「LINE」を用いた住民票請求サービスの適法性確認請求事件 -

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自宅や職場で、住民票の請求ができれば便利だと思いませんか。
LINEアプリと身分証明書のみ手元にあれば、いつでも、どこでも、住民票の請求ができるというサービスが、2020年4月東京都渋谷区で始まりました。
その直後、総務省はストップを掛けました。オンライン請求では、マイナンバーカードを使った電子署名を行えという主張です。
技術革新は誰のためのものか、これを問う裁判です。
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原告は、「LINE」を用いて各種行政手続きを行うサービス・システムを開発・提供する会社です。
2019年10月にサービスをリリースし、2020年12月時点において、40を超える自治体にサービスを提供しています。
「LINE」の基本コンセプトであるchatbot方式で、
粗大ゴミの回収依頼、保育施設における一時保育の予約、水道の閉開栓の依頼から、
パブリックコメント実施や各種証明書の申請まで、広く行政手続きを行うことができます。
面倒・複雑・煩瑣な行政手続きにおける技術革新といえるでしょう。

2020年4月1日、東京都渋谷区において、原告が提供するサービスの提供が開始しました。
ここでは、全国の自治体に先駆けて、「LINE」上にてeKYCという本人確認技術を用いた住民票の写しの交付請求ができる仕組みも組み込まれました。

その直後の4月3日、総務省は、全国自治体に「技術的助言」(地方自治法245条の4第1項)を発出し、
オンラインで住民票の写しの交付請求を行うには「電子署名」が必要である旨を通知し、これを周知徹底するよう求めました。
原告が提供するサービスにストップを掛ける内容です。
総務省がいうところの「電子署名」とは、マイナンバーカードを使った「電子署名」のことを指しています。
要は、オンラインで住民票の写しの交付請求をするには、マイナンバーカードを使えという主張です。

原告は、総務省の「技術的助言」の内容は、法令の解釈として誤りであり違法であると考えています。
総務省は、マイナンバーカード普及に固執するあまり、それとは異なる方式である原告のサービスをストップさせようとしているものと受け止めています。選択肢を狭めることでマイナンバーカードの普及を促進しようとしていることが窺われるこのような対応は、近視眼的で疑問を禁じ得ません。

もちろん、住民票の写しを役所にて取得することはできます。
マイナンバーカードをもっていれば、少なくない自治体において、住民票の写しをコンビニで取得することもできます。

他方、原告が提供するサービスにおいては、
LINEのアプリと身分証明書さえ手元にあれば、”いつでも”、”どこにいても”、住民票の写しの交付請求ができます。
マイナンバーカードは不要ですし、役所やコンビニに行く必要もありません。
このサービスのニーズが国民にあることは、誰も否定できないのではないでしょうか。
ましてやコロナ禍の今、外に出ないで住民票の写しを取得することができることの価値・重要性は、論を俟たないでしょう。

LINEにより住民票の写しの交付請求を行うにあたっては、顔認証技術を用いた本人確認が行われます。
ここでは、マネーローンダリングを防止する犯罪収益移転防止法が要求する水準の技術が用いられており、確実性・安全性に疑義があるわけでもありません。

政治では、デジタル庁創設の話が進んでいます。
総務省の「技術的助言」において、その主張の根拠となっていた「押印」については、
住民票の写しの交付請求を含め、ほとんどの行政手続きにおいて廃止されることになる見込みとなりました。

この裁判が、行政手続きのオンライン化における技術革新の一助となり、
真に国民の利便性のためのサービス・システムの開発・提供に繋がることを信じて、訴訟に臨んで参ります。

note

弁護士水野泰孝