「鳥は空に魚は水に人は社会に」訴訟 Psychiatric State Compensation Litigation

#医療・福祉・障がい #Healthcare/Welfare/Disability
#公正な手続 #Procedural Justice

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精神病院に閉じ込められたまま人生の大部分を過ごす人たちが多くいます。精神障害を持つ人も地域で暮らせるようにという世界の潮流に逆行した日本の精神医療は、国際的にも大きな批判を浴びています。この訴訟は、日本の悲惨な精神医療を長年にわたり放置してきた政府の不作為責任を問い、国家賠償請求を行うものです。私たちは、この訴訟を通じて、病院中心に偏った精神医療から地域精神医療への転換が行われることを目指します。 Psychiatric State Compensation Litigation

国の謝罪を求めて提訴

私たち精神医療国家賠償請求訴訟研究会(略称・精神国賠研)は伊藤 時男さんを原告として国への提訴を行った。

彼は、東京と福島の精神科病院において40年余りの入院を経験した。精神症状と思われるエピソードは、発病の初期を除いてほとんどなかった。入院時も毎日院外に働きに出たり、病院内の給食の補助として働き、退院を目指していた。しかし、積極的に彼を社会に戻そうとする動きは無く、人生の貴重な時間を病院生活によって奪われてしまった。

このように、精神科病院への入院によって人生を奪われた例は伊藤さんだけではない。


人権が尊重されない日本の精神医療

今も、病気は消失しながらも精神科病院への入院を継続している「社会的入院者」と呼ばれる人たちが、国の実態調査で7万人余り、実際には、はるかに多い10数万人存在する。きちんとした社会資源、例えば多様なタイプのグループホームやコミュニテイメンタルヘルスケアチームの存在があれば、彼らは市民として地域社会の中で暮らせるのに、病院の病棟に社会から隔離され続けている。とんでもないことである。医療の名のもとに許し難い人権侵害を我が国の精神科医療は行い続けている。私たちはこれを告発する。

強制入院の多さや、隔離・拘束の多さや、その遷延化、患者への虐待事例の多発、家族に責任を押し付けて公的責任を負わない入院制度、多剤大量療法と呼ばれる薬物療法に偏った医療など、我が国の精神科医療の問題点を挙げればきりがない。

◆WHOからの勧告(1968年)
このような実態を、国はなぜ長年にわたり放置して来たのか、知らなかったのだろうか。知らなかったはずは無い。日本の精神科医療が入院に偏っており、精神障害者が地域社会の中で暮らすという、権利を奪われていることに最初に警告を発したのは、1968年のクラーク勧告だった。WHOの顧問として日本を訪れて日本の精神科医療の実態を調査して勧告を行ったイギリスの精神科医師、DHクラーク氏はこのとき既に問題点を指摘し、改善するように我が国に7項目の勧告を行っている。

しかし、我が国はこの改善勧告を無視した。世界的には地域精神医療の流れが当たり前になり、ノーマライゼーションによって「完全参加と平等」の理念で障害者が地域社会から隔離収容されることが無くなった後も、我が国では国が設けた医療金融公庫の低利融資によって精神科病院を作り続けた。

◆長い入院期間
世界の主要な先進国が精神科ベッドの削減を行ったのに対して、我が国の精神科ベッドは増え続けて、ついに日本の病院病床数の2割、そして現在では世界の精神科ベッドの2割を占めるまでになった。平均の入院期間はOECDの平均が28日に対して日本は280日と10倍に達している。さらに、司法の監視のない入院制度が強制入院を増やしている背景がある。本人の同意のない強制入院は人権を厳しく制限するため、欧米では裁判所が入院期間を監視するのが普通であるのに対し、日本では司法の関与が全くない。精神科医師の恣意的判断でいくらでも入院を延長できる制度設計になっている。

人権擁護の観点から見れば、とんでもない滅茶苦茶な制度である。変えなくてはならない。

◆宇都宮病院事件(1984年)
1984年に発覚した栃木県の宇都宮病院事件は社会問題となり、それまでの精神衛生法が精神保健法に変わるきっかけとなった。日本政府は1985年、国連の場において改善することを表明した。精神科病院での長期入院者の地域移行を進めることを謳い、グループホームや作業所などの地域での受け皿を一定数用意した。しかし、精神科ベッドは減らず、社会的入院者が地域社会に戻ることが出来ないという状況は変わることは無かった。


なぜ変わらないのか?

日本の精神科病院の9割が私立病院である。経営が重視され、障害者の社会復帰よりも入院を継続して経営を安定させるということが起きやすい。患者の人生を奪って利益を得るということはとんでもないことだが、それが当たり前になっているのが現状だ。


なぜ裁判を必要とするのか?合意形成できないのか

現状を変えるには、超党派の議員連盟を作り、精神科関連の職能団体、学会、家族会などがまとまり、メデイアによる後押しを受けて臨時特別措置法を作り、精神病院の解体と地域移行を進めていくという路線がある。

しかし、これは一部の政治家の猛烈な反発があり、実行は不可能と言ってよい。これまで、公衆衛生審議会をはじめとする各種の審議会や検討会等で繰り返し地域精神医療への転換は提起されてきた。しかし、一向に変わらなかった歴史をみれば、合意形成による精神科病院の解体が事実上不可能であることは明白である。


裁判の目的

この裁判の目的は、国際社会からも、我が国の内部での審議会答申でもたびたび指摘されながら、変わることの無かった我が国の精神医療政策遂行上の不作為責任を法廷の場で明らかにすることにある。もちろん勝訴を目指すが、勝つことだけが目的ではない。

裁判を通じて、いかに多くの人々が国の精神医療施策の犠牲になってきたか、現在もなっているかを明らかにする。原告だけでなく、多くの当事者の皆さんやその家族の声を証言として司法に届ける。

犠牲者をこれ以上出さないためには、長年にわたる国の不作為責任を法廷が認定し、国に謝罪させて政策転換を余儀なくさせるしかないのだ。


今後の方針

私たちの当面の目標は、第1次の提訴である東京地裁での伊藤時男さんの裁判に向けて、多くの当事者や家族の声を証言として届ける事である。初公判が2021年3月1日に決まり、その準備作業が続けられている。

私たちの裁判闘争は、東京地裁では終わらない。鹿児島で原告に名乗りを上げていただいた方も待機しておられる。二次、三次訴訟を全国各地で起こす予定だ。

そして、当事者による訴訟に続いての目標は、家族が原告となる、精神国賠家族訴訟である。我が国の精神保健福祉法の体系は、これまでも現在も家族に多くの責任を押し付けてきた。公的責任の放棄である。

◆家族の負担
「医療保護入院」という制度は、本人同意のない強制入院である。(旧来の精神衛生法の体系では「同意入院」と呼ばれていたが、この「同意」は本人ではなく家族による同意が原則である。)この制度は、本人同意がなく、治療契約が結べていないにも関わらず、医療費は公費負担されず、本人や家族が医療費を支払う義務を負うという、滅茶苦茶な制度である。

精神医療には、本人の意思による任意入院と、どうしても強制が避けられない状況での措置入院だけで充分である。任意入院は本人の意思によるものだから保険適用に合理性があるし、措置入院は医療契約が無いことを前提とした強制入院のために全額が公費負担である。

加えて、強制入院は人権を著しく制限するため、諸外国では司法が介在して医療側への監視が行われるが、我が国では全く司法の関与がない。日本の精神科医療が異常に多い強制入院率を示しているのもこの医療保護入院が濫用されているからに他ならない。家族は精神的にも経済的にも重い負担を長年にわたり強いられている。

今後、精神国賠訴訟、および精神国賠家族訴訟でこの医療保護入院制度の不当性を訴え、廃止を目指して行く。


私たちは、この裁判を通じて我が国の精神医療がだれでも安心して利用できる医療になるように願っている。
鳥は空に 魚は水に 人は社会に


寄付金の使途

今回のクラウドファンディングの寄付金は、下記の用途に活用させて頂きます。
・弁護士報酬
・訴訟事務費用(印紙代)
・広報費用(パンフレット作成)
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・通信費(相談電話、ニュース郵送切手代)


精神医療国家賠償請求訴訟研究会

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