2026.4.30

わたしたちと原告の距離を縮める、クリエイティブの仕事

[CALL4のひと]丸山央里絵(共同代表)

身の回りのおかしなことに声をあげ、社会制度を変えようとする“公共訴訟”。
声をあげる人のそばには、その声を信じ、支え、ともに考える、“CALL4の中の人”がいます。
この連載では、そんな 「#CALL4のひと」 に参加のきっかけや活動のリアルを聞いていきます。 

第1回の「#CALL4のひと」は、CALL4の共同代表であり、クリエイティブを束ねる丸山央里絵さん。
公益性の高い訴訟を支え、社会へとひらいていくために、クリエイティブに何ができるのか。その仕事のやりがいとともに、胸の内にある思いを聞きました。 

聞き手:北郷礼奈(CALL4)

コンテンツを作るだけでなく、「見せ方」全般に関わる仕事

「職業を聞かれたら、クリエイティブ・ディレクターって答えたり、編集者やライターと言うこともあります。メインとしては、CALL4のウェブサイトや、そこから派生して作られるコンテンツ全般のクリエイティブのディレクションをしています」

CALL4のクリエイティブチームが行っている仕事、特に丸山さんが関わっている仕事について聞いてみるとこんな答えが返ってきた。ふわふわした話し方と優しい笑顔が印象的だ。

「裁判のマンガやストーリー記事の執筆依頼・編集をしたり、余力がある時には自分で取材してストーリーを書くこともあります。あとはメルマガやSNSなどのCALL4の行う発信をレビューしたり、イベントを企画したり。現在ウェブサイトのリニューアルもしているので、そのディレクションも行っていますね」

「それから、ケースページ(筆者註:原告や弁護団などの主催者が作成するクラウドファンディングの募集がなされているページ)のタイトルやキービジュアル、一つひとつにアドバイスすることもあります」

裁判を縁遠く感じていたからこそできる、「翻訳作業」

ひとくちにクリエイティブ・ディレクターと言っても、単にコンテンツを作るだけではなく、一つひとつのコンテンツが存在する意味を深く考え、マーケティング的な視点からその「見え方」「見せ方」の方向性を検討する、多角的な仕事であることがわかる。では、なぜ公共訴訟を応援することにおいて、「見せ方」が重要なのか。

「裁判って元は私にとってもとっつきにくいものでした。拳をふりかざしてたたかっている、鬼気迫った、自分からは遠いところにあるイメージがあったんですよね。でも、理不尽に抵抗するってとても大切なことだし、時にはたたかわないといけないこともあるのだと歳を重ねるにつれて思います。それでも、声をあげることのハードルはとても高い」

「だから私は、裁判で問われているのは声をあげた人たちだけの問題じゃなくて、わたしたちの問題、社会の問題でもあるということを伝えていけたらいいなと思っているんです。以前の自分が『もしこう伝えられていたら興味を持てたかも』と想像しながら」

「私がやっているのは、今、声をあげている人の言葉に、いろいろな人たちから興味関心を持ってもらうための翻訳作業だと思っています」

公共訴訟の原告になると、ひとりで法廷に立ち、ひとりで発信をし、なかなか味方が得られない孤独な道のりを進むことも多い。彼らの言葉を、当事者でない「わたしたち」にとって受け取りやすいかたちにすること。それによって原告や弁護団の言葉が伝わり、応援の声が原告のもとへと返ってくること。そこに仕事のやりがいのひとつがあるように感じられた。

CALL4には光をあてるべき訴訟が山のようにあった

元々は大手企業で編集経験を積み、情報誌の編集長やウェブサイト・アプリ版のプロデューサーも務めていたという丸山さん。土地勘のない「公共訴訟の支援」という分野に足を踏み入れたのはなぜなのか。

「コンテンツ作りやマネジメントのスキルを一通り身につけたあと会社を独立して、自分が個人として興味・関心を持つことができる、『人々に届けたいテーマ』を探していました。自分は、すべての人が創造的に生きられるような社会であってほしいと思っている、そこにちょっとでも資するには何をテーマにするのがいいんだろうって。そんなときにたまたま、CALL4のテスト版を谷口さん(註:CALL4共同代表の谷口太規氏)に見せてもらって」

「そこで入管の事件についてのストーリー(註:カメルーン人男性死亡事件国賠訴訟)を読んで、ショックを受けました。仮にも国が管理している施設の中で、『Water(水をくれ)!』と叫びながら亡くなった方がいる。こうやって、見えないところで人の尊厳……究極的には人の命が奪われている」

「一方で、義憤に駆られ、彼の最後の尊厳を守るためにたたかっている弁護士がいる。命は戻らないけれど、国に責任を認めさせようとしている。そして、その弁護士たちは手弁当で裁判をたたかっている。こんな尊い仕事が、『お金がないから』という理由で継続できないのはおかしいなと思ったし、彼らが日の目を見てほしいと思ったんです」

編集者の仕事は、「伝えるべきことに光をあてる仕事」だと丸山さんは語る。
公共訴訟の代理人と原告は、人知れぬところで身を削って、たたかい続けている。そんな彼らの言葉を載せ、応援を募るCALL4というプラットフォームは、丸山さんにとってまさに「日の目をみるべきこと」が詰まった場所だった。

誰かの人生の最も心動かされる瞬間に立ち会える、かけがえのない経験

しかし、原告へのバッシングはときに激しく、裁判というかたちで声をあげる行為を批判されることさえある。原告一人ひとりの想いを知ろうとし、社会へ伝えようとする丸山さんの心に、そういった批判はどう映っているのか。

「裁判の原告って『ルール破り』だとか『まずできること全部してから裁判しなよ』なんて心ない言葉をかけられることもあるんですよね。でも、司法による解決は国が用意している正当な異議申し立て方法だし、それに、手段は様々あっていいと思うんです」

悔しい想いを抱くのは批判に対してだけではない。敗訴という形で示された判断に、悔しさを抱くこともある、と丸山さんは語る。それでも、応援したい、声を届け続けたいと思える原動力はどこにあるのか。

「それでも、救われる時はあるんですよ。たとえば、旧優生保護法によって不妊手術を強制された人たちにとって、差別を受けたこと、『こどもを持つべきでない』という烙印を国から押されたことは拭えない事実です。それでも、あの違憲判決が出た時、『正義ってあったんだ……』とおっしゃった方がいたんです。そういう、人生における最も心動かされる瞬間に立ち合わせてもらえる時がある」

「それに、勝ち負けにかかわらず、社会を動かそうとした痕跡は未来への力になります」

一人ひとりの原告や弁護士の力が、人生が、注ぎ込まれた訴訟を支援することで、彼らと喜びを、ときには悲しみを、悔しさを共有する。つらいとき、あなたは一人じゃないよと伝えて、そっと肩を貸せる存在になれる。「私は応援しているよ」と原告に示せること自体が、CALL4で活動するひとつの意義なのかもしれない。

公共訴訟に特化しているからこそ広がる可能性

一見すると、ニッチに見える「公共訴訟」という分野。しかしCALL4のコンテンツは、特に社会問題に興味関心のある20〜30代の若者に広く受け入れられている。原告の思いや物語がクリエイティブによって「翻訳」され、共感の輪が支援へとつながっていく仕組みがあるからかもしれない。

特定の社会課題に関心のある層から、「社会をより良くしていきたい」と思う層まで、今、幅広い人々が、新たな社会課題解決の可能性をCALL4に見出している。

「多様な人たちと一緒に働けるところはCALL4の魅力かもしれません。CALL4のプロボノメンバーは法学部生や研究者、弁護士だけでなく、ライターやデザイナー、イベントオーガナイザー、エンジニアなど様々な専門性を持つ人々がいます。感受性が豊かで優秀な方ばかりで、世代を超えて学ばせてもらうことだらけです。彼らのような人たちと一緒に何かをつくれる、というのもやりがいのひとつだと思います。
また、たとえば作家や漫画家の皆さんに仕事をお願いすることもできるので、ぜひ一緒に取り組みたいと思う方に自分で声をかけることができます」

「もちろん、プラットフォームに今あるコア機能を守ることは大事です。CALL4のケースページは根幹ですし、訴訟資料のアーカイブを残すことで公共知をつくっていくことも続けていくべきこと」

「でも、『公共訴訟』というジャンルに特化しているからこそ、CALL4がやるべきこと、やれることはこれからも広がりを持ち続けていくとも感じています。だから、『CALL4がやったらいいんじゃない?』って思うことは気軽にどんどんやってみたらいいと思っているんです。誰も止めないし、むしろみんな絶対協力してくれるから」

訴訟の背景にある思いに光を当て、誤解なく、伝わりやすい形であらゆる人に届けること。そして、公共訴訟という少しニッチなジャンルの中で、社会を良くするための新たな挑戦を続けること。クリエイティブの仕事は、CALL4が発信する物語の根幹を支えるものでもあり、活動の羽根を伸ばすものでもある。

「旗振り役になって、物語の語り手になってくれる人が増えていったら、CALL4の活動はますます広がっていくんじゃないかな」

支援と共感の輪を広げるためのCALL4の挑戦は、ますます見逃せないものになっていきそうだ。

取材・⽂/北郷礼奈(CALL4)
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