2020.9.19

【日本の難民対応を変える訴訟】クルド人難民デニズさんのケース

本日は、CALL4で取り扱っているケースをご紹介します。

今回ご紹介するケースは、入国管理センターの職員から暴行を受けるなど、不当な扱いを受けたとして国家賠償訴訟中の、クルド人男性デニズさんをサポートするクラウドファンディングです。

クルド難民収容者暴行被害国賠訴訟

日本の難民対応の現状

この訴訟の原告のデニズさんは、トルコから来たクルド人の難民申請者です。デニズさんはどうして入国管理センターに収容されていたのでしょうか。みなさんは、日本に逃れてきた難民を取り巻く現状をご存知でしょうか。

日本は1981年から難民条約に加入しており、難民を保護する国際的な責任を負っています。しかし日本の難民認定率は0.1〜0.4%と低く、世界的にみて難民の保護が極端に少ない状況です。また、日本では入管法違反に対する収容期間に法的な上限がないため、難民認定を受けられない不法入国者の長期収容が常態化しています。

長期収容に加え、入管施設内では職員による暴行など、人権を無視した対応が横行しています。昨年は対応の改善を訴えてハンストを行った被収容者が餓死するなど、衝撃的な事件も発生しました。迫害などで母国から逃れてきた外国人の中には、日本で再びこのような厳しい状況に置かれながら、難民認定を待つ方が多くいるのです。

原告であるクルド人のデニズさんは2007年に来日しました。日本人と結婚し、13年間難民申請をしていますが、いまだ難民認定されておらず、約4年間を入国管理センターで過ごしてきました。

デニズさんの事件と、国賠訴訟

2019年1月、当時、茨城県牛久市にある東日本入国管理センターに収容されていたデニズさんは、入管職員らから手錠をかけられたまま暴行を受けました。この時の暴行の様子を撮影した動画は、昨年末インターネット上に公開され、密室だった入管の状況が、外の世界に知られるようになりました。

この事件を受けて、デニズさんは、このような暴力的行為の違法性を問うことで、入管施設における外国人に対する人権侵害が、今後行われないようにしたいと考え、国家賠償請求訴訟を提起しました。

今回の訴訟は、不当な暴行に対する国賠訴訟であると同時に、このように大きな問題を抱えた入管のシステムや、被収容者に対する人権を無視した取り扱いを変えていくための、公共訴訟なのです。

入管収容中のデニズさんに聞いた、現場の実態

デニズさんは、入管でどのような対応を受けていたのでしょうか。
今年2月、牛久の入国管理センターに収容されていた、デニズさんをアクリル越しに取材したストーリー記事の前編です。

訴訟の支援について説明した私を「ここまで来てくれてありがとう」と労ってくれる言葉に、私も「体調はどうですか?」と聞く。デニズさんは「ボコボコです」と答えた。

手に取った分厚いファイルにはたくさんの診断書が入っていた。胃腸の疾患、目の疾患、ストレス障害・・・1ページずつ、手際よく自らのかかえる疾患を説明してくれるデニズさんは、説明に慣れているように見えたが、奥さんの診断書を説明するページで声がゆれた。
外国人たちの絶望、死と隣り合わせの現実 クルド人のデニズさんと入管施設の収容をめぐるストーリー(前編)

訴訟に対する思い

どのような思いで訴訟に至ったのか、今年7月、仮放免中のデニズさんに再びお話を伺うことができました。

入管の外でも続く、苦しみの日々 クルド人のデニズさんと入管施設の収容をめぐるストーリー (後編)
「入管は、暴力をカメラの前でもやった。それが裁判をして、ビデオが出てきて、わかった。映像が出た後、変わったよ。分からない人が、分かった。今、ちょっと分かる人たちが多くなった。入管の中でもちゃんと守る人たちは、暴力をやめた」

「分かってる人は増えたから、それだけでも、変化はあるよ」

社会を変えるアクション

デニズさんには在留資格がないために働くことが許されておらず、裁判で国と対等に渡り合うための資金がありません。そのため、裁判費用の支援を募るクラウドファンディングを始めました。また、この訴訟の公共性を踏まえ、CALL4のプラットフォームでは、裁判での議論を公開していきます。

母国で迫害を受け、逃れてきた外国人の方が、日本で再び人権をないがしろにされています。日本に住む私たちはどんな社会を実現したいか、この訴訟を通じて考えてみませんか?

詳細情報と、サポートは下記のリンクへ↓

クルド難民収容者暴行被害国賠訴訟

今回のケースと入管問題について、2分間の動画にまとめています。こちらもぜひご覧ください。

⽂/久保田 紗代(CALL4)