医療でのインセンティブを付与するなど、条理上、国は「地域医療充実義務」を果たす必要があるにもかかわらず、地域医療の促進を怠った
・国が主張する施策については社会復帰に効果的ではなかった
5 精神科病院に対する指導監督義務違反についての意見等
・国は、経営を重視せざるを得ない民間精神科病院を乱立させ、強制入院権限を与え、少ない医療従事者でよしとする政策を実施した(先行行為)のであるから、入院が長期化せず、適正な医療が提供される指導監督する義務があるのに、実質的に機能していない監査しか行っておらず義務を怠った
6 入院治療の必要のない人に対する救済義務違反
・上記同様、国の先行行為によって、入院治療の必要のない人が入院を強いられることとなったという実態があるにも関わらず、国はそれらを救済するための措置を講じてこなかった
・国が主張するような退院促進支援事業は、不要な入院を強いられた人を救済するためのものとして機能していない
7 任意入院の違憲性
・任意入院は、任意性が担保されておらず、強制入院との区別も不適切であり、強制入院と同様の処遇を受けるものものあり、さらに退院制限の仕組みによって強制入院と類似の圧迫感を患者に与えており、実質的には強制入院として用いられている実態がある
8 因果関係
・原告のような社会的入院患者は日本では広く見られており、それらは同意入院・医療保護入院制度や国の政策に起因している
裁判および報告会には、この間55名~85名の傍聴参加者を得ています。今後は法廷での証人尋問を裁判所に求める予定ですが、早ければ2024年春に結審を迎える段階に至っています。ここまで相当な時間を要する作業に取り組んでいただいた弁護団の方々に感謝致します。また、毎回裁判報告会に同席いただき解説をしてくれている長谷川弁護団長に改めてお礼申し上げます。
引用元
古屋龍太「裁判期日(第10回~12回)の報告」精神国賠通信,No.30;1-2,2023年8月
◆10th, 11th, 12th oral argument February 21, May 15, July 25, 2023
There has been a delay in reporting after the 9th trial date (November 29th last year), but we will summarize the trends of the 10th to 12th Ito trials since the beginning of 2023.
In the 10th (February 21st), 11th (May 15th), and 12th (July 25th) trials, the plaintiffs submitted various documentary evidence. Specifically, it includes a report summarizing 130 testimonies submitted by members, written opinions from experts (6 psychiatrists, 3 welfare workers, and 1 constitutional scholar), and a Korean court case. Examples include recommendations from the United Nations Committee against Torture, opinions from the Osaka Mental Health and Welfare Council (1999), the Society of Psychiatry and Neurology, and statements from the plaintiff, Ms. Ito.
We will write down the plaintiff's claims by extracting some of the contents of Plaintiff's Preparatory Document 6, which was submitted in a summary form.
1. Opinions regarding the medical protection hospitalization system being unconstitutional as it is intended for isolation and detention.
・For historical reasons, emphasis has been placed on the function of social defense when it comes to hospitalization of mentally ill people in Japan.
・Decisions regarding the provision of medical care for admission and discharge are made based on circumstances unrelated to the patient's medical condition.
・Prolonged hospitalization must be avoided as it can lead to facility syndrome or loss of desire to leave the hospital.
・Psychiatric hospitals do not provide appropriate medical care
・The system that requires family members to be consenting persons (guardians) is increasing isolation and detention.
2 Opinions regarding the fact that the medical protection hospitalization system is not acceptable as a “means” for restricting human rights.
・It is not stipulated that other less restrictive measures cannot be taken (this has been pointed out by the Korean Constitutional Court, the Japanese Society of Psychiatry and Neurology, the United Nations, etc.)
・It is not stipulated that even after all support is given, the patient still cannot decide whether or not to be hospitalized.
・Requirements are vague
・Lack of judicial review (conflict of interest of designated doctor, etc.)
・A review by the United Nations Committee against Torture in 2007 expressed concern that ``private mental health doctors at private hospitals play a role in issuing restraint orders for mentally ill people.'' The original text of this "detention order" is "detention orders," which refers to forced hospitalization that restricts the person, such as internment.
・Hospitalization period should be limited
・Examinations by the Psychiatric Review Board are not functioning (questions about neutrality/independence, actual situation where written examination is not functioning, actual situation where request for discharge etc. is not reached in the first place, examination is not conducted properly)
・Family consent is not sufficient to protect patient's human rights
3 Opinions regarding the unconstitutionality of special provisions for psychiatry
・Psychiatry requires more medical personnel than general medicine.
・Psychiatric special cases have a negative impact on patient treatment
4 Opinions regarding the violation of the obligation to shift to a policy centered on community medical care, etc.
・Although it was clear that the government had to develop social rehabilitation facilities, as the Clark Recommendation and the Leconte Report clearly stated that there was an obligation to develop social rehabilitation facilities, the government did not have enough financial resources to do so. Neglected the distribution of housing, workspaces, and livelihood support, etc.
・As long as there is a prior act of entrusting inpatient medical care to private hospitals, the government is theoretically required to fulfill its ``obligation to enhance local medical care'' by giving incentives to private hospitals in local medical care. , failed to promote local medical care.
・The measures advocated by the government were not effective for reintegration into society.
5 Opinions, etc. regarding violations of the obligation to provide guidance and supervision to psychiatric hospitals
・The government has created a glut of private psychiatric hospitals that have no choice but to prioritize management, has given them the power to compulsorily admit patients, and has implemented policies that allow for fewer medical personnel (precedent actions), leading to longer hospitalizations. Although the company has a duty to provide guidance and supervision to ensure that appropriate medical care is provided, the company failed to fulfill its duty by conducting audits that were not actually functioning.
6 Violation of duty to provide relief to persons who do not require hospital treatment
・Similar to the above, despite the fact that people who did not need hospital treatment were forced to be hospitalized due to the government's prior actions, the government has not taken any measures to relieve them.
・The discharge promotion support project advocated by the government does not function as a relief for people who are forced into unnecessary hospitalizations.
7. Unconstitutionality of voluntary hospitalization
・Voluntary hospitalization is not guaranteed to be voluntary, and it is inappropriate to distinguish it from compulsory hospitalization. Some cases are treated in the same way as compulsory hospitalization, and furthermore, due to the mechanism of discharge restrictions, it can cause a feeling of pressure similar to compulsory hospitalization. is given to patients, and in reality it is being used as forced hospitalization.
8 Causation
・Social inpatients like the plaintiff are common in Japan, and they are caused by the consent hospitalization/medical protection hospitalization system and national policies.
During this time, 55 to 85 people attended the trial and debriefing session. We plan to request the court to interrogate witnesses in court, but we are at the stage where the case could be concluded in the spring of 2024 at the earliest. I would like to express my gratitude to the attorneys who have worked on this task, which has taken a considerable amount of time. I would also like to once again thank Mr. Hasegawa, Attorney General, for attending each trial report session and providing commentary.
Quote source
Ryuta Furuya “Report on trial dates (10th to 12th)” Shinkokubai Tsushin, No. 30; 1-2, August 2023
第9回口頭弁論:2022年11月29日
9th Oral Argument: November 29, 2022
2024/2/8 16:48
◆第9回口頭弁論 2022年11月29日
精神国賠裁判の直近の様子をお伝えするとともに、今後の展開について私見を述べたいと思います。
まず、第9回裁判期日(2022年11月29日)に多数の傍聴をいただき、ありがとうございました。これまでで最多の73名の方に傍聴席を埋めていただき、その後の裁判報告会にも78名(会場65名+Zoom接続13名)の方にご参加いただきました。中には精神保健福祉士を目指している学部生もおり、真剣に裁判の争点や当事者・家族の発言に耳を傾けていました。
今回の裁判では、被告国側から準備書面(5)が提出されました。これは、これまでに原告側が提出した準備書面3・4・5に対する反論書面になっています。報告会で長谷川弁護士から解説された概要を、かいつまんでご報告します(以下、「 」内は被告国側の主張の要約です)。
1.医療保護入院に関して
(1)同意入院・医療保護入院の目的
被告国側は、「精神障害においては、他の疾病と異なり、本人に病気であることの認識がないなどのため、入院の必要性について本人が適切な判断をすることができず、自己の利益を守ることができない場合があることを考慮し、このような者について、自傷他害のおそれがあるとまではいえないが、医療及び保護のために入院の必要があると認められる場合に適正な医療を提供し、もって、本人の利益を図ることを目的としている」ものであり、原告側が述べるような「隔離収容目的」ではないとしています。
(2)入院要件が曖昧で解釈指針もないこと
原告側が憲法違反であると主張していることに対して「行政手続きにおいて憲法31条は直接適用されない。制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、公益の内容、程度、緊急性等を総合的に衡量して決定される」とし、「患者本人の利益を図るという目的は正当であり、人権を過度に制約することのないよう、医師又は指定医が入院必要性を認めたうえで、保護義務者の同意がある場合に限って入院を認めている」「退院の要件、入院中の処遇の基準等の手続き保障の内容が定められており、加えて、精神保健福祉法では医療審査会が設置されており、憲法31条の法意に反しない」と反論しています。
また、国連人権規約(B規約)に反するとの原告の主張に対しては「入院届に対する精神医療審査会の審査でB規約9条4項は満たされている」「自由権規約委員会の一般的意見は、条約解釈を法的に拘束する効力はない」と反論しています。
(3)治療アクセス保証のため
「精神科病院の入院医療は、『自らが病気であるという自覚を持てないときもある精神疾患では、入院して治療する必要がある場合に、本人に適切な入院医療を受けられるようにすることは、治療へのアクセスを保証する観点から重要である』ということは、医師、自治体、学識者のみならず、当事者を含めて共通の認識であり(平成24年のあり方検討会の「入院制度に関する議論の整理」)、そのことは今でも変わらない」としています。
「医療保護入院を即時に廃止するような方向性が共通認識として示されたことはない」し、「国が行ってきた法令改正は、医療の進歩等を踏まえつつ、最善の制度を提供できるよう検討及び改正を重ねており、かつ、権利擁護や地域移行の観点から必要な措置を採ったもの」であるとして、「原告が退院できなかったことをもって直ちに、医療保護入院制度が憲法上の権利侵害が明白であるとはいえない」と結論付けています。
(4)医療観察法との比較
「法律の目的が大きく異なるなど、両法律を単純に比較することはできない」と退けています。
2.任意入院制度に関して
任意入院制度が強制性を含んでいるとの原告の主張に対して、「任意入院は、非強制という状態での入院を促進することに中心的意義がある」。「入院に際しては、患者自ら入院する旨を記載した書面が求められている。退院等請求もできる。退院の申し出があれば原則として退院させなければならない」制度となっているとして、「一般的に、運用として、入院が医師の一方的な判断で行われたり、患者の同意の任意性が確保されないものであるなどとは言えない。任意入院の規定が憲法上の権利侵害が明白であるとはいえない」と反論しています。
3.精神科特例に関して
精神科特例により、他診療科に比して差別的な人員配置となっているとの原告の主張に対して、「精神科特例は、医師及び看護師等の配置基準を緩和したものであり、他のスタッフとは何ら規定がされていない」として「原告の主張も医師及び看護師等の配置基準との関係については主張が具体的ではない」と反論しています。
さらに「全ての医療において、慢性的な治療を要する疾病は存在する。精神科医療においては、精神疾患の多くが慢性である、あるいは病状の急変が少ないという特質を踏まえつつ、あらゆるニーズに対応した精神科医療を想定する必要がある。また、精神科特例は、あくまで暫定的な運用として特例を示したものであることに加え、精神科特例そのものが入退院の時期を定めるものではない」として、「厚生大臣が原告との関係において精神科特例を廃止すべき義務は負わない」と結論付けています。
4.地域医療政策転換義務に関して
原告側の訴えに対して、被告国側は「前提として、法令の規定やその趣旨目的に照らし、作為義務の内容が明確ではない」としたうえで、「昭和40年に中間答申等の指摘や精神医学の進歩による医療体制の変化に基づいて精神衛生法の改正を行なった」「昭和41年に『保健所における精神衛生業務運営要領』、昭和44年に『精神衛生センター運営要領』、昭和50年に『精神障害回復者社会復帰施設』及び『デイ・ケア施設』の運営要領、昭和55年に『精神衛生社会生活適応施設』の運営要領等を示しており、以後も適切に施策を講じている」と述べ、「厚生大臣及び厚労大臣に違法な不作為がないことは明らかである」と結論付けています。
5.精神病院に対する指導監督義務違反
原告側の主張に対して、被告国側は、「すでに被告準備書面(3)で述べたとおりである」として、それ以上の言及はありませんでした。
6.社会的入院者に対する救済義務違反
社会的入院者に対する救済義務が被告国にはあったとする原告の主張に対して、「前提として、法令の規定やその趣旨目的に照らし、作為義務の内容が明確ではない」とし、「これまでも『積極的な退院支援』や『積極的調査介入義務』は国の施策として行ってきた」と反論しています。
7.今回の裁判の評価
上記のように、今回の被告国側の反論は、これまで被告国側が述べてきたことを再度繰り返す内容にとどまりました。これまで「精神国賠通信」紙上でも掲載してきた、被告国側の主張を読んでいただければわかるように、特に目新しい記述もなく、分量もA4判で20ページに満たない薄いものでした。
特に立法府(国会)の不作為責任について追及した原告側の主張に対しては、ほぼ無回答で、行政府(厚生労働大臣)の責任についても「主張が明確ではない」「作為義務は負わない」「違法な不作為はない」と繰り返すのみでした。前回裁判で「反論に時間を要する」として3か月後の開廷を求めたのは、果たして何だったのでしょう。いたずらにただ待たされた感が残ります。
おそらく(これは私見の憶測ですが)、この裁判と同時並行で準備され、国会に上程された「精神保健福祉法一部改正案」を含む「障害者総合支援法等一括改正案」(いわゆる束ね法案)の審議への影響が及ばぬようにということで、省内調整等が為されていたのではないでしょうか。いずれにせよ、新しい反論主張も無いまま「以上!」と締めにかかった感があります。
ちなみに、この法案については、精神国賠研としても見過ごすことができないとの月例会での議論もあり、専門部会で協議して見解をまとめました。12月5日付で参議院の厚生委員の議員たち16名にファックスで送っています。
8.今後の裁判の展開
第9回期日の最後に、原告弁護団からは証言資料を提出することを求め、裁判長に許可されました。これを受けて、次回の第10回期日では、原告弁護団より「証言陳述書」が証拠資料として提出される運びとなりました。この間、会員の皆さんにご協力いただき寄せていただいた、当事者・家族・専門職の「証言陳述書」を通して、日本の精神医療の状況は、この裁判の原告の伊藤時男さんだけでなく、等しく各地で体験されていることを法廷に示していくこととなります。
また、合わせて原告弁護団は、この裁判で問われている隔離収容政策の歴史的経緯や現行の入院制度・精神医療審査会等の問題について、精神科医等の識者に意見を求めることを決め、専門部会でその人選を協議してきています。
裁判はいよいよ大詰めを迎えようとしています。一人ひとりができることは限られていますが、可能な方は第10回期日の法廷に来て、傍聴席から見守っていただけたらと思います。
引用元
古屋龍太「第9回裁判期日と今後の展開」精神国賠通信,No.28;3-5,2023年1月発行
◆9th Oral Argument November 29, 2022
I would like to share with you the latest developments in the National Compensation Tribunal, as well as offer my personal opinion on future developments.
First of all, I would like to thank the large number of people who attended the hearing on the 9th trial date (November 29, 2022). A total of 73 people filled the audience seats, the largest number ever, and 78 people (65 people at the venue + 13 people connected via Zoom) participated in the subsequent trial report session. Some of the undergraduate students were aiming to become mental health workers, and they listened intently to the issues at issue in the trial and the statements of the parties and their families.
In this case, the defendant country submitted a preliminary document (5). This is a written rebuttal to Preparatory Documents 3, 4, and 5 that the plaintiff has submitted so far. I would like to briefly report on the summary explained by Attorney Hasegawa at the briefing session (below, the text in parentheses is a summary of the defendant country's argument).
1. Regarding medical protection hospitalization
(1) Purpose of consent hospitalization/medical protection hospitalization
The defendant's side stated, ``Unlike other illnesses, with mental disorders, the person is not aware that he or she is sick, so the person is unable to make an appropriate judgment regarding the need for hospitalization, and Taking into consideration that there may be cases in which it is not possible to protect the interests of such persons, cases where it is deemed necessary for such persons to be hospitalized for medical care and protection, although it cannot be said that there is a risk of harm to themselves or others. The purpose of the facility is to provide appropriate medical care to the patient and thereby benefit the patient," and is not intended to be "isolated and detained," as stated by the plaintiffs.
(2) Hospitalization requirements are vague and there are no interpretation guidelines.
In response to the plaintiff's claim that there is a violation of the Constitution, ``Article 31 of the Constitution is not directly applied in administrative procedures. ``The purpose of protecting the patient's interests is legitimate, and the patient's human rights are not unduly restricted, so the doctor or designated doctor recognizes the need for hospitalization.'' ``Hospitalization is permitted only with the consent of the guardian.'' ``Requirements for discharge, standards for treatment during hospitalization, etc. are stipulated, and in addition, the Mental Health and Welfare Act A medical review board has been established, and this does not violate the legal intent of Article 31 of the Constitution.''
In addition, in response to the plaintiff's claim that it violates the United Nations Human Rights Covenant (B Covenant), ``The Psychiatric Review Committee's review of the hospitalization notification confirmed that Article 9, Paragraph 4 of the B Covenant was satisfied'' and ``The International Covenant on Human Rights Committee ``General opinions have no legal binding effect on treaty interpretation.''
(3) To guarantee access to treatment
``Inpatient medical care at psychiatric hospitals is aimed at ensuring that patients receive appropriate inpatient medical care when they need to be hospitalized for mental illnesses in which they may not even be aware that they are sick.'' This is important from the perspective of guaranteeing access to treatment.'' This is a common recognition not only by doctors, local governments, and academics, but also by those who are involved. ``Organizing debates regarding the system''), and that remains the case.''
``There has never been a consensus on the direction of immediately abolishing medically protected hospitalization,'' and ``the legal revisions that the government has carried out will provide the best possible system, taking into account advances in medical care.'' ``As a result of the plaintiff's inability to be discharged, the medical protection hospitalization system was immediately revoked under the Constitution.'' It concludes that there is no obvious violation of rights.
(4) Comparison with medical observation method
``The two laws cannot be compared simply because their objectives are very different.''
2. Regarding the voluntary hospitalization system
In response to the plaintiff's argument that the voluntary hospitalization system includes compulsion, ``the central significance of voluntary hospitalization is to promote hospitalization in a non-compulsory manner.'' ``When being hospitalized, patients are required to submit a document stating that they will be hospitalized.They can also request discharge, etc.If a request for discharge is made, in principle, the patient must be discharged.'' Furthermore, it cannot be said that hospitalization is carried out based on the doctor's unilateral decision or that the patient's consent is not guaranteed.The provision of voluntary hospitalization is a clear violation of constitutional rights. "I can't say that," he argues.
3. Regarding special cases of psychiatry
In response to the plaintiff's claim that the special provisions for psychiatry result in discriminatory staffing compared to other medical departments, the plaintiff said, ``The special provisions for psychiatry are a relaxation of standards for the placement of doctors, nurses, etc. ``There are no regulations regarding the standards for the placement of doctors, nurses, etc.'' and ``the plaintiff's claims are not specific regarding the relationship with the standards for the placement of doctors, nurses, etc.''
Furthermore, ``In all medical fields, there are diseases that require chronic treatment.In psychiatric medical care, we strive to respond to all needs, taking into account the characteristics of most mental illnesses that are chronic or that their condition rarely changes suddenly.'' Psychiatric medical care needs to be considered.In addition, the psychiatric special provisions are only a provisional provision, and the psychiatric special provisions themselves do not determine the timing of admission or discharge." The court concluded that ``the Minister of Health and Welfare has no obligation to abolish the psychiatric special provisions in relation to the plaintiff.''
4. Regarding the obligation to change local medical policy
In response to the plaintiff's complaint, the defendant country stated, ``Based on the premise, the content of the obligation to act is not clear in light of the provisions of the law and its purpose and purpose,'' and added, ``The content of the obligation to act is not clear in light of the provisions of the law and its purpose and purpose.'' The Mental Hygiene Act was revised based on the changes in the medical system due to advances in psychiatry and psychiatry.''In 1966, the ``Guidelines for the Management of Mental Hygiene Services at Public Health Centers'' was published, and in 1966, the ``Guidelines for the Management of Mental Health Centers'' were published. In 1950, operating guidelines for ``social reintegration facilities for persons recovering from mental disorders'' and ``day care facilities'' were established, and in 1980, operating guidelines for ``mental health and social life adaptation facilities'' were established, and appropriate measures have been continued since then. ``It is clear that the Minister of Health, Labor and Welfare and the Minister of Health, Labor and Welfare have not taken any illegal action.''
5. Violation of duty to provide guidance and supervision to a mental hospital
In response to the plaintiff's claim, the defendant state did not make any further comment, stating that ``this is already stated in the defendant's preliminary document (3).''
6. Violation of duty to provide relief to social inpatients
In response to the plaintiff's argument that the defendant state had an obligation to provide relief to socially hospitalized patients, it stated, ``As a premise, the content of the obligation to act is not clear in light of the provisions of the law and its purpose and purpose.'' ``Active discharge support'' and ``obligation to proactively investigate and intervene'' have been implemented as national policies.''
7. Evaluation of this trial
As mentioned above, the defendant's rebuttal this time was merely a reiteration of what the defendant had previously stated. As you can see by reading the defendant country's argument, which has been published in the Shinkokuba Tsushin newspaper, there is nothing particularly new about it, and the content is short, less than 20 A4 pages.
In particular, there was almost no response to the plaintiff's claims regarding the liability of the legislative branch (National Diet) for inaction, and regarding the responsibility of the executive branch (Minister of Health, Labor and Welfare), ``the claims are not clear'' and ``there is no obligation to act.'' ``There was no illegal omission,'' he simply repeated. What was the point in the previous trial when they requested that the trial be held in three months, saying that ``it would take time to make a counterargument''? I still feel like I was made to wait for a prank.
Perhaps (this is just speculation in my opinion) the ``Blank Amendment Bill for the Comprehensive Support Act for Persons with Disabilities,'' which includes the ``Mental Health and Welfare Act Partial Amendment Bill'' (so-called I believe that adjustments were made within the ministry to ensure that the deliberations on the Bundled Bill were not affected. In any case, I feel like the discussion ended with "That's it!" without any new counterarguments.
By the way, there was a discussion at the monthly meeting that the Psychiatric and National Health Insurance Research Institute cannot overlook this bill, so we discussed it in the expert committee and compiled our views. It was sent by fax on December 5th to 16 members of the Health and Welfare Committee of the House of Councilors.
8. Future developments in the trial
At the end of the 9th session, the plaintiff's legal team requested the submission of testimonial materials and was granted permission by the presiding judge. In response to this, the plaintiff's legal team will submit a "testimony statement" as evidence at the next 10th hearing. During this time, through the "testimony statements" of the parties, their families, and professionals, which we received with the cooperation of our members, we were able to understand the state of mental health care in Japan, not just for the plaintiff in this case, Tokio Ito, but equally. We will be able to show the court what is being experienced in each region.
In addition, the plaintiff's legal team will seek opinions from experts such as psychiatrists regarding the historical background of the segregation and detention policy, the current hospitalization system, and the Mental Health Care Review Board, which are being questioned in this trial. A special committee has been discussing the selection of the person.
The trial is about to reach its final stage. There is a limit to what each individual can do, but if you are able, I would like you to come to the courtroom for the 10th session and watch from the audience seats.
Quote source
Ryuta Furuya, “9th Trial Date and Future Developments,” Shinkokubai Tsushin, No. 28; 3-5, published January 2023
第7回・第8回口頭弁論:2022年5月16日・8月22日
7th・8th Oral Arguments: 5/16,8/22, 2022
2024/2/8 16:45
◆第7回・第8回口頭弁論 2022年5月16日・2022年8月22日
伊藤時男さんを原告とする精神国賠裁判は、これまでの8回の裁判が行われています。今回は、第9回の裁判(11月19日13時半開廷)に向けて、これまでの概要を共有しておければと思います。
1.第7回期日(2022年5月16日)
原告側弁護団より「原告準備書面3及び4」が提出されました。原告準備書面3では、入院治療の必要性のない強制入院は憲法上許容されないこと、原告には入院治療の必要性がなかったこと、国の不作為により原告が退院できなかったこと、原告の権利侵害に対しても国はそれを解消する義務を負うべきことが述べられています。また、原告準備書面4では、同意入院及び医療保護入院の違憲性について、人身の自由に対する制約という観点から主張が追加されています。その原告側の主張内容を、当日の裁判報告会資料からまとめておきます。
(1)入院治療の必要性のない強制入院
前回(第6回)の裁判で、被告国側は原告の入院形態について、「カルテに定期病状報告書の記載がないことから、医療保護入院ではない」と反論をしました。原告の伊藤さんの入院形態については、双葉病院入院当時(1973年)が精神衛生法時代であり、まだ制度上「任意入院」は存在しないことから「同意入院」(現在の医療保護入院)であったことは明らかです。ただカルテが杜撰なため、いつまでが同意入院であったか記されていませんが、記載されている内容や任意入院の同意書が添付されていないことから、カルテの転帰日に記された2003年(平成15年)4月としか考えられません。入院形態の記載はなくとも、実態としては入院を強制され続けてきたことは明らかで、医療保護入院がいつまでであったかの終期が確定できないことを理由として、国の責任が否定されるべきではありません。
伊藤さんに長期にわたる入院治療の必要性がなかったことは、入院時の様子や退院後の状態から明らかです。国の不作為により伊藤さんが退院できずにさまざまな権利侵害が生じたのは、日本の精神医療に関する法や政策の問題であることを、多くの精神科医師らが証言しています。この状態が生じたのは、これまでの精神保健法~精神保健福祉法が、医師に極めて広範な裁量権を与える医療保護入院制度や、患者本人の任意性をなんら担保せず事実上の強制入院を認める任意入院制度を、長年にわたって放置してきたためです。また、少ないスタッフ配置を当たり前にして精神医療の質を著しく低下させ、安上がりの低医療費・低人件費の原因ともなった「精神科特例」が放置されてきたからにほかなりません。さらに、地域医療政策への転換や精神病院への指導監督を国が怠ったからであり、社会的入院者に対する積極的な調査介入救済をせずに放置してきたからにほかなりません。国が作出した法や政策によって、伊藤さんの不要な長期入院という権利侵害が生じているのであり、国がその権利侵害を解消する義務を負うのは当然、と原告は主張しました。
(2)国による積極的救済の必要性
国が、社会的入院者に対して積極的に救済しなければならない根拠の一つとして、被収容者の心理性の問題があげられます。長期にわたる閉鎖的な施設生活の継続により、人が無意欲状態となり無力化されることは、社会学者E・ゴッフマンの『アサイラム』の研究などから明らかにされています。(旧)全国精神障害者家族連合会も、施設症と社会的入院について全国的な調査を行ったうえで、「施設症」を生み出す精神科医療の構造は全国的に普遍的に存在すること、その背景には少ないスタッフ基準や低い開放病床率、長い平均在院日数、社会復帰活動への取り組みの乏しさ、そして地域の社会資源の乏しさ等が関与することを明らかにしています(ぜんかれんモノグラフNo.15「長期入院者の施設ケアのあり方に関する調査研究」)。これらの背景を解消できるのは国しかなく、国は原告に対して権利侵害を解消すべき義務がある、と原告側は主張しました。
(3)医療保護入院の違憲性
医療保護入院の違憲性については、これまでも原告弁護団が主張してきたことです。今回は、強制入院が人身の自由の制約そのものであるという観点から追加して主張を行いました。患者の判断能力の欠如を強制入院の要件としていなかった同意入院制度は明らかに違憲であり、のちにこの要件が付け加えられた医療保護入院も、曖昧な入院要件が放置され、未だに手続きも不十分なままであり、憲法31条(適正手続の保障)に違反します。実際に、社会的入院と呼ばれる状態の入院患者は1983年以降、5万人以上も存在し続けるなど、医療保護入院が厳格に運用されていないことは明らかです。また、合憲限定解釈※のような運用もなされておらず、医療保護入院は違憲状態にあるといえます。
※合憲限定解釈:法律を違憲と判断する余地はあるが、裁判所が条文の意味を限定的に解釈することによって合憲と解釈する、違憲判断回避の方法の一つ。
2.第8回期日(2022年8月22日)
前回(第7回)は、原告側から行政府(厚生労働大臣)の不作為を主張しましたが、今回は改めて原告側から立法府(国会)の不作為事実を示す「原告準備書面5」と証拠資料が提出されました。本裁判の被告は国であり、厚生労働省だけでなく、法律を改廃してこなかった国会の不作為責任も問うているのです。
立法府における精神医療政策の不作為事実を列挙するために、1965年~2005年の約0年間にわたる膨大な量の国会議事録を弁護団は精査しました。精神国賠研の専門部会も資料探索には協力していますが、弁護団の地道な探索作業により、成し遂げられた証拠資料の提示でした。国会(衆議院・参議院)における国会議員(与野党)の質問事項と厚生(労働)大臣及び政府委員の答弁や、参考人の意見陳述等を抽出したものです。この作業により、精神科医療をめぐるさまざまな問題が生じていることを、大臣や議員たちは早い段階で認識し議論していたことが明らかとなりました。
国会での主要な論点をピックアップすると、①社会的入院の問題(社会復帰対策を含む)、②精神科特例の問題、③精神医療審査会の問題、④地域精神医療への転換、⑤医療保護入院制度の問題、⑥任意入院制度の問題、⑦ハンセン病同様の隔離収容政策の問題、等が挙げられます。精神科医療をめぐる問題は国会でも繰り返し議論されてきており、国会議員も政府もあまたの課題を認識していたこと、作為義務を負いながら抜本的改革に着手せず先延ばしにしてきたことを示し、立法府の不作為責任を追及しています。
準備書面ではさらに、日本精神科病院協会会長も「いわゆる社会的入院と呼ばれるものは国の無策の産物」であり「国は精神障害者・精神医療関係者・国民に詫びるべき」と批判していることも付け加えています。
ここまで、だいたい裁判は2か月おきの間隔で開かれてきましたが、被告国側は「反論に少々時間を要する」と3か月後の裁判期日設定を求め、第9回期日は11月29日(火)と定められました。
3.第9回期日に向けて
第9回口頭弁論では、被告国側からの反論を示す準備書面が提出されます。原告弁護団が示した証拠資料に対して、どのような反論を行うのか、注目されるところです。
第2回期日以降、ずっと東京地裁で最も大きい法廷(103号法廷:傍聴席100席)が使われてきましたが、コロナ対策の傍聴席定数制限(1/2=50席)が解除されていることから、30名~40名程度の傍聴人では、空席が目立ち、少人数の法廷に変更される可能性ができてました。お時間に都合の付く方は、ぜひ東京地裁までお越しいただければ幸いです。
引用元
古屋龍太「第7回・第8回口頭弁論の概要―行政府・立法府の不作為責任を追及」精神国賠通信,No.26;1-3,2022年10月発行
◆7th and 8th Oral Arguments May 16, 2022, August 22, 2022
Eight trials have been held so far in the mental health compensation trial in which Tokio Ito is the plaintiff. This time, I would like to share an overview of what has happened so far in preparation for the 9th trial (opening at 1:30pm on November 19th).
1. 7th date (May 16, 2022)
Plaintiff's lawyers have submitted "Plaintiff Preparatory Documents 3 and 4." Plaintiff Preparation 3 states that forced hospitalization without the need for inpatient treatment is constitutionally unacceptable, that the plaintiff had no need for inpatient treatment, that the plaintiff was unable to be discharged due to the government's inaction, and that the plaintiff's rights It also states that the state has an obligation to eliminate infringements. In addition, Plaintiff Preparatory Document 4 adds an argument regarding the unconstitutionality of consensual hospitalization and medical protection hospitalization from the perspective of restrictions on personal freedom. We will summarize the content of the plaintiff's arguments from the trial report materials from that day.
(1) Forced hospitalization without the need for inpatient treatment
In the previous (sixth) trial, the defendant country argued that the plaintiff's type of hospitalization was not a medical protection hospitalization because there was no periodic medical report in the patient's medical record. Regarding the type of hospitalization of the plaintiff, Mr. Ito, at the time of his admission to Futaba Hospital (1973), it was the era of the Mental Hygiene Law, and "voluntary hospitalization" did not yet exist in the system, so it was "hospitalization with consent" (currently medical protection hospitalization). It's clear that there was. However, due to the medical records being sloppy, it is not written how long the patient was hospitalized with consent, but since the written contents and the consent form for voluntary hospitalization were not attached, the date of the outcome in the medical record was 2003 (2003). I can only think of April 2003. Even if there is no mention of the type of hospitalization, it is clear that the patient was forced to continue to be hospitalized, and the responsibility of the state should not be denied just because it is not possible to determine the end of the period of medical protection hospitalization. .
It is clear that Mr. Ito did not need long-term hospital treatment from his condition at the time of admission and his condition after discharge. Many psychiatrists have testified that the reason Ms. Ito was not discharged from the hospital and various rights violations occurred due to the government's inaction is a problem with Japan's mental health laws and policies. This situation has arisen because the previous Mental Health Act and Mental Health Welfare Act have introduced a medical protection hospitalization system that gives extremely wide discretionary powers to doctors, and a de facto coercion system that does not guarantee the patient's voluntariness. This is because the voluntary hospitalization system that allows hospitalization has been neglected for many years. Furthermore, this is due to the neglect of the ``psychiatry special provisions,'' which have made it commonplace to have fewer staff members and have significantly lowered the quality of mental health care, leading to low medical costs and low labor costs. Furthermore, this is because the government has neglected to shift to a regional medical policy and provide guidance and supervision to psychiatric hospitals, and has left social inpatients without any active investigation or intervention. The plaintiffs argued that the laws and policies created by the government had caused the violation of Ms. Ito's rights by requiring her to be hospitalized for an unnecessary long period of time, and that it was natural for the government to have an obligation to eliminate the violation of her rights.
(2) The need for active relief by the state
One of the reasons why the state must proactively provide relief to socially hospitalized inmates is the psychological problem of the inmates. Studies such as sociologist E. Goffman's ``Asylum'' have shown that living in a closed facility for a long period of time leaves people in a state of apathy and powerlessness. The (former) National Federation of Families of the Mentally Disabled also conducted a nationwide survey on institutionalism and social hospitalization, and found that the structure of psychiatric medical care that produces "institutionalism" exists universally throughout the country. It has been revealed that the reasons behind this are low staff standards, low open bed rate, long average length of stay in hospital, lack of efforts to reintegrate into society, and lack of local social resources. Karen Monograph No. 15 "Research on the state of facility care for long-term hospitalized patients"). The plaintiffs argued that only the state can resolve these backgrounds, and that the state has an obligation to the plaintiffs to eliminate rights infringements.
(3) Unconstitutionality of medical protection hospitalization
The plaintiff's legal team has long argued that medically protected hospitalization is unconstitutional. This time, I made an additional argument from the perspective that forced hospitalization is itself a restriction on personal freedom. The consent hospitalization system, which did not require a patient's lack of decision-making capacity as a requirement for compulsory hospitalization, is clearly unconstitutional, and the medical protection hospitalization system, to which this requirement was later added, has left ambiguous hospitalization requirements and is still poorly processed. This remains sufficient and violates Article 31 (guarantee of due process) of the Constitution. In fact, since 1983, there have been more than 50,000 hospitalized patients with a condition called social hospitalization, and it is clear that medical protection hospitalization is not strictly implemented. In addition, the limited constitutional interpretation* has not been implemented, and it can be said that medically protected hospitalization is unconstitutional.
*Limited interpretation of constitutionality: Although there is room for a law to be judged unconstitutional, the court interprets it as constitutional by restricting the meaning of the provision, which is one way to avoid a judgment of unconstitutionality.
2. 8th date (August 22, 2022)
Last time (7th session), the plaintiff claimed inaction on the part of the executive branch (Minister of Health, Labor and Welfare), but this time, the plaintiff once again presented "Plaintiff Preparation Document 5" and evidence showing inaction on the part of the legislative branch (National Diet). Materials have been submitted. The defendant in this case is the government, and it is not only holding the Ministry of Health, Labor and Welfare responsible for its inaction, but also the Diet, which has not amended or repealed the law.
In order to enumerate the inaction of mental health policy in the legislative branch, the defense team examined a huge amount of parliamentary minutes spanning approximately 0 years from 1965 to 2005. Although the expert committee of the National Institute of Mental Health and Physical Education is assisting in the search for materials, the presentation of evidence was the result of the steady search work of the defense team. This is an extract of questions asked by members of the Diet (ruling and opposition parties) in the Diet (House of Representatives and House of Councilors), answers by the Minister of Health, Labor and Welfare (Labor) and government members, and opinion statements by witnesses. This work revealed that ministers and parliamentarians recognized and discussed the various issues surrounding psychiatric care at an early stage.
The main points of discussion in the Diet are: (1) the issue of social hospitalization (including social reintegration measures), (2) the issue of psychiatric special provisions, (3) the issue of psychiatric medical review boards, (4) conversion to community mental health care, and (5) medical protection. These include problems with the hospitalization system, (6) problems with the voluntary hospitalization system, and (7) problems with the isolation and detention policy similar to Hansen's disease. Issues surrounding psychiatric care have been repeatedly debated in the Diet, and it is clear that both the Diet members and the government were aware of the many issues, and that, despite being obligated to act, they have postponed fundamental reforms rather than embarking on them. We are holding the legislature accountable for its inaction.
In the preliminary document, the president of the Japan Psychiatric Hospital Association also criticized that ``so-called social hospitalization is a product of the government's inaction,'' and ``the government should apologize to the mentally ill, the mental health care workers, and the public.'' I also add that there are.
Until now, trials have been held roughly every two months, but the defendant state requested that the trial date be set three months later, saying that it would take some time to make a counterargument, and the ninth trial date was set on November 11. It was set as the 29th (Tuesday) of the month.
3. Towards the 9th date
At the 9th oral argument, the defendant country will submit a brief presenting its rebuttal. It will be interesting to see what kind of argument will be made against the evidence presented by the plaintiff's defense team.
Since the second session, the largest courtroom in the Tokyo District Court (Courtroom No. 103: 100 seats) has been used, but the restriction on the number of seats (1/2 = 50 seats) due to coronavirus measures has been lifted. Because of this, there were noticeable empty seats among the 30 to 40 spectators, and there was a possibility that the court would be changed to a smaller courtroom. If you have time, please come to the Tokyo District Court.
Quote source
Ryuta Furuya, “Summary of the 7th and 8th Oral Arguments: Pursuing the Responsibility of the Executive and Legislative Branches for Inaction,” Shinkokubai Tsushin, No. 26; 1-3, published October 2022.
第6回口頭弁論:2022年2月24日
6th oral argument: February 24, 2022
2024/2/8 16:35
◆第6回口頭弁論 2022年2月24日
1.異例続きの裁判と報告会
2022年2月24日(木)、東京地裁で第6回口頭弁論が行われました。今回は、少々異例のことが続きましたので、少し細かくご報告しておきます。
11時から地裁のロビーで、集まった会員の方々と、円陣を組んで、22日に71歳の誕生日を迎えた伊藤時男さんに「おめでとう!」と拍手をしていたら、警備員から「集会は禁止です」と注意を受けました。
103号法廷の傍聴席には37名、原告・弁護団を合わせると42名の方に今回参加していただきました。原告・被告側双方が揃っていても、裁判官が現れず開廷が遅れました。ようやく現れた裁判長はこれまでの方とは違い、「交代しました」とひとこと挨拶しました。裁判の冒頭では、裁判官が、傍聴席でマスクをしていない方に着用を求めましたが、拒否をされたので、周囲の方に注意喚起していました。
裁判自体は、今回被告国側から提出された準備書面の確認と、次回期日の調整のみで、開廷してからものの5分程度で終わりました。
その後の報告会は、参加者がタクシーに分乗して、新橋駅近くの安価な貸会議室まで移動して行われました(タクシー代は全て会の経費で負担しましたが、それでも霞が関近辺の高額な貸会議室を借りるよりは、はるかに安く済みました)。
報告会はランチョンミーティングとなりました。会場参加者は36名、Zoom参加は17名、計53名の参加者でした。弁護士報告のシーンで、一回Zoomが落ちてしまったため、長谷川さんには改めて、被告国側の準備書面(反論書)の内容をお話しいただきました。また、会場で配布した「報告会資料」がなぜか画面共有できず、Zoom参加の皆さんにはわかりにくかったことを、お詫びいたします。
今回の裁判で被告国側から提出された「準備書面(4)」による反論の内容は、要約すると以下の「 」内に記したような内容となります。
2.原告の入院形態について
伊藤さんが、同意入院/医療保護入院であったか否かについて、被告国側は「カルテに定期病状報告書の記載がないことから、医療保護入院ではない」としています。「保護者の記載も入院形態に関わらず存在していたもので、保護者の記載は入院形態と関係がなく、転帰日の記載も入院形態の変更に伴うものではない」と反論しています。
わかりにくいので補足しますと、これはカルテ記載がずさんであったための争点になっています。通常は、どこの病院でもカルテの冒頭部に、入院期間と入院形態が記されているのが当たり前ですが、この記載がありません。また、任意入院でも医療保護入院でも、その入院形態に沿った書類がカルテに綴じられていて当たり前ですが、その書類が見当たりません。今回の裁判の争点の一つは「医療保護入院」制度です。被告国側は、伊藤さんが医療保護入院であると主張する証拠はカルテ上に無いことから、そもそも原告には医療保護入院の不当性を訴える資格はない、と反論している訳です。
3.立法不作為について
(1)入院の必要性について
原告側の「入院の必要性について、本人が適切な判断ができず自己の利益を守ることができない場合があるという立法事実はない」という主張に対して。被告国側は「統合失調症の患者が、症状・病状による影響で自発的に治療を求めることができない状況になることはあり得る。本人の利益を守るために強制入院が必要となる場合がある」と反論しています。
(2)医療保護入院の判定について
原告側の「医療保護入院の法文上、判断能力が低下している場合に限定されておらず、正当な目的があるとは解されない」という主張に対して。
被告国側は、「『精神障害者措置入院及び同意入院取扱要領について』を発出し、自由入院を許容している」と述べています。また、「厳格な審査や定期的な研修等によって質が確保され、正当性が担保された『精神保健指定医』による判定が必須となっており、無限定に入院が許容されているわけではない」と反論しています。
(3)医療保護入院の「保護」の曖昧さについて
原告側の「医療保護入院の『医療及び保護』の要件が曖昧である」という主張に対して。
被告国側は、「精神疾患の特殊性として、個々の患者で対応が異なることから、医療保護入院の判断は画一的な基準で規制すべきではなく、基本的には医師の裁量が尊重されるべきである」としています。「平成11年(1999年)法改正時においても同様の議論がなされ、法律に基づく基準として一律に規定することはふさわしくないとされた」と当時の検討会の議論を示しています。他方で、「前述の『精神障害者措置入院及び同意入院取扱要領について』の通知では、疾患ごとに状態等に応じて入院を必要とする標準を示しており、さらに指定医の判定が必須であって、医師の全くの裁量に委ねられているわけではない」としています。
(4)保護者の同意要件と長期入院について
原告側の「保護者等の同意が要件であることは強制入院の正当化する事由たりえず、強制入院の責任者を曖昧にさせ、かえって原告のように長期入院の原因になっている」という主張に対して。
被告国側は、「精神保健指定医の判断があるのであるから、保護者等の同意の要件は長期入院の原因とは関係がない」と反論しています。
(5)精神医療審査会について
原告側の「精神医療審査会が機能していない」という主張に対して。
被告国側は、「個々の事案の実情や実務上の運用における問題点等は、国賠法の違法性の要件である『権利侵害の明白性』の要件を満たさない」としています。さらに、「カルテに外泊や外出等の記載があり、憲法上の権利を侵害するような入院処遇の実態があったとは言い難い」と反論しています。
4.精神医療政策の違法性について
(1)精神科特例について
被告国側は、「その内容が一義的に定まるものではなく、その性質上、これを定めるべきともいえず、厚生大臣に作為義務は発生しない」としています。また、「精神科特例の存在と、原告が退院できなかったこととの因果関係について、原告の主張は具体的なものではない」と反論しています。
(2)隔離収容政策から地域医療政策に転換すべき義務について
被告国側は、「原告の主張によっては、条理に基づく厚生大臣の作為義務は認められない」としています。また、「勧告等を踏まえて、国は一定の施策を講じてきている」と反論しています。
5.任意入院の違法性について
(1)任意入院改廃の立法不作為について
被告国側は、「任意入院制度の目的、入退院の要件・手続等に鑑みて、任意入院の制度を定めた精神保健法及び精神保健福祉法の規定は、『権利侵害の明白性』はない」としています。「『任意』の意味が本人が希望するだけでなく、積極的に拒んでいない状態を含むというのは、任意入院の中心的意義が非強制という状態での入院を促進することによるという考え方にたっており、また、書面によって本人の意思を確認していること、退院制限も限定されていること、退院請求も可能であること等からすれば、任意入院の制度が無制限な長期入院が可能であるともいえない」と反論しています。
(2)厚生大臣の不作為について
被告国側は、「原告の主張によっては、条理に基づく厚生大臣の作為義務は認められない」としています。また、「原告が任意入院から退院できなかったことについて何ら具体的な主張・立証がなく、原告のカルテからはそのようなことがわかる記載はない」と反論しています。
6.報告会における議論
以上のように、立法及び厚生大臣の不作為を問う原告に対して、被告国は「作為義務は認められない」と法律論で退けようとしています。この被告国側の反論内容に対して、報告会に参加された方々からは様々な意見が出されました。いくつかピックアップさせていただくと、以下のような事柄です。
①現行法に規定のない、いわゆる『自由入院』の存在と歴史的経緯、②医療保護入院等の強制入院の手続きと『保護』の判断基準の曖昧さ、③精神科入院時において医師の裁量権がフリーハンドとなっている問題、④現行の精神保健福祉法の内容を憲法に照らして評価していくことの必要性、⑤厚労省も把握しているはずの急増している隔離拘束等の実情、⑥伊藤さんも従事させられていた院内・院外作業等の院内使役の問題、等々。
報告会の場では、伊藤さんから双葉病院入院中の驚くべき事実も明らかとなりました。多くの質疑討論・意見交換が1時間半にわたってなされました。
7.次回の裁判
次回の第7回裁判期日は、5月16日(月)午前10時開廷です。被告国側に対して、今度は原告弁護団側からの再反論が展開されます。今回、新しい裁判長に交代しましたが、多くの人がこの裁判の行方を注目していることを示していく必要があります。ご都合の付く方は、ぜひご予定に組み入れていただき、法廷傍聴行動への参加を宜しくお願いします。
出典元
古屋龍太「被告国側は『作為義務』を否認―第6回裁判期日の報告―」精神国賠通信,No22;1-3,2022年3月発行
◆6th Oral Argument February 24, 2022
1. Unprecedented trial and debriefing session
The 6th oral argument was held at the Tokyo District Court on Thursday, February 24, 2022. This time, something a little unusual happened, so I would like to report it in some detail.
From 11 a.m., I was standing in the lobby of the district court, forming a circle with the members who had gathered, and applauding Tokio Ito, who celebrated his 71st birthday on the 22nd, saying, "Congratulations!" when I heard a security guard say, We were warned that "gatherings are prohibited."
There were 37 people in the audience seats in Courtroom 103, and a total of 42 people including the plaintiffs and their lawyers. Even though both the plaintiff and defendant were present, the judge did not appear and the trial was delayed. The presiding judge finally appeared, unlike the previous judges, and simply greeted him by saying, ``I have been replaced.'' At the beginning of the trial, the judge asked those in the audience who were not wearing masks to wear them, but they refused, so he alerted those around them to be careful.
The trial itself only consisted of confirming the preliminary documents submitted by the defendant country and adjusting the next date, and was over in about 5 minutes after the court opened.
Afterwards, the debriefing session was held with the participants taking taxis to an inexpensive rental conference room near Shinbashi Station (all taxi costs were covered by the association's expenses, but it was still in the vicinity of Kasumigaseki). It was much cheaper than renting an expensive conference room.)
The debriefing session turned into a luncheon meeting. There were 53 participants in total, 36 in-person and 17 via Zoom. During the lawyer's report scene, Zoom crashed once, so I asked Mr. Hasegawa again to talk about the contents of the defendant's prepared statement (rebuttal). We also apologize for the inconvenience that the "debriefing materials" distributed at the venue could not be shared on screen for some reason, making it difficult for everyone participating on Zoom to understand.
The content of the counterargument in the "preparatory document (4)" submitted by the defendant country in this trial can be summarized as shown in the brackets below.
2. Regarding the plaintiff's hospitalization type
Regarding whether Ms. Ito was admitted with her consent/medically protected, the defendant state stated, ``Since there is no regular medical condition report written in the medical record, it was not a medically protected hospitalization.'' ``The guardian's notes were present regardless of the type of hospitalization, and the guardian's notes are not related to the type of hospitalization, and the record of the outcome date is also not related to the change in the type of hospitalization.'' .
It's hard to understand, so I'd like to add that this is a point of contention because the medical records were sloppy. Normally, the period of hospitalization and type of hospitalization are written at the beginning of the medical record at any hospital, but this information was missing. Also, whether it is voluntary hospitalization or medically protected hospitalization, there are documents related to the type of hospitalization that are bound in the patient's medical record, but I cannot find them. One of the issues at issue in this case is the ``medical protection hospitalization'' system. The defendant country argues that since there is no evidence in the medical records that Ms. Ito was admitted for medical protection, the plaintiff is not entitled to complain about the unfairness of her hospitalization.
3. Regarding legislative inaction
(1) Regarding the necessity of hospitalization
In response to the plaintiff's argument that ``there is no legal fact that there are cases in which the patient is unable to make an appropriate judgment regarding the necessity of hospitalization and is unable to protect his or her own interests.'' The defendant state stated, ``It is possible that a patient with schizophrenia may be unable to seek treatment voluntarily due to the effects of their symptoms and medical condition.There are cases where compulsory hospitalization may be necessary to protect the patient's interests.'' Yes," he argues.
(2) Regarding the determination of medical protection hospitalization
In response to the plaintiff's argument that ``according to the legal text of medical protection hospitalization, it is not limited to cases where the ability to make decisions has deteriorated, and it cannot be understood that there is a legitimate purpose.''
The defendant country states, ``We have issued ``Guidelines for Handling Hospitalization for Mentally Disabled Persons and Consent Hospitalization,'' and allow voluntary hospitalization.'' Furthermore, ``a judgment by a ``designated mental health physician'' whose quality is ensured and legitimacy is ensured through rigorous screening and regular training is required, and hospitalization is not permitted indefinitely.'' No,” he argues.
(3) Regarding the ambiguity of “protection” in medical protection hospitalization
In response to the plaintiff's argument that ``the requirements for ``medical care and protection'' for medical protection hospitalization are ambiguous.''
The defendant state stated, ``As the uniqueness of mental illness means that each patient is treated differently, decisions regarding medically protected hospitalization should not be regulated by uniform standards, and doctors' discretion should basically be respected.'' "It should be done." ``Similar discussions were held when the law was revised in 1999, and it was decided that it was inappropriate to uniformly stipulate it as a standard based on the law,'' according to the study committee's discussion at the time. On the other hand, the above-mentioned notice of ``Guidelines for Handling Hospitalization for Mentally Disabled Persons and Consent Hospitalization'' indicates the standard for requiring hospitalization according to the condition of each disease, and furthermore, it requires the judgment of a designated physician. However, it is not left entirely to the discretion of the doctor."
(4)Requirements for parental consent and long-term hospitalization
According to the plaintiff's statement, ``The requirement of consent from parents, etc. cannot be considered as a justification for forced hospitalization; it obscures who is responsible for forced hospitalization, and on the contrary, it is the cause of long-term hospitalization like the plaintiff.'' Regarding that claim.
The defendant's side counters by saying, ``The requirement for parental consent has nothing to do with the cause of long-term hospitalization because the judgment is made by a designated mental health physician.''
(5)About the Psychiatric Review Board
In response to the plaintiff's claim that the ``Psychiatric Review Board is not functioning.''
The defendant country states, ``The actual circumstances of each case and problems in practical implementation do not meet the requirement of ``obvious infringement of rights,'' which is a requirement for illegality under the National Liability Law.'' Furthermore, the statement argues, ``The patient's medical records include entries such as overnight stays and outings, and it is difficult to say that there was actual treatment in the hospital that violated constitutional rights.''
4. Regarding the illegality of mental health policy
(1) Regarding special cases for psychiatry
The defendant country states, ``The content is not uniquely determined, and due to its nature, it cannot be said that it should be determined, and the Minister of Health and Welfare is not obligated to act.'' The lawsuit also argues that ``the plaintiff's claim is not specific regarding the causal relationship between the existence of the special psychiatric exception and the plaintiff's inability to be discharged from hospital.''
(2) Regarding the obligation to shift from isolation and detention policy to community medical care policy
The defendant country states, ``Depending on the plaintiff's argument, the Minister of Health and Welfare's obligation to act based on the article cannot be recognized.'' He also countered by saying, ``Based on the recommendations, the government has taken certain measures.''
5. Regarding the illegality of voluntary hospitalization
(1) Legislative inaction regarding the revision and abolition of voluntary hospitalization
The defendant country stated, ``In view of the purpose of the voluntary hospitalization system, the requirements and procedures for admission and discharge, etc., the provisions of the Mental Health Act and the Mental Health and Welfare Act that establish the voluntary hospitalization system do not ``clearly violate rights.'' ”. ``The idea that the meaning of ``voluntary'' includes not only the patient's request but also a condition in which the patient does not actively refuse is based on the idea that the central purpose of voluntary hospitalization is to promote hospitalization in a non-compulsory manner. In addition, given that the patient's intention is confirmed in writing, restrictions on discharge are limited, and requests for discharge are possible, long-term hospitalization is possible without unlimited voluntary hospitalization. "I can't say that there is," he argues.
(2) Regarding the inaction of the Minister of Health and Welfare
The defendant country states, ``Depending on the plaintiff's argument, the Minister of Health and Welfare's obligation to act based on the article cannot be recognized.'' The lawsuit also argues that ``there is no specific allegation or proof that the plaintiff was unable to be discharged from voluntary hospitalization, and there is no record of this in the plaintiff's medical record.''
6. Discussion at the debriefing session
As mentioned above, the defendant country is trying to dismiss the plaintiff's question of inaction by the Legislature and the Minister of Health and Welfare using legal theory, stating that there is no obligation to act. In response to the defendant country's counterargument, those who participated in the debriefing session expressed various opinions. I would like to highlight some of the following:
① The existence and historical background of so-called ``voluntary hospitalization,'' which is not stipulated in the current law; ② Ambiguity in the procedures for compulsory hospitalization such as medical protection hospitalization and the criteria for determining ``protection;'' ③ Doctors' discretionary authority in the case of psychiatric hospitalization. (4) The need to evaluate the contents of the current Mental Health and Welfare Act in light of the Constitution, (5) The rapidly increasing number of isolated detentions that the Ministry of Health, Labor and Welfare should be aware of, etc. (6) The issue of in-hospital work such as in-hospital and out-of-hospital work that Ms. Ito was also engaged in, etc.
At the debriefing session, Mr. Ito also revealed a surprising fact about his stay at Futaba Hospital. Many questions and discussions and opinions were exchanged over an hour and a half.
7. next trial
The next 7th trial date is Monday, May 16th at 10am. This time, the plaintiff's defense team will make a second argument against the defendant country. Now that we have a new presiding judge, we need to show that many people are paying close attention to how this trial will proceed. If you are available, please include this in your schedule and participate in the court viewing activities.
Source
Ryuta Furuya, “Defendant State Denies ``Obligation to Act'' - Report on the 6th Trial Date,'' Shinkokubai Tsushin, No. 22; 1-3, published March 2022.
第5回口頭弁論:2021年12月6日
5th Oral Argument: December 6, 2021
2024/2/8 16:29
◆第5回口頭弁論 2021年12月6日
12月6日(月)、東京地裁で伊藤さん裁判の第5回口頭弁論が行われました。今回は前回(9月27日)被告国側が示した反論書に対して、弁護団が「原告準備書面2」を提出し反論を展開しました。本文だけで50ページに及ぶもので、その全てを紹介することはできません。当日の法廷では、以下の「要旨」が長谷川弁護士より読み上げられました。
原告準備書面2(要旨)
1 概要
原告準備書面2では、まず、原告のカルテ(入院診療録)の記載をもとに、原告の入院実態を明らかにしている。入院治療の必要のない原告が繰り返し退院を求めたにもかかわらず、入院を強制され続けたという事実に着目していただきたい。原告は、医療保護入院・同意入院制度あるいは任意入院制度によって入院を強制されたことは、原告のカルテから明らかなのである。
そして、その原因は個別の病院の問題ではない。日本の精神医療の実態そのものである。精神衛生法、精神保健法、精神保健福祉法といった法律の欠陥であり、最低限の医療者でも構わないとする精神科特例の問題でもあり、厚生大臣が地域医療政策への転換、適切な医療水準を確保するための病院に対する指導監督、長期入院者の救済を怠ってきたからにほかならない。
日本の精神医療の歴史や経過については、訴状及び原告準備書面1においても主張してきたところであるが、原告準備書面2では、その実態を医師や法律家の著書等を引用し、あるいは、被告の主張に対する反論のなかで、その実態を明らかにするものである。
それとともに、原告準備書面2においては、任意入院制度の違憲性も追加して主張する。任意入院制度は、他の診療科で行われているような普通の入院制度ではない。事実上、入院を強制するシステムとして機能しているのである。
以下、その要旨を述べる。
2 原告の入院の実態
まず、原告準備書面2においては、原告の入院形態について論じている。この点、原告が病院側から開示を受けたカルテには、原告の入院形態が明記されていない。このような状態が生じることが日本の精神医療の実態にほかならないが、保護者の存在を重視する等カルテの記載からすれば、原告は、転院した1973年(昭和48年)9月2日から2003年(平成15年)4月30日まで同意入院または医療保護入院の形態で入院し、以後は任意入院の形態で入院していたことがわかる。
そして、その入院の実態であるが、原告の病状は落ち着いており、入院医療の必要性は認められない。その一つとして、1991年(平成3年)のカルテにはこう記載されている。
「相変わらず平穏。一生懸命炊事場作業で頑張っている。病棟内でも他患と争うこともなく、穏やか。親切に対応している。勿論、異常体験もない。」
そのような原告が、入院期間を通じて退院したいという希望を何度も訴えていた。しかし、それは、ことごとく否定された。主治医ではなく院長の了解が優先されたり、社会資源不足について家族がその責任をなすりつけられ、家族が受け入れない限り退院が進まないとされたり、退院に積極的だった主治医もいたのに、その主治医が変われば退院の話は全く進まなくなったり、入院によってどのような治療をするのか、その一貫性もないばかりか、自分の正確な病名や病状等も説明を受けることもなく、「入院していればいつか治る」などと誤信させられてきた。退院に向けた支援はほとんどない。
本来、原告の病状等に照らせば、地域社会で生活しながら治療を継続することが十分に可能であるにもかかわらず、つまり、入院の必要性がないにもかかわらず、原告は入院を強制され続けてきたのである。
その結果、原告は退院意欲を失い、形式上、任意入院となるが、それは真の任意ではない。むしろ、任意入院であることを理由に、原告に対する権利侵害がチェックされず、入院を強いられていた。
3 日本の精神医療の仕組み-国の不作為
これは原告あるいは原告が入院していた病院固有の問題ではない。日本の精神医療制度の問題である。
かつて公衆衛生審議会の精神衛生部会の委員を務めた法律家である平野龍一氏は、精神障害者の病院収容について、「入れやすく出やすい」「入れやすく出にくい」「入れにくく出やすい」「入れにくく出にくい」という四つのタイプがあると図式化する。日本の精神医療は「入れやすく出にくい」にほかならない。
このような「入れやすく出にくい」精神医療は、隔離収容政策そのものであり、その人権侵害性も極めて明白である。そのため、被告が主張する最高裁の判断基準に従ってもその立法不作為は違法であるし、入院と退院を表裏一体で考えていない法制度の欠缺は、条理によって救済されなければならない。被告は施設整備や地域におけるケア体制などを構築してきたなどと主張するが、日本の精神医療は「入れやすく出にくい」のままである。
原告に生じた権利侵害は、国が責任を負わなければならない。
4 任意入院制度の問題点
また、前述のとおり、原告準備書面2では、任意入院制度が違憲であることを追加して主張する。
任意入院制度は、1987年(昭和62年)に精神衛生法から精神保健法へ改正された際に設けられた入院制度である。
これは、他の診療科における普通の入院とは異なる。任意入院の「同意」は、患者が自らの入院について拒むことができるにもかかわらず、積極的に拒んでいない状態を含むものと解釈されており、自由意思にもとづき積極的に入院に同意している状態ばかりではない。退院制限も法定されている。そればかりか、任意入院制度において、その任意性や入院継続の必要性を審査する制度も原則として存在しない。閉鎖処遇も多く、任意入院という名の強制入院が成立しているといっても過言ではない。
原告もその被害者にほかならず、そのような違憲な法律を改廃しなかった国会の不作為は違法であるし、そのような任意入院の実態について、社会資源の整備を行わず、入院中心の診療報酬制度も是正せず、任意入院を監督する仕組みを構築しなかった厚生大臣の不作為は違法である。
よって、被告国は、原告の入院形態が任意入院であっても、原告に対して賠償責任を負う。
☆
上記の「要旨」だけでも、今回の裁判の争点が明らかでしょう。原告の伊藤さんは、全く入院を要する状態ではないまま、不当に長期入院を強いられていました。それは個別の病院に限らず、どこの病院でもあり得ました。隔離収容政策による「入れやすく出にくい」日本の精神医療法制度によって生じた権利侵害であるからです。抜本的な政策転換を行わず、長期入院者の救済を怠ってきた国に責任があることを、弁護団は様々な論拠を示し訴えました。さらには、医療保護入院だけでなく、決して患者の自由意志による入院になっていない任意入院も強制性を伴う違憲状態にあることを主張しました。
この原告側主張に対する、国の再反論は第6回口頭弁論(2月24日)で示されます。精神国賠研としては、弁護団とともに証拠書類の探索・収集に努めていく方針です。ご理解とご協力をお願いします。
出典元
古屋龍太「第5回口頭弁論の原告準備書面2――任意入院の違憲性を追加主張」精神国賠通信,No.20;4-5,2021年12月発行
◆5th Oral Argument December 6, 2021
On Monday, December 6th, the fifth oral argument in the Ito trial was held at the Tokyo District Court. This time, in response to the written rebuttal submitted by the defendant country last time (September 27), the defense team submitted ``Plaintiff Preparatory Document 2'' and presented a rebuttal. The main text alone is 50 pages long, so it is impossible to introduce all of it. In the courtroom that day, the following "summary" was read out by Attorney Hasegawa.
Plaintiff Preparation Document 2 (Summary)
1 Overview
Plaintiff Preparatory Document 2 first clarifies the plaintiff's hospitalization status based on the descriptions in the plaintiff's medical record (hospitalization medical records). We would like to draw your attention to the fact that the plaintiff, who did not require hospital treatment, continued to be forced to stay in the hospital despite repeated requests to be discharged. It is clear from the plaintiff's medical records that the plaintiff was forced to be hospitalized under the medical protection hospitalization/consent hospitalization system or the voluntary hospitalization system.
And the cause is not a problem with individual hospitals. This is the reality of Japan's mental health care. This is a flaw in laws such as the Mental Health Act, the Mental Health Act, and the Mental Health and Welfare Act, and it is also an issue of special provisions for psychiatry, which allows the minimum number of medical personnel. This is simply because the government has neglected to provide guidance and supervision to hospitals to ensure standards, and to provide relief to long-term hospitalized patients.
The history and progress of mental health care in Japan has been argued in the complaint and Plaintiff Preparatory Paper 1, but in Plaintiff Preparatory Paper 2, the actual situation is explained by citing the books of doctors and lawyers, or by the defendant's The actual situation is clarified in the refutation of the claim.
At the same time, Plaintiff Preparatory Paper 2 also alleges the unconstitutionality of the voluntary hospitalization system. The voluntary hospitalization system is not a normal hospitalization system like that used in other medical departments. In effect, it functions as a system that forces hospitalization.
The gist of this is described below.
2 Actual status of the plaintiff's hospitalization
First, plaintiff's preliminary document 2 discusses the plaintiff's type of hospitalization. In this regard, the medical records that the plaintiff received from the hospital do not clearly state the plaintiff's type of hospitalization. It is the reality of Japanese mental health care that such a situation occurs, but judging from the medical records, which emphasize the presence of guardians, the plaintiff was transferred to the hospital on September 2, 1973. It is understood that the patient was admitted as a consensual or medically protected hospitalization from April 30, 2003, and thereafter as a voluntary hospitalization.
Regarding the actual circumstances of the hospitalization, the plaintiff's condition is stable, and there is no need for hospitalization. One example of this is the following entry in the 1991 (Heisei 3) medical record:
"He is as calm as ever. He is working hard in the kitchen. He is calm and calm, without fighting with other patients in the ward. He is being treated kindly. Of course, he has not had any unusual experiences."
These plaintiffs repeatedly expressed their desire to be discharged throughout their hospitalization. However, this was completely denied. In some cases, the consent of the hospital director was given priority rather than that of the attending physician; in other cases, the family was held responsible for the lack of social resources, and that the discharge would not proceed unless the family accepted it; and even though some attending physicians were proactive about discharge, If the situation changes, discussions about discharge will not proceed at all, and not only will there be no consistency in what kind of treatment will be provided upon hospitalization, but the exact name of the disease and the condition will not be explained to the patient, and people will be told that they are not being hospitalized. I was led to believe that my condition would heal someday.'' There is little support for discharge.
Originally, in light of the plaintiff's medical condition, etc., it was fully possible for the plaintiff to continue treatment while living in the community, that is, even though there was no need for hospitalization, the plaintiff was forced to be hospitalized. This has continued to be the case.
As a result, the plaintiff lost his desire to be discharged from the hospital and was formally admitted to the hospital voluntarily, but this was not truly voluntary. In fact, because the patient was admitted voluntarily, violations of the plaintiff's rights were not checked and he was forced to stay in the hospital.
3 Japan's mental health system - national inaction
This is not a problem specific to the plaintiff or the hospital where the plaintiff was admitted. This is a problem with Japan's mental health care system.
Ryuichi Hirano, a lawyer who once served as a member of the Mental Health Subcommittee of the Public Health Council, said that when it comes to housing people with mental disorders in hospitals, it is ``easy to get in and easy to get out'', ``easy to get in and hard to get out'', ``hard to get in and easy to get out'', and ``easy to get out''. Diagrammatically there are four types: ``difficult to get in and difficult to get out''. Psychiatric care in Japan is nothing short of ``easy to get in and hard to get out.''
This kind of ``easy to get in, hard to get out'' mental health care is a policy of isolation and detention, and its human rights violations are extremely clear. Therefore, even in accordance with the Supreme Court's criteria claimed by the defendant, the legislative inaction is illegal, and the deficiency in the legal system, which does not consider hospitalization and discharge as two sides of the same coin, must be remedied by reason. Although the defendant claims that he has developed facilities and a care system in the community, mental health care in Japan remains ``easy to get in and hard to get out.''
The state must be held responsible for the infringement of rights caused to the plaintiff.
4 Problems with the voluntary hospitalization system
Additionally, as mentioned above, Plaintiff Preparation 2 further asserts that the voluntary hospitalization system is unconstitutional.
The voluntary hospitalization system was established in 1987 when the Mental Health Law was revised to the Mental Health Law.
This is different from normal hospitalization in other medical departments. "Consent" for voluntary hospitalization is interpreted to include a state in which the patient is able to refuse hospitalization, but does not actively refuse, and does not actively consent to hospitalization based on the patient's free will. This is not the only situation. Restrictions on discharge from hospital are also stipulated by law. Furthermore, under the voluntary hospitalization system, there is, in principle, no system to review the voluntary nature of hospitalization or the necessity of continued hospitalization. It is no exaggeration to say that there are many cases of closed treatment, and that compulsory hospitalization in the name of voluntary hospitalization has been established.
The plaintiffs are also victims, and the inaction of the National Diet in not amending or repealing such an unconstitutional law is illegal. The Minister of Health and Welfare's failure to correct the remuneration system and establish a system to supervise voluntary hospitalization is illegal.
Therefore, the defendant state is liable for compensation to the plaintiff even if the plaintiff's type of hospitalization is voluntary.
☆
The issue at issue in this case should be clear from the above ``gist'' alone. The plaintiff, Ms. Ito, was unjustly forced to stay in the hospital for a long period of time, even though her condition did not require hospitalization at all. This could be any hospital, not just an individual hospital. This is because it is a violation of rights caused by Japan's mental health legal system, which is ``easy to get in and hard to get out'' due to its segregation and detention policy. The defense team presented a variety of arguments and argued that the country was responsible for failing to make drastic policy changes and neglecting to provide relief to long-term hospitalized patients. Furthermore, it was argued that not only medical hospitalization but also voluntary hospitalization, which was never of the patient's free will, was unconstitutional due to its coercive nature.
The government's rebuttal to this plaintiff's argument will be presented at the 6th oral argument (February 24th). The National Institute for Mental Health Insurance has a policy of working with the defense team to search for and collect documentary evidence. We appreciate your understanding and cooperation.
Source
Ryuta Furuya, “Plaintiff Preparation for the 5th Oral Argument 2: Additional Allegation of Unconstitutionality of Voluntary Hospitalization,” Shinkokubai Tsushin, No. 20; 4-5, published December 2021
第3回口頭弁論:2021年6月29日
3rd Oral Argument: June 29, 2021
2024/2/8 16:27
◆第3回口頭弁論 2021年6月29日
第3回口頭弁論(6月29日)に合わせ、原告弁護団から提出された「準備書面1」の概要を報告します。実際の書面は、64ページに及ぶ長大なもので、ここではぎゅっと圧縮した要旨に止まることをご了解ください。この書面内容に対して、第4回期日(9月27日)に被告国側から反論書が提出される予定です。なお、裁判を傍聴した方々の感想等は、この報告文のあとに掲載しています。
1.準備書面1の概要
原告側が主張している被告国の不法行為として、①憲法で保障された人権を侵害する医療保護入院(同意入院)制度を作り、その後も改廃しなかった立法不作為、②憲法14条に反する精神科特例を廃止しなかった厚生大臣の不作為、③精神医療政策に関する厚生大臣の不作為がある。これらの理解のために、日本の精神医療に関する歴史的経過を述べる。
2 事実経過
原告は、1973年から2012年まで、約40年間も、意に反して継続して精神科病院に入院することを余儀なくされたが、1960年代は被告が精神障害者に対する隔離収容政策を推し進めていた時期であった。1950年に同意入院制度を精神衛生法に設け、精神科特例を設けて少ない医療従事者で精神病院を維持できることとした。また、医療法の改正や医療金融公庫法によって経済的に優遇して、民間病院を設置・維持しやすくした。また、被告は通知を発して、強制入院を活用して精神障害者を入院させる方向に導いた。これらの隔離収容政策によって、精神病院は患者を病院内に収容させていれば経営として成り立つ状態を作出した。
医学的には、1955年に抗精神病薬が発売され始め、医師の間では治療をすれば退院できる見通しが立ち始めていた。しかし、被告は、精神衛生実態調査や様々な審議会からの意見やクラーク勧告による指摘についても無視し続け、隔離収容政策を進めるのみで、退院に向けた社会復帰施策をとることはなかった。欧米諸国においては、1970年代には精神病床を減らして地域医療に転換していったが、日本においては、1976年に医療審議会が答申した必要病床数を上回った後も被告が隔離収容政策を続けたため、1993年まで精神病床は増え続けた。
1960年代から入院した精神障害者が退院できずに病院内に滞留し、入院が長期化するようになっていき、1983年の精神衛生実態調査では、条件が整えば退院の可能性がある人は約10万人いることがわかった。それでも社会復帰施設の整備はなされず、その後も何万人もの精神障害者が、入院医療の必要がないにもかかわらず退院できずに放置された。原告は、まさにそのような不要な入院を強いられた患者の一人である。
被告が精神障害者の社会復帰に向けて真摯に取り組んでこなかったことは、その予算計上からも見て取れる。国の精神障害者にかかる予算は、1970年代後半から80年頃にかけて約850億円まで増え続けたが、その9割以上は措置入院補助費であった。1970年にはじめて社会復帰施設整備が予算化されたが、これは精神障害者にかかる予算のわずか0.1%にすぎず、1980年でも0.35%だった。1980年代は措置入院補助費が減っていったが、精神障害者にかかる予算全体が減額され続け、社会復帰施設の整備に回されることはなかった。また、今でも医療費の7割は入院医療費が占めており、入院と通院がほぼ同数の他の診療科に比べて、明らかに精神科は入院中心主義となっている。
3 医療保護入院を改廃しなかった立法不作為
医療保護入院は、同意入院として精神衛生法に設けられた時から本質的には変わっていない。身体の自由、移動の自由、自己決定権等の憲法上の重要な人権を侵害する制度であるとともに、精神障害者に限って私人による強制入院を可能とする点で、法の下の平等にも反する。同意入院は制度発足時から、精神障害者の隔離収容が主要な目的とされており、正当な目的があるとは言えない。入院には医療及び保護の必要性というあいまいな要件しか設けておらず、これらの厳格な審査基準を設けないまま、要件自体があいまい不明確であり、恣意的な運用を容認するものであり、実際に大きな地域差も生じている。
歴史的には、病院管理者のフリーハンドだった同意入院制度は40年近く放置された。遅くとも1987年の法改正の際に同意入院制度は廃止すべきであったが、要件を変えられることもなく、医療保護入院と改名されて温存された。その後も見直しの機会は何度もあり、関係団体からも医療保護入院制度の廃止を求める声が上がっていたが、要件が若干修正されたにとどまり、医療保護入院の実態には何らの影響もなく、是正に値する立法行為はなされなかった。このような立法不作為は違法である。
4 精神科特例を撤廃しなかった厚生大臣の不作為
被告は、精神科特例を設け、精神科患者のみが、他の医療と比較して必要な水準の医療を受けられない状態を放置し続けた。憲法13条後段及び憲法25条、憲法14条に反する。
5 精神医療政策に関する厚生大臣の不作為
精神医療政策に関する厚生大臣の不作為として以下が挙げられる。
(1)隔離収容政策からの転換義務違反
国の隔離収容政策により、多くの精神障がい者は、病院内で入院し続けることを余儀なくされ、その時間、人生を奪われ続けた。被告は、重大な人権侵害状態を自ら作出したのであるから、その解消のために、隔離収容政策から地域医療政策へと政策転換すべき義務があった。遅くとも、作為義務の内容が具体的に示された1968年のクラーク勧告を受けた後には、社会復帰施設整備及び地域医療の充実を進めることができたはずである。にもかかわらず、被告は、具体的な検討すらせず、逆に1980年頃まで隔離収容政策を増長し続け、社会復帰施設を設けることもなく、地域医療を充実させるための予算措置や診療報酬の変更を講じることもなかった。厚生大臣には、隔離収容政策を地域医療政策に転換させるべきであったにもかかわらず、それをしなかった不作為がある。
(2)精神科病院に対する指導監督義務違反
被告には、病院内で必要以上に入院が長期化したり、不要な入院が強いられることのないよう、入院医療が適切に行われているか、指導・監督する義務があった。定員を遵守させ、許可病床数を超えた過剰収容にならないよう監督・是正すべき義務もあった。さらに、医療従事者の人員配置基準を遵守しているかどうかを監督すべき義務があった。加えて、人員配置基準の変更、診療報酬の改定や監査制度の構築など適正な医療水準を確保するための制度を構築すべき義務があった。
1960年代から行政管理庁の改善勧告やクラーク勧告によって、不適切な医療や長期収容による患者の施設症化が指摘され、人員配置基準を多数の病院が満たしていないことや、過剰収容もあきらかになっていた。直ちにこれを是正すべきであったにもかかわらず、1980年代に入っても放置され続けた。また、人員配置基準の変更、診療報酬の改定等、適正な医療水準が確保されるための制度構築がなされることもなかった。
(3)入院治療の必要のない人に対する救済義務違反
被告の政策により、精神病院には、本来なら入院医療の必要はなく、退院できるにもかかわらず、入院を余儀なくされている者が1980年代から何万人も確認されている。1987年の法改正により任意入院が法律上明記された後も、医療保護入院については、運用基準の明確化が求められながら、要件も変わらないまま放置されてきた。厚生省には、このような法の厳格適用を行うべきだった義務の違反がある。
さらに、精神病院で長期入院を強いられ、形式的に任意入院に切り替えられても、その頃には自ら退院できる意欲や能力を奪われた患者が多くいた。原告もそのような患者の一人である。このような患者については、国が積極的に調査、介入するべきであり、政策支援、法令改廃、法令運用改善などの救済手段によって積極的にこのような不要な入院状態を解消すべき義務があった。しかし、厚生大臣は、1987年以降も、これを漫然と放置し続けている。
6 まとめ
よって、原告は、これらの被告の不法行為の責任を問う。
以上
引用元
古屋龍太「精神国賠第3回口頭弁論の報告―原告側準備書面の概要―」精神国賠通信,No.16;1-3,2021年7月発行
◆3rd Oral Argument June 29, 2021
We would like to report the summary of "Preparatory Document 1" submitted by the plaintiff's legal team in conjunction with the third oral argument (June 29th). Please note that the actual document is 64 pages long, so here is only a condensed summary. In response to the content of this document, the defendant country is scheduled to submit a written rebuttal on the fourth session (September 27th). The impressions of those who attended the trial are published after this report.
1. Summary of Preparatory Document 1
The defendant country's torts that the plaintiff alleges include: (1) legislative inaction in creating a medical protection hospitalization (consent hospitalization) system that violates human rights guaranteed by the Constitution and failing to amend or abolish it; and (2) a spirit that violates Article 14 of the Constitution. There is the inaction of the Minister of Health and Welfare in not abolishing the special provisions for the Department of Health and Welfare, and (3) the inaction of the Minister of Health and Welfare regarding mental health policy. In order to understand this, I will describe the historical progress regarding mental health care in Japan.
2 Facts
The plaintiff was forced to be admitted to a psychiatric hospital against his will for approximately 40 years from 1973 to 2012, but in the 1960s the defendant promoted a policy of isolated detention for mentally ill people. It was a time when In 1950, a consent hospitalization system was established in the Mental Hygiene Act, and special provisions were made for psychiatry, allowing psychiatric hospitals to be maintained with fewer medical personnel. In addition, the Medical Care Law was revised and the Medical Finance Corporation Law provided economic preferential treatment, making it easier to establish and maintain private hospitals. The defendant also issued notices and used compulsory hospitalization to lead the mentally ill to hospital. These segregation and detention policies created a situation in which psychiatric hospitals could continue to operate as long as they housed patients within the hospital.
Medically, antipsychotic drugs began to be released in 1955, and doctors began to see the prospect that patients could be discharged from hospital if treated. However, the defendant continued to ignore the findings of the mental health survey, the opinions of various councils, and the recommendations made by Clark, and instead proceeded with a policy of isolation and detention, without taking any measures to reintegrate him into society in preparation for his discharge. In Western countries, the number of psychiatric beds was reduced in the 1970s and a shift was made to community medical care, but in Japan, even after the number of required hospital beds was exceeded by the Medical Council in 1976, defendants continued to be kept in isolation. As a result, the number of psychiatric beds continued to increase until 1993.
Since the 1960s, mentally ill people who were hospitalized were unable to be discharged and remained in the hospital for a long time, and a 1983 mental health survey found that if the conditions were right, there were people who could be discharged. It turns out that there are about 100,000 people. However, facilities for reintegration into society were not developed, and tens of thousands of mentally ill people continued to be left without being able to leave the hospital, even though they did not need hospital care. The plaintiff is one of the patients who was forced to undergo such an unnecessary hospitalization.
It can be seen from the budget allocation that the defendant has not made any sincere efforts to rehabilitate mentally ill people. The national budget for people with mental disabilities continued to increase to approximately 85 billion yen from the late 1970s to around 1980, and more than 90% of this amount was for subsidized hospitalization. In 1970, social reintegration facility development was first budgeted for, but this accounted for only 0.1% of the budget for mentally ill people, and even in 1980 it accounted for 0.35%. In the 1980s, hospitalization subsidies were reduced, but the overall budget for mentally ill people continued to be reduced, and no funds were used to build facilities for reintegration into society. In addition, even now, 70% of medical expenses are inpatient medical expenses, and compared to other medical departments where the number of hospitalizations and outpatient visits are approximately equal, psychiatry is clearly focused on hospitalization.
3. Legislative inaction that did not reform or abolish medical protection hospitalization
Medical protection hospitalization has not essentially changed since it was established in the Mental Health Act as consent hospitalization. It is a system that violates important constitutional human rights such as freedom of body, freedom of movement, and the right to self-determination, and it also violates equality under the law in that it allows for forced hospitalization by private individuals only for people with mental disabilities. It is also contrary. Since the system's inception, the main purpose of consensual hospitalization has been to isolate and house mentally ill people, and it cannot be said that it has a legitimate purpose. There are only vague requirements for hospitalization, such as the need for medical care and protection, and without establishing strict screening standards, the requirements themselves are vague and unclear, allowing arbitrary implementation. In fact, there are also large regional differences.
Historically, the consent admission system, which was a free hand of hospital administrators, has been abandoned for nearly 40 years. The consent hospitalization system should have been abolished at the latest when the law was revised in 1987, but the requirements were not changed and the name was changed to medical protection hospitalization and it was preserved. Since then, there have been numerous opportunities for review, and calls for the abolition of the medical protection hospitalization system have been voiced by related organizations, but the requirements have only been slightly revised, and there has been no impact on the actual situation of medical protection hospitalization. No legislative action was taken to correct the issue. Such legislative inaction is illegal.
4 Inaction by the Minister of Health and Welfare who did not abolish the psychiatric special provisions
The defendant created a special exception for psychiatric patients and continued to leave psychiatric patients unable to receive the necessary level of medical care compared to other medical care. This is contrary to the latter part of Article 13 of the Constitution, Article 25 of the Constitution, and Article 14 of the Constitution.
5 Inaction by the Minister of Health and Welfare regarding mental health policy
The Minister of Health and Welfare's inaction regarding mental health policy includes the following:
(1) Violation of obligation to change from isolation and detention policy
Due to the country's isolation and detention policy, many people with mental disabilities are forced to remain in hospitals, depriving them of their lives. Since the defendant had personally created a state of serious human rights violation, he had an obligation to change his policy from isolated detention to community medical care in order to eliminate the situation. At the latest, after receiving the Clark Recommendation in 1968, which specifically specified the content of the duty to act, it would have been possible to proceed with the development of social reintegration facilities and the enhancement of community medical care. Despite this, the defendant did not even give any concrete consideration, and on the contrary, continued to increase the isolation and detention policy until around 1980, without setting up social rehabilitation facilities, and without providing budgetary measures or medical fees to improve community medical care. No changes were made. The Minister of Health and Welfare should have changed the quarantine policy to a regional medical care policy, but he did not do so.
(2) Violation of duty to provide guidance and supervision to psychiatric hospitals
The defendant had a duty to instruct and supervise to ensure that inpatient medical care was being provided appropriately so that hospitalization would not be prolonged longer than necessary or unnecessary hospitalizations would be avoided. There was also an obligation to ensure that the capacity was met and to supervise and correct the situation to ensure that the hospital did not become overaccommodated beyond the permitted number of beds. In addition, there was a duty to supervise compliance with health worker staffing standards. In addition, there was an obligation to establish a system to ensure appropriate medical standards, such as changing staffing standards, revising medical fees, and establishing an audit system.
Since the 1960s, improvement recommendations and Clark recommendations from the Administrative Management Agency have pointed out the institutionalization of patients due to inappropriate medical care and long-term detention, and it has become clear that many hospitals do not meet staffing standards and are overcrowded. It had become. Although this should have been corrected immediately, it continued to be neglected even into the 1980s. Furthermore, no system was established to ensure appropriate medical standards, such as changes in staffing standards or revisions to medical fees.
(3) Violation of duty to provide relief to persons who do not require hospital treatment
As a result of the defendant's policies, tens of thousands of people have been confirmed to have been forced to stay in psychiatric hospitals even though they should not have needed inpatient care and could have been discharged. Even after voluntary hospitalization was legally stipulated in the 1987 legal reform, the requirements for medically protected hospitalization remained unchanged, despite calls for clarification of operating standards. The Ministry of Health and Welfare is in breach of its duty to strictly apply such laws.
Furthermore, many patients who were forced to stay in psychiatric hospitals for long periods of time were formally switched to voluntary hospitalization, but by that time they had lost the will and ability to leave the hospital on their own. The plaintiff is one such patient. The government should proactively investigate and intervene for such patients, and has an obligation to proactively eliminate such unnecessary hospitalizations through relief measures such as policy support, revision and abolition of laws, and improvement of law enforcement. there were. However, the Minister of Health and Welfare has continued to ignore this issue since 1987.
6 Summary
Therefore, the plaintiff holds these defendants responsible for their tortious acts.
that's all
Quote source
Ryuta Furuya “Report on the 3rd Oral Argument - Outline of Plaintiff's Preparation Document -” Shinkokubai Tsushin, No. 16; 1-3, published July 2021
第4回口頭弁論:2021年9月27日
4th oral argument: September 27, 2021
2024/2/8 16:20
◆第4回口頭弁論 2021年9月27日
2021年9月27日(月)16時から、東京地裁で第4回口頭弁論が行われました。今回は、前回に原告側が提出した準備書面内容に対して、被告国側からの反論内容が示されました。
裁判後の報告会には、会場に35名、Zoomで25名の計60名の方が参加しました。ネットの不具合により、一部配信が中断し、Zoom参加の方には失礼しました。改めて、弁護団の解説による国側の反論書の内容を要約してお伝えします。
1.そもそもの法律論に終始
今回、国側から示された反論は、大きく分けて、①「国会議員の立法不作為に関する原告の主張について」と②「厚生大臣の不作為に関する原告の主張について」の二部構成になっています。二つとも、冒頭で「前提」として、国家賠償請求訴訟法1条1項の「違法」とは何を指すかとの法律論を記しています。(以下、被告国側から提出された「準備書面3」の内容を要約して「 」で示します。)
①国会議員の立法不作為については、「結果として権利侵害が生じたかどうかではなく、職務上の法的義務に違反した場合に限られる」としています。最高裁判例を引いて、「立法の内容や立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を侵害するものであることが明白な場合」、「国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白にもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合など、例外的な場面に限られる」と反論しています。
②厚生大臣の不作為については、「問題とされる公務員の行為が「職務上の法的義務」として義務付けられたものであり、当該作為を求められる公務員が、注意義務の内容を認識して尽くすことが可能な程度に明確なものでなければならない」としています。「法律による行政の原理に適合する形で判定されなければならず、根拠となる法令の規定や、その趣旨・目的等に照らして、多種多様な内容・方法と情勢に応じた対応が求められるのが行政施策であり、その内容が一義的に定まるものではないものは、職務上の法的義務と解される余地はない」とした上で「法的義務違反は、被害を受けた個人に対して負担する法的義務の違背があることが必要」としています。
法律の門外漢にとっては、分かりづらい言葉が続きますが、つまり、この「前提」に照らすと、原告の訴える内容は国賠法上の違法があったとはいえず、立法府(国会)と行政府(厚生労働省)の不作為(為すべきことを何もしなかった)責任を原告は訴えているが、国は応じる責任も無いと否定しています。そもそもの法律論上、この訴えは成立しないと全面的に退けようとしている訳です。
旧優生保護法訴訟にも関わってきた原告弁護団の一人によると、「まるでコピペのような同じ文章を見せられている感じ」とのことでした。同じ訴訟専門官が担当しているので、同じような文言になるのでしょうが、国賠を求める国民に対して、国側が裁判を退けようとするときの常套手段の「前提」なのでしょう。
2.立法不作為に関する各論
国会議員の立法不作為については、①「原告の同意入院又は医療保護入院の期間が明らかではない」、②「違法な権利侵害が明白ではあるとはいえない」と反論しています。
①については、伊藤さんが入院していた双葉病院のカルテがずさんで、医療保護入院から任意入院にいつ切り替わったのか記録が無いことによるものです。保護(義務)者であった父親の死去に伴って任意入院に切り替わったと推定されますが、本人がサインした任意入院の書類も残っていないのが悩ましいところです。
②については、国側は「同意入院及び医療保護入院は、他の疾病と異なり、精神障害においては、本人に病気であることの認識がないなどのため、入院の必要性について本人が適切な判断をすることができず、自己の利益を守ることができない場合があることを考慮したもの」としています。「指定医(同意入院では医師)が医療及び保護のための入院の必要があると認めて、保護義務者の同意がある場合に限っている」し、「入院中の行動制限は合理的と認められる必要最低限とされ、信書の発受の制限、弁護士等との電話や面会制限は禁止され、隔離及び身体拘束は指定医でなければできず、処遇の基準も定められている」と主張しています。「同意入院では、知事に対する届け出が義務付けられ、知事が調査の上必要があると認めたときは2人以上の鑑定医に診察を行わせることができ、医療保護入院では、届け出とともに、定期的な病状報告が義務付けられ、その内容が精神医療審査会で審査を受けており、加えて退院請求制度が認められている」と主張し、憲法で保障されている権利が侵害されているとは言えないと反論しています。
3.行政の不作為に関する各論
厚生労働省の行政不作為については、①精神科特例の評価、②原告が法律上の不作為を主張する点、について反論しています。
①については、「医療法は法令によって具体的な員数の標準を定めていない」としています。「精神科特例は、精神疾患の多くが慢性疾患である、あるいは病状が急変することが少ないという特質を踏まえたもの」であり、「もとよりこれは『最低限の人員』を示したもので、一義的に決まるものではなく、国賠法上の違法とはいえない」と主張しています。また、「精神科特例が存在したために原告が十分な医療を受けることができなかったことについて、原告から何ら具体的に主張・立証されていない」と反論しています。精神科特例があったために、伊藤さんが長期入院を強いられた因果関係を原告側は立証せよということです。
②については、「条理上の作為義務は、具体的な法令の規定もない」ことから「前提で記した職務上の法的義務となる余地はない」としています。したがって「厚生大臣に違法はない」し、「厚生大臣は、原告との関係において、法的義務を負っていたとは認められない」と反論しています。
さらに、行政としては、①精神衛生法を改正してきた(精神衛生相談員配置、精神衛生センター設置、在宅での相談対応等)、②社会復帰施設も整備してきた(精神障害回復者社会復帰施設、デイケア施設、精神衛生社会生活適応施設等)、③診療報酬も改定してきた(作業療法、デイケア、ナイトケア、集団精神療法、訪問看護・指導料等)、④地域精神保健対策を推進してきた(通院患者リハビリテーション事業、精神障害者社会復帰相談指導事業、小規模作業所に対する補助予算化等)、⑤精神保健法を制定した(精神障害者社会復帰施設、社会復帰対策予算増額等)、⑥精神保健福祉法を改正してきた(精神保健福祉センター、地方精神保健審議会、手帳制度の創設、社会復帰施設・事業の充実、地域精神保健福祉施策、障害者プラン策定、精神保健福祉関係予算増額等)、⑦精神科病院への指導も行っている(入院患者の人格を尊重し、人権侵害のない処遇や同意入院制度の適正な運用を求める通知等を発出、厚生大臣は、実地指導や精神医療審査会から要請があれば前記監督権を行使することで指導監督は可能であった等)、等の行ってきた事柄を列挙しています。
4.被告国側の反論への評価
行政としては、その時々の状況に応じて為すべき職務を行ってきており、決して不作為を重ねてきた訳では無いと主張しています。上記の様々な施策は、関係者の要求と運動により少しずつ実現してきたものですが、厚労省としてできる限りのことはやってきたという主張は、痛々しい印象さえ受けます。並べられている項目を眺めても、精神科病院に対する強い介入施策は何もしてこなかったことが、よくわかります。厚労省がポジティブにこれまでの成果を示せば示すほど、取り組んでこなかったネガティブな問題=行政の不作為があぶり出されてきます。
霞ヶ関の中央官僚は、極めて優秀な方々です。厚労省が精神医療の現状を知らない訳ではありません。様々な実情を知ってはいても、国が精神科病院に踏み込めないで来た経緯があります。強い政治力をもつ精神科病院協会の利害に関わる政・財・官の癒着が、精神医療に関わる政策決定プロセスをブラックボックス化させています。今回の被告国側の反論書を見ても、この国の精神科病院の「不都合な真実」に触れることを回避する、「大人の事情」による忖度が働いています。原告に向き合うのではなく、守り通さねばならない既得権益と省益が優先されているのは残念なことです。
精神国賠研および原告弁護団としては、法律論の空中戦に終始するのではなく、精神医療ユーザーの体験した具体的事実を積み上げて実態を示し、不作為のまま放置してきた国の責任を裁判官に訴えていきたく思います。
引用元
古屋龍太「不都合な真実を回避する厚労省―第4回口頭弁論で示された被告国側の反論書の概要―」精神国賠通信,No.18;1-3,2021年10月発行
◆4th Oral Argument September 27, 2021
The 4th oral argument was held at the Tokyo District Court on Monday, September 27, 2021, from 4:00 p.m. This time, the defendant country presented a rebuttal to the preliminary documents submitted by the plaintiff last time.
A total of 60 people participated in the post-trial debriefing session, 35 in person and 25 via Zoom. Due to an internet glitch, some of the broadcasts were interrupted, and we apologize to those who participated via Zoom. Once again, I would like to summarize the contents of the state's rebuttal written by the defense team.
1. From start to finish on legal theory
The counterargument presented by the government this time can be broadly divided into two parts: (1) "Regarding the plaintiff's allegation regarding legislative inaction by members of the Diet," and (2) "Regarding the plaintiff's allegation regarding the Minister of Health and Welfare's inaction." In both cases, the ``premise'' at the beginning is the legal theory of what is meant by ``illegal'' in Article 1, Paragraph 1 of the National Liability Claim Procedure Law. (Hereinafter, the contents of "Preparatory Document 3" submitted by the defendant country are summarized and indicated in " ".)
(1) Regarding legislative inaction by members of the Diet, it states that ``it does not depend on whether a violation of rights has occurred as a result, but is limited to cases in which they violate legal obligations in the course of their duties.'' Citing Supreme Court precedent, it states that ``if it is clear that the content of legislation or legislative inaction violates the constitutionally guaranteed rights of the people,'' and ``the people have an opportunity to exercise their constitutionally guaranteed rights.'' It is essential to take the necessary legislative measures to ensure that the law is in place, and this is limited to exceptional cases, such as when the Diet fails to do so for a long period of time without justifiable reason, even though it is clear that this is the case.'' doing.
② Regarding the Minister of Health and Welfare's inaction, ``the act of the public servant in question was obligated as a ``legal obligation in the line of duty,'' and the public servant required to perform the act must be aware of the content of his duty of care and do his best.'' It must be clear enough that it is possible to do so." ``Determinations must be made in a manner that conforms to the principles of legal administration, and a wide variety of content, methods, and responses are required depending on the situation, in light of the underlying legal provisions, purpose, and purpose, etc. This is an administrative policy, and if the content is not univocally determined, there is no room for it to be interpreted as a legal obligation on the job." ``There must be a breach of a legal obligation owed to the person.''
For those outside the legal field, the words are difficult to understand, but in light of this ``premise,'' it cannot be said that the content of the plaintiff's complaint is illegal under the National Liability Law, and that the legislative branch (National Diet) and the executive branch The plaintiff claims that the (Ministry of Health, Labor and Welfare) is responsible for inaction (not doing anything that should have been done), but the government denies that it has any responsibility to respond. In the first place, from a legal perspective, this lawsuit is being dismissed completely as not being established.
According to one of the plaintiff's lawyers who was also involved in the former Eugenics Protection Law lawsuit, ``It feels like we are being shown the same copy-pasted text.'' Since the case is handled by the same litigation specialist, the wording is likely to be similar, but it is probably a common ``premise'' used by the government when it attempts to dismiss the case against a citizen seeking national compensation.
2. Specifics regarding legislative inaction
Regarding the legislative inaction by the Diet members, they argue that (1) ``the period of the plaintiff's consensual hospitalization or medical protection hospitalization is not clear,'' and 2) ``It cannot be said that the illegal violation of rights is obvious.''
Regarding ①, the medical records at Futaba Hospital, where Mr. Ito was hospitalized, were sloppy and there was no record of when the transition from medical protection hospitalization to voluntary hospitalization occurred. It is presumed that the patient was admitted to voluntary hospitalization upon the death of his father, who was his guardian (obligation), but it is troubling that the voluntary hospitalization document signed by the patient is no longer available.
Regarding ②, the government stated, ``Consensual hospitalization and medically protected hospitalization are different from other illnesses, in cases of mental disorders, where the person is not aware that he or she is sick, This takes into account the fact that a person may be unable to make decisions and protect his or her own interests.'' ``Restrictions on movement during hospitalization are limited to cases where the designated doctor (or the doctor in consent hospitalization) recognizes the need for hospitalization for medical and protection purposes and the consent of the person responsible for protection is obtained.'' Restrictions on sending and receiving letters, telephone calls and meetings with lawyers are prohibited, isolation and physical restraint can only be performed by a designated doctor, and standards for treatment are also established. I am claiming. ``For consensual hospitalization, notification is required to the governor, and if the governor deems it necessary after investigation, two or more expert doctors can conduct an examination.In medical protection hospitalization, along with notification, periodic "They are required to report their medical conditions, the contents of which are examined by the Mental Health Review Board, and in addition, a discharge request system is allowed." I object that I can't say it.
3. Specifics regarding administrative inaction
Regarding the Ministry of Health, Labor and Welfare's administrative inaction, we refute the following points: (1) the evaluation of the psychiatric special case, and (2) the plaintiff's allegation of legal inaction.
Regarding ①, it states that ``the Medical Care Act does not stipulate a specific standard for the number of patients by law.'' ``The special provisions for psychiatry are based on the fact that many mental illnesses are chronic diseases, or their conditions rarely change suddenly.'' It is not something that can be determined uniquely and cannot be said to be illegal under the National Liability Law." The lawsuit also argues that ``the plaintiff has not specifically asserted or proven that the plaintiff was unable to receive adequate medical care due to the existence of special psychiatric provisions.'' The plaintiffs are required to prove the causal relationship that Ms. Ito was forced to stay in the hospital for a long period of time due to the psychiatric exception.
Regarding ②, it states that since ``there is no specific legal provision for a theoretical obligation to act,'' ``there is no room for it to become a legal obligation based on the duties described in the premise.'' Therefore, ``the Minister of Health and Welfare is not guilty of any illegality,'' and ``the Minister of Health and Welfare cannot be recognized to have had any legal obligations in relation to the plaintiff.''
Furthermore, the government has (1) revised the Mental Hygiene Act (assignment of mental health counselors, establishment of mental health centers, support for counseling at home, etc.), and (2) developed social reintegration facilities (social reintegration facilities for people recovering from mental disorders). , day care facilities, mental health and social life accommodation facilities, etc.), 3. Medical fees have been revised (occupational therapy, day care, night care, group psychotherapy, visiting nursing/guidance fees, etc.), 4. Community mental health measures have been promoted. (outpatient rehabilitation projects, counseling and guidance projects for reintegration of mentally ill people into society, supplementary budget for small workshops, etc.), ⑤ Enacted the Mental Health Act (increased budget for social reintegration facilities for mentally ill people, social reintegration measures, etc.), ⑥ The Mental Health and Welfare Act has been revised (creation of mental health and welfare centers, local mental health councils, notebook system, enhancement of social reintegration facilities and projects, regional mental health and welfare measures, formulation of plans for persons with disabilities, increase in mental health and welfare-related budgets) etc.), 7) It also provides guidance to psychiatric hospitals (issues notices, etc. requesting respect for the personality of inpatients, treatment that does not violate human rights, and proper operation of the consent hospitalization system, and the Minister of Health and Welfare is providing on-the-job guidance and If requested by the Psychiatric Medical Examination Board, it would have been possible to provide guidance and supervision by exercising the above-mentioned supervisory authority, etc.).
Four. Evaluation of the defendant country's counterargument
The government maintains that it has carried out its duties according to the circumstances at the time, and has never been inactive. The various measures mentioned above have been realized little by little due to the demands and campaigns of those involved, but the Ministry of Health, Labor and Welfare's assertion that it has done everything it can gives a painful impression. Looking at the items listed, it is clear that no strong intervention measures have been taken against psychiatric hospitals. The more positively the Ministry of Health, Labor and Welfare shows its achievements to date, the more negative problems that have not been addressed, i.e., administrative inaction, will be exposed.
The central bureaucrats in Kasumigaseki are extremely talented people. It is not that the Ministry of Health, Labor and Welfare is unaware of the current state of mental health care. Despite knowing the various facts, the government has been unable to step into psychiatric hospitals. The collusion of political, financial, and public officials related to the interests of the Psychiatric Hospital Association, which has strong political power, has turned the policy-making process related to mental health care into a black box. Looking at the rebuttal written by the defendant country in this case, there is a sense of complacency based on ``adult circumstances'' that avoids touching on the ``inconvenient truth'' about psychiatric hospitals in this country. It is unfortunate that vested interests and ministerial interests that must be protected are prioritized instead of confronting the plaintiffs.
The Institute for Mental Health Insurance and the plaintiff's lawyers will not just engage in dogfights over legal theory, but will pile up concrete facts experienced by mental health care users to show the actual situation and hold the country responsible for its neglect through inaction. I would like to appeal to the authorities.
Quote source
Ryuta Furuya, “Ministry of Health, Labor and Welfare Avoiding Inconvenient Truths: Summary of Defendant State’s Rebuttal Written at the 4th Oral Argument,” Shinkokubai Tsushin, No. 18; 1-3, published October 2021.
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